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アンジェラ・加瀬 text by Angela Kase 
[2009.03.10]

間もなく来日公演されるプラテルのバッハ マタイによる『憐れみ pitié!』

Les Ballets C. de la B. Alan Platel & Fabrizio Cassol : "pitié !"
アラン・プラテル・バレエ団 アラン・プラテル振付 バッハ マタイによる『憐れみ pitié!』

 アラン・プラテルとレ・バレエ C ド・ラ Bが ロンドンに戻ってきた。
現サドラーズ・ウェルズ劇場芸術監督のアリステア・スポールディングはプラテルの深みのある作品に魅せられ、ここ10年来彼と彼のカンパニーをロンドンに招いている。
そのせいかロンドンには固定ファンが多く、今回の<バッハ マタイによる『憐れみ pitié!』>にも、プラテルの新作を一目見ようと劇場に個性的な老若男女が押し寄せた。ファン層はヨーロッパの流行に敏感な若者たちから、知的な中年男女、イギリスとヨーロッパのコンテンポラリー・ダンスのファンたちである。

今回の作品は、マタイの受難をテーマに、振付家アラン・プラテルと作曲家ファブリッツィオ・カッソルによるコラボレーション作品。
イギリス(イングランド)は古の昔、ヘンリー8世が自らの結婚・離婚のために国の主教をカソリックから英国国教会にかえたこと、また近年のキリスト教や教会離れもあいまって、カソリック国のヨーロッパ各国やアイルランドに比べると、(白人層の間で)聖書の教えや原罪、「神と自分」といった観念が希薄な国である。
今回サドラーズ・ウェルズ劇場にヨーロッパの観客が多く見られたのは、プラテル自身がゲント出身のベルギー人ということも関係しているかもしれないが、それ以上にヨーロッパ各国やアイルランドの人々の方が、宗教に関する題材を扱った作品に深い関心を持っているからだ、ともいえよう。
 
カッソルの物哀しい音楽、舞台後方を上下に2分した舞台セットを巧みに使った演出、うずくまり、転がり、のたうちまわり、時に互いの衣装を剥いで愛撫しあう男女の踊り手たち。
おとぎばなしを題材にした古典バレエの美化された様式と演出作品の対極に位置する、時に醜い人間の真実を描いた魂をえぐるコンテンポラリー・ダンスの世界に思わず引き込まれた。
ロンドン公演最終日の終演は満場の観客から大いなる歓声と拍手、スタンディング・オベーションが贈られた。
 
このカンパニーは、近く日本公演を行う予定だと聞く。キリスト教的背景を持たない日本の観客のほうがよりピュアに作品世界に入り込めるかもしれない。イギリスやヨーロッパとは大いに異なるであろう日本の観客の反応や公演の反響が今から気になるところである。
(2009年2月7日 サドラーズ・ウェルズ劇場)

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