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ダンス、衣装、セット、音楽のすべてが素晴らしかったNYCBの『火の鳥』

ダンス、衣装、セット、音楽のすべてが素晴らしかったNYCBの『火の鳥』

年末から、2月26日まで、ずっとニューヨーク・シティー・バレエの冬のレパートリーの公演が行われています。1月25日に3つの小品集を観に行きました。

『エピソード』は、1959年初演の作品で、ジョージ・バランシンの振付のものです。男女とも、白や黒のレオタードとタイツで統一されていました。舞台背景も、グレー1色のすっきりしたモダンな感じのものでした。踊りは4つのシーンで構成されていて、普段のバランシンの振付の中でも、変わった作品でした。モダンで、近代的な感じのイメージです。音楽も、リズムの無いようなランダムなものを使っているところもありました。面白かった振付は、男女一人ずつが、舞台の下手後ろと上手前から出てきて、綱渡りのまねをして真ん中に進んできて、出会って踊り始めるところです。

『ニューヨーク・エキスポート:オーパス・ジャズ』は、その名のとおり、ニューヨークらしいジャズの音楽に乗った楽しい踊りでした。1958年初演の作品で、2005年に新たにジェローム・ロビンズ振付で再演されました。トウではなく、普通のバレエシューズで踊っていました。古いスタイルのジャズのステップが中心でしたが、様々な形に分かれて変化していった、現在のダンスの元の姿を見せていただいた気分でした。観客がとても楽しめる作品でおもしろかったです。

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『火の鳥』は圧巻でした。音楽はストラヴィンスキー作曲で、振付はジョージ・バランシンとジェローム・ロビンズによるものです。初演は、1949年です。舞台装置とライト、衣装すべてが美しく、おとぎ話の世界の中に私たちが一瞬入り込んでいるかのような、夢心地の錯覚に陥りました。
 舞台セットの大きな画面の背景画が、まるでシャガールの絵のようだなと思っていましたが、あとで「プレイビル」を読むと、やっぱりシャガールが1945年に舞台セットのシーンと衣装もデザインしていました。さすがです。現在も彼のデザインを保存して、忠実に再現しているのですね。感動しました。時々、世界の舞台で、大画家が手がけた舞台セットがありますが、舞台は踊りを中心にして、美術と音楽の要素も入った総合芸術なので、とてもいいものだなあとつくづく思いました。暗い客席に座って明るい舞台をずっと見つめていると、今回のような全部(踊りも衣装、舞台セット、音楽も)が美しい作品だと、本当に、自分が現実からどこか別世界に入り込んだような不思議な感じを味わいました。この作品は、何回でもまた観たいです。素晴らしい作品です。ファンタジーにあふれていて、絵本の中にいるようでした。この作品は、機会があればぜひご覧ください。おすすめです。


 
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 舞台セットは、シャガールはとても喜んで楽しんでデザインしたとのことです。シャガールが水彩画でスケッチしたものを、1970年の再演の時に、衣装デザイナーのマダム・カリンスカが、テキスタイルやプラスチックなどに転写して使ったそうです。シャガールのオリジナルデザインの衣装を元に、彼女は衣装をデザインしなおしたそうです。
 振付も素晴らしかったです。火の鳥が羽をはばたかせて舞台ソデに消えていくところなどは圧巻で、とくに目に焼きついています。羽ばたき方は、白鳥とも黒鳥とも違った感じで、火の鳥の感じがよく表現されていました。バレエは、同じ鳥でも振付だけで色々な種類の鳥を演じて表現するのですね。同じような振付が多いように思われがちなバレエですが、鳥の種類とキャラクターを動作だけで演じ分けることができるバレエの振付の奥深さを、改めて認識できました。
 劇場を出ると、「ああ、おとぎの国から現実に戻ってきたんだな」と、我に返りました。それほどに、この作品は、別世界に連れて行ってくれていました。