ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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 ニューヨークは、ようやく肌寒くなりました。今年のサンクスギビングデー(感謝祭)は、11月27日です。 この日はアメリカではとても重要な祭日で、昔アメリカ大陸に渡ったばかりの人々が始めての冬を越さなければならなかった時に、 原住民のネイティブ・インディアン達から寒さのしのぎ方や食べられる食べ物を教えてもらったり、分けていただいたことに感謝する日だそうです。 アメリカ人の友人アリにそう教えていただきました。家族全員で集まって、ターキーをはじめとするご馳走を食べます。私は、アリ宅に招待していただいて一緒に祭日を祝います。

光と影と鮮やかな色彩を駆使したニコライ・ダンス・シアター

 10月28日から11月2日まで、ジョイスシアターにて、ニコライ・ダンス・シアターの公演がありました。このカンパニーは、振付家アルヴィン・ニコライ(1910-1993)によって、1948年に創られたプレイハウス・ダンス・カンパニーがもとになり、後にニコライ・ダンス・シアターとして知られるようになりました。コネチカット生まれのニコライは振付家にとどまらず、作曲家、舞台装飾家、衣装デザイナーを兼ね備えており、多くの彼の才能を一つの舞台芸術に総合させて、その活躍は約50年に及びました。もともと彼は幼少時からピアノを学び、若くして無声映画音楽のオルガニストとしてのキャリアを積んでいました。その後、カレッジ時代からダンスに目覚め、モダンダンスのトレーニングを受け始めました。

 このカンパニーの現在の演出家は、マレー・ルイス。今回の公演に、日本人ダンサーのフジイ・アイも出演していました。7つの小品集で、すべてアルヴィン・ニコライによる振付、作曲、衣装・照明デザインの作品の再演でした。全体を通してヴィヴィッドなカラー(黄・青・緑・赤など)の照明を使い、光と影の強いコントラストが美しく、素晴らしかったです。振付は、ペアを組ませたものが多かったです。今まで見たことも無い照明の色合いで、感動しました。暗闇に鮮やかな色の光が浮かび上がるような情景でした。

 特に印象に残っているものは、1985年初演の『クルーシブル』。まるで自分が宇宙か水の中にいるような感覚のビジョンでした。舞台上に横向けに長細い鏡の台を置き、その後ろ側に派手な蛍光色っぽい爬虫類のような模様の衣装に身を包んだダンサー達が数人潜んでいて、足や手だけを出して動き、その動作が鏡に上下対称に映っていました。顔だけ出したり、お尻だけ出したりして、リズムのない静かでランダムなシンセサイザーの音楽に乗って、一人一人違う動きをしていました。照明は赤と緑の蛍光色の縞模様や、黄色の水玉模様の光で、衣装と相乗効果で、生々しいトカゲのようなイメージを醸し出していました。体の一部分だけ、手や足を使っているのに、上下対称に鏡に映すことによって、人間ではなく宇宙空間の別の生物のように見えました。不思議な作品です。

 1956年初演の『リシック・フロム・プリズム』もとても独創的で印象に残っています。頭にイカのような巨大な被り物をして、蛍光色の裾の長いボディコンのワンピース型のレオタードを着た4人のダンサー達が踊りました。衣装の足が分かれていないので、足はほとんど開かず、両手も後ろに組んだ状態で、動きにかなり制約がある振付でした。この照明も、鮮やかな水色の水玉や、紫や黄色のもので、色彩的に爬虫類を思わせるような不思議な感覚の色でした。音楽は、不協和音を多用し、オルゴールが壊れたようなものでした。これも観ていると別の生物のように見えてきました。

 1983年初演の『フィナーレ』は、特に照明が面白かったです。最初、舞台バックいっぱいに黒地に蛍光エメラルドグリーンの植物の葉っぱの拡大図のような照明があたっていて、それが動いていて、私達観客がまるでジャングルか別世界にいるような感覚になりました。人間には真っ赤の照明があてられていて、ジャングルの中で赤いものが動いているようでした。そして画面が変わると、後ろには明るい水色の照明があたり、人には照明があたらず、黒い人影だけが浮き上がったように見えました。