ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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●ジェーン・コンフォート・アンド・カンパニーの『ペルセポネー』ほか

 10月5日から10日まで、ジョイスシアターにて、ジェーン・コンフォート・アンド・カンパニーの公演が行なわれました。すべてジェーン・コンフォートの振付でした。彼女はテネシー出身ので、70年代からアメリカを中心に、ヨーロッパ、中南米でダンスの活動を続けてきました。ブロードウェイやオフ・ブロードウェイでも振付を提供したり活動しています。彼女はもともと、ノースカロライナ大学の絵画の学位を取得している画家でした。変わった経歴のダンサー・振付家です。絵画とダンスは、芸術表現として違う形ではありますが、底でつながっているところがあるのでしょう。彼女の作品は、ダンス公演というより、ダンスも簡単でシンプルな動きが中心で、泣き叫んだり、パントマイムもあったりと、演劇のようなものでした。ダンスとしてとらえると簡単な振付ばかりなのですが、作品としてとらえると、彼女独自の世界観が一貫しているので、とても独創的なものです。ですから、ダンスの技を観に来る人には不満が残るでしょうが、日常から脱して違う空間を味わいたい人にはピッタリです。そのせいでしょうけれど、彼女自身もダンサーたちも、決して引き締まった体つきではなく、かなり太っています。このダンスは、ポスト・モダンと呼ばれるものにあたるのではないかと思います。公演の間中、音楽のない箇所が多く、独特のゆっくりしたテンポが一貫して流れていて、劇場内は不思議な世界に迷い込んだような感じでした。

最初の作品の『ペルセポネー』(ギリシャ神話:冥界の女王)は、ギリシャ神話の瞑想の作品です。ペルセポネーは、地獄(下界)の神イーデース(ギリシャ神話:死者の国の支配者)から関心をもたれていました。そしてイーデースはペルセポネーを地獄の女王として彼と暮らすように誘拐します。彼女の母デーメーテール(ギリシャ神話:農業、結婚、社会秩序の神)は、娘がいなくなってしまったのでとても悲しみ、役割を怠ったので自然の世界が死んでしまいました。ゼウスに嘆願し、デーメーテールは毎春ペルセポネーが地上に戻ってくるようにアレンジしました。ユング理論者たちは、ペルセポネーの行路の過程は、自身の知識の奥底への魂の旅であると考えました。彼女は戻ってくると、彼女は昼間の世界と夜の世界の2つを通過することができるようになっていて、それはただ昼間の世界だけに住む彼女の母親とは違います。この神話は死と再生の具体化を表しています。ペルセポネーがイーデースに連れて行かれてからは、デーメールはとても悲しんで、大声で泣き叫びながら、床に一面に敷かれたシートを上手から下手、下手から上手と何回も引っ張って切り裂いて行ったり来たりしていました。迫真に迫った嘆き方でした。最初と最後に、同じ振付が繰り返されていました。この作品は、本能的な、根源的な部分をつつかれるような不思議なものでした。

2つ目の『スリー・バガテル・フォー・ザ・ライチャス』は、全くダンスではなく、パントマイムのような演劇のような作品でした。主人公は2人で、その後ろに3人ずつ黒い服をすっぽりかぶった黒子がいて、それぞれが主人公の手、頭を持って、人形劇の人形のように動かしていました。ずっと台詞のテープが回っていて、それに合わせて口を動かし、表情や動きも合わせていました。

3つ目の『アンダーグラウンド・リバー』も不思議な作品で、ダンスとは言いがたいものでした。時々振付も混ぜていましたが、簡単な振付で、チョウチョか鳥が飛んでいるような感じでぐるぐると集団で周っていました。そして、30センチくらいの高さの紙で出来た人形の手足と頭の先などに針金をつけたものを、針金の先を4人で持って、その人形を操って、奇声を発したり歌ったりしていました。人形が操られてダンスをしたり、クロールや平泳ぎをしたり、まるで命を持った生き物のように動くので、メルヘンチックなのに気味が悪かったです。これも独特のゆったりとしたテンポが一貫として流れていました。劇場を出ると、「やっと普通の世界に戻ってきた」というほっとした気持になったほど、奇妙な作品でした。