ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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●蜷川幸雄演出による『近代能楽集』

リンカーンセンター・フェスティバルでは、ザ・ローズ・シアターで7月28日から30日まで、日本人演出家、蜷川幸雄による『近代能楽集』が上演されました。上演作品は、「卒塔婆小町」と「弱法師」で、三島由紀夫原作です。2作品のうち、「弱法師」で藤原竜也が主演するということで、話題になっていました。ダンス公演ではなく、演劇ですが、日本の作品が招聘されたので、観に行ってきました。ふだん、演劇はほとんど観たことはないのですが、とても良かったので、感激しました。

「卒塔婆小町」は、高橋洋と壤晴彦が主な登場人物です。お酒を飲んで酔っている詩人(高橋洋)が、夜に公園で老婆(壤晴彦)と出会い、ベンチで老婆の昔話を聞いているお話です。詩人はやがて、99歳の老婆の80年前の若くて美しい頃の姿と錯覚してしまって、言ってはならない言葉を口にしそうになってしまいます。舞台セットでは、上方に埋め尽くされた木の枝に満開の赤い花(椿のような感じ)が、最初から最後まで、「ポタッ、ポタッ」と大きな音を立てて、落ちていくところが、とても美しくて印象的でした。ポタッという効果音も良かったですが、だんだん、床に赤い花が落ちて敷き詰められていく様子も、視覚的に美しくて効果がありました。

「弱法師」は家庭裁判所が舞台でした。東京大空襲の炎で失明した青年(藤原竜也)を中心に、実の両親と育ての両親、調停委員(夏木マリ)が登場人物です。親権をめぐる話し合いが行われていました。青年は硬く心を閉ざして、人を受け入れない狂気を持っています。周りの人々は、青年に振り回されています。舞台セットがとても殺風景で、湿っぽい薄暗い感じがよく出ていて、夕日に照らされている感じの照明が効果を放っていました。最後に、裁判所の背景であった布が崩れ去って、三島由紀夫が、自衛隊の市ヶ谷駐屯地で自決した時の最後の演説が流れました。その中に青年が一人残っていました。三島由紀夫と青年を重ねているのでしょう。