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シェン・ウェイのチベット、シルクロード、カンボジアをテーマにした舞台

Shen Wei Dance Arts
Shen Wei “Re- (I,II,III)”
シェン・ウェイ・ダンス・アーツ
シェン・ウェイ『レ- (I,II,III)』
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毎年夏、ニューヨークで行われるリンカーンセンター・フェスティバルが開催されました。音楽や演劇やダンスなど、世界中から素晴らしいアーティストたちと作品が招聘されます。このフェスティバルのダンス公演は毎年とても楽しみにしています。
今年もリンカーンセンターのアリス・タリー・ホールでシェン・ウェイ・ダンス・アーツの公演がありました。I、III、IIの順番で上演され、途中、Iの次に休憩がありました。出演ダンサー達は男性5名、女性7名です。

シェン・ウェイは、こちらのコラムで過去に何度かレポートしたことがあります、中国出身の振付家&芸術監督です。とても個性的で独特な舞台芸術家です。シェン・ウェイが振付、舞台セットとコスチュームのデザインもしています。彼の創る舞台は、ダンスのジャンルだけにとどまらないような、全体的にとても前衛的でアーティスティックなものです。振付も不思議な動き方がほとんどです。そして全員が無表情で無機質に動き続けます。舞台全体で1つの芸術表現になっています。彼にしか表せない独特の世界観です。
ニューヨークには根強いファンが多く、いつもこのシェン・ウェイの公演はチケットがソールドアウトになります。
 

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最初、Iの舞台が始まる前にすでに幕が開いていて、薄暗い中で6人くらいのダンサーたちが座っていて、砂のような白っぽいものと黒っぽいものを手で少しずつ落としていき床全体に絵を描いていました。幾何学模様のような感じです。チベット仏教の、砂で描く曼荼羅のようです。その作業をするダンサー達はだんだん増えていって、最後は13人で描いていました。全員、下はゆるい黒パンツで、上はグレー系の長そでTシャツでした。

シェン・ウェイが2005年から2008年までの間にプライベートで旅したチベット、カンボジア、中国での経験がその後に形になったのが、この作品です。

Iは、チベット編です。ダンサー達全員で床の上に紙ふぶき状のもので図形を描き終わったあと、真っ暗な中にリズムのない音楽が鳴り始めました。グオーンという音と、ドラの音のようです。
舞台上の模様の上に模様の形と大きさにピッタリ重なった照明が当てられていて、ダンサーたちがクネクネと動き始めました。照明は空の雲の映像に変わり、ダンサーは模様の上を足を引きずりながら踊って、その度にだんだんとその模様がぐちゃぐちゃにくずれていきました。
途中、照明がターコイズブルー一色になり、全体が空の上にいるようでとても幻想的で綺麗でした。ダンサーの動きはのびのびとしていて、足のつま先をつけたまま引きずりながらくるくると左右に回りながら動き続けていて、抽象的な印象の踊りでした。次第に舞台上の模様がぐちゃぐちゃになっていき、照明と舞台の模様と紙ふぶき、ダンスが全体でとてもスピリチュアルなイメージとしてまとまっていました。
客席から観ていると、なぜか落ち着いてきて、瞑想の世界に連れて行かれているような錯覚になりました。

IIIはシルクロード編です。衣装は男性も女性も薄いパステルカラーのモスグリーンのような短パンと長そでシャツでした。舞台上の陰で、ストリングスの生演奏もありました。
前衛的なダンスで、グループごとに長い間、舞台上を6歩進んでは4歩下がるということを続けていました。そして2人組てお互いに横に均一に体重をかけあって、だんだん下に沈んでずれていき、最後にはパタッと床に倒れていました。それを4組以上のダンサーたちが時々していました。倒れるときにお互いの肩の上に頭を乗せていて、そのまま2人でくっついたままでブリッジのようにして2人同時に少しずつ立ち上がって、元に戻っていました。
そしていつものシェン・ウェイらしい足のつま先をつけたままひきずったように回り続けて早く動く、キビキビしたダンスも始まりました。早く細かく、動いたり止まったりしていました。
全体的に、宇宙的な広がりを感じました。じっと観ていると、不思議な気持ちになりました。
最後は、ダンサーたちは数名で全体で1つにくっついてリフトを組み合わせて、組み体操のような感じになり、そのまま前に歩いてきている最中にライトが消えて終わりました。

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IIはカンボジア編です。男女ともに紫っぽい色の足首がすぼまったゆったりしたパンツで、上は薄い長そでシャツでした。舞台全体の壁に、後方と左右に、大きくいっぱいにカンボジアの風景の映像が映し出されていました。石像や風景の映像が続きました。ダンサー達は全員で固まって、踊っていました。とてもきれいでした。
森の太い幹のような映像が映り、録音の森の中の音が流れました。そこに全身タイツを着た男性のダンサーが現れ、ソロで踊りました。
急に上空から写したような映像が映り、機械音が鳴り、キビキビと早い動きの踊りがダンサー全員で始まりました。時々、一人ずつ激しい動きのソロが交互に繰り返され、キレがよくスピード感がありました。

この公演全体のハイライトシーンで一番盛り上がったところは、この最後の方ででてくる、下が白いタイツで上半身が裸の女性ダンサー達が数名、順番に出てきて激しく踊ったところです。そして床に半分寝そべって半分起き上がり、首と肩、上半身をすごく反らせたままじっとし続けました。
これは観ていると、引き締まった女性ダンサーの肉体全体をまるで彫刻作品のように仕立てているようで、白いタイツと合っていて、荘厳な美しさでした。鳥肌が立ちました。
客席はこの彫刻のような女性たちに感動して、すごい盛り上がりで拍手が鳴り止みませんでした。
(2009年7月9日夜 アリス・タリー・ホール/Photo : Stephanie Berger)