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●Kバレエカンパニー、メトロポリタン歌劇場で『ラプソディ』を踊る

熊川哲也率いるKバレエカンパニーが、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場に日本のバレエ団として初めて登場。堂々のアメリカデビューを果たした。
これは、NYのリンカーン・センターが毎年行っている「リンカーン・センター・フェスティバル」の今年の注目事業「アシュトン記念公演」に、アシュトン作品『ラプソディ』をレパートリーにもつKバレエカンパニーが招かれ実現したもの。記念公演に出演したのは、Kバレエカンパニーのほか、英国ロイヤル・バレエ団、バーミンガム・ロイヤル・バレエ団、ジョフリー・バレエ団という、そうそうたるメンバーである。

記念公演で上演されたのは、『シンデレラ』(英国ロイヤル・バレエ団)、『二羽の鳩』(バーミンガム・ロイヤル・バレエ団)、『マルグリットとアルマン』(ギエム&ル・リッシュ)など日本でも知られている名作のほか、『モノトーンズI・II』『婚礼の花束』(ジョフリー・バレエ団)など珍しいものまで全16作品。様々なスタイルをもち、それぞれ個性的な作品ばかりで、ラインアップを眺めただけもアシュトン振付の幅広さ、奥の深さに驚く。そのなかで、超絶技巧が散りばめられた『ラプソディ』は、独自の魅力を放ち、やはり「アシュトン記念公演」には、外せない作品。そして、いま、この作品を踊りこなせるのは、熊川哲也Kバレエカンパニーのみ。NYデビューは快挙であるとともに、こう考えると、当然の流れの結果のようにも思えてくる。

さて、Kバレエカンパニーが登場したのは、記念公演の初日、7月6日。会場となったメトロポリタン歌劇場の中央ボックス席には、『ラプソディ』の初演者でもあるミハイル・バルシニコフの姿もあった。
第1部はジョフリー・バレエ団の『モノトーンズI・II』。Iは、エリック・サティの「3つのグノシェンヌ」、IIは、「3つのジムノペディ」を用い、それぞれ3人のダンサーが踊る。ゆっくりとした動きとポーズで見せる作品だが、ボディタイツ姿のダンサーは、重心が定まらずいつもどこか不安定。残念ながらアシュトン振付を味わうに至らなかった。

第2部はバーミンガム・ロイヤル・バレエ団の『エニグマ・ヴァリエーション』。エドワード・エルガーの同名曲にのせ、この作品で世に認められた作曲家エルガー自身のエピソードをつなげている。一幅の絵画のような舞台セットのなかで、演劇的に場面が展開していく、しっとりとした作品だった。
いよいよ最後が『ラプソディ』。振付の年代も最も新しいからか(1980年作。先の2作品は1960年代)、作品自体が新鮮。ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」も、挑戦的に響いた(ピアノ=高橋理沙)。当然のようなスタンディング・オベーション! 
だが、より充実していたのは、2日目(7月7日)である。

 この日の出番はトップ。最初から熊川の演技は余裕たっぷり。パートナー、デュランテも登場シーンから輝いていた。デュランテ&熊川、そして音楽との関係が、とても自然で、それでいてスリリング。熊川のジャンプは軽く、高い。康村和恵、長田佳世、荒井祐子、松岡梨絵、神戸里奈、小林絹恵の動きは、きれいに揃っていて、しかもそれぞれの個性が消えていない。つまり康村は情感たっぷりに、長田は清潔感あふれ、荒井は躍動美にあふれ、松岡は清楚さを感じさせながら、全体の調和は図られていた。

 観客の関心も、熊川とともにKバレエカンパニーにも向けられていた。客席には、この日も、ABTのマッケンジー芸術監督、ドボレベンコ&ベロツェルコフスキー夫妻などバレエ関係者の姿が多く見られたが、振付家であり教師のイゴール・ペリーは、「熊川の素晴らしさは以前から知っていました。今回の発見は、『日本のバレエ団』のレベルの高さ。熊川は、そのプレゼンテーションにも成功したといえるでしょう」と語っていた。