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「スミューイン・バレエ」

 8月下旬に、ジョイスシアターで、スミューイン・バレエの公演が行われました。トニー賞とエミー賞受賞振付家のマイケル・スミューインが芸術監督をつとめるカンパニーです。彼は、元ABTのプリンシパルダンサー、振付家でした。その後、サンフランシスコ・バレエの芸術監督を、1973年から85年までつとめました。様々なブロードウェイ・ミュージカルやテレビ、映画に振付作品を提供してきました。私は、以前にこのカンパニーの公演を観て、その振付の完成度の高さに驚き、以来、私は彼の大ファンです。音と振付がとてもよく合っています。この公演も楽しみにしていました。今回の公演では、3つの作品が上演されました。

『ブルーグラス・スライド』は、2005年の作品です。舞台いっぱいに大きなスクリーンが置かれていて、そこに、アメリカの古い伝統音楽のブルーグラスを演奏している風景が映っていました。その後スクリーンがなくなり舞台が現れると、はしごと3本のポールが置かれていました。ダンサーたちは、男女とも上下黒のタイツとタンクトップを着ていました。
ところどころ、ポールにつかまって回転したり巻きつきながら踊る、ポールダンスが振付に取り入れられていたので驚きました。

『ブルーグラス・スライド』

ポールダンスは、ニューヨークでも、夜中から朝にかけてジェントルマンズ・クラブなどで女性ダンサーたちが踊っている、女性のセクシーさを表現したダンスです。そこで踊っているダンサーの多くは、正式に幼少時からダンスやバレエの教育を受けたわけではない我流で這い上がり大金を稼いでいる女性たちで、日本人もいます。劇場で踊るバレエやダンスとは正反対に位置する、どちらかというといかがわしいところで踊られているアンダーグラウンドなダンスなのです。以前、友人のプロのダンサーに、このポールダンサーたちが踊りの基礎がないのに大金を稼いでいる話をしたら、「そんなのプロのダンサーといえないわよ。お客は踊りじゃなくて女性の胸でも見に来ているんでしょう!」と眉間にしわを寄せてひどく軽蔑し拒否反応を示していました。でも、ポールダンスはストリップとは違います。私も一度、ニューヨークのクラブの催しのパフォーミングタイムに、全身刺青を入れて黒いエナメルの衣装を着た奇抜な女性ダンサーがポールダンスを披露しているのを観たことがあります。ですから、正統派で大御所のマイケル・スミューインが、アングラなポールダンスをソフトに振付に使っているのを観て、なんてオープンな頭の柔らかい人なのだろうと、本当にびっくりしました。彼なりの味付けで、ポールダンスは、すっかりシアター向けの明るいエンターテイメント仕立てになっていました。
彼の振り付けでは、ポールをうまく使って、男女ペアがポールをつかみながらそれを軸にして、2人が語り合うような舞台になっていました。側転やバック転、簡単なタップダンスや、トウシューズで女性たちが踊るところもありました。とても見ごたえのある面白い作品でした。

また、『シンフォニー・オブ・PSALMS』は、今年の新しい作品で、ストラヴィンスキーの音楽を使っています。男女とも白い衣装で、男性は短パン、女性はミニスカートでした。これは、男女のリフトが多かったです。長い間、女性が逆さまに男性に持ち上げられていて、組体操のような難しそうなリフトが続いていて、面白かったです。

『フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン』は、2004年の作品で、フランク・シナトラの音楽を全編使ったものです。全部で9曲で、次々にシーンが変わって、男女ペアのダンサーたちが入れ替わっていきました。舞台後ろは、真っ暗な中にたくさんの電球が光っている、星空になっていました。ミュージカルのようなシアターダンスが多かったです。簡単なタップダンスの振付もありました。観客も一緒になって楽しめる、分かりやすい楽しいダンスでした。



『ブルーグラス・スライド』

『シンフォニー・オブ・PSALMS』

『シンフォニー・オブ・PSALMS』