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アンジェラ・加瀬 text by Angela Kase 
[2008.02.11]

コジョカルが金平糖の精を踊った『くるみ割り人形』

ロイヤル・バレエは、クリスマスからお正月にかけてイワーノフ、ピーター・ライト版くるみ割り人形』とアシュトン振付『ベアトリクス・ポターの世界』を上演した。
『くるみ割り人形」上演に先立ってロンドンの街頭や地下鉄構内に張り出されたポスターの金平糖の精はベテランの吉田都。日本人でありながら、ロイヤル・ バレエのプリンシパルの中で、最も良く英国バレエを体現するアーティストとなった吉田が、この冬、その功績を称えられ大英帝国OBE勲章を贈られたことは 日本でも大きな話題となった。
日本人バレリーナでこの勲章を与えられたのはスコティッシュ・バレエで長く活躍後、バレエ・ミストレスとしても腕をふるった大原永子に続いて2人目である。
日本で踊る機会を増やすため、ロイヤルのゲスト・プリンシパルとなった彼女の主演公演を見るのは、今やロンドンのバレエ・ファンにとって非常に貴重な体 験である。この冬は怪我のため、最終的に『くるみ割り人形』主演も12月14日1度きりになってしまったのが残念であった。

12月28日、コジョカルとコボー主演公演を観る。現在市販されているDVD収録時にはクララ役があまりにも良く似合ったコジョカルも、今ではバレエ団 を背負って立つプリンシパル。私生活のパートナーでもあるコボーとは、現在バレエ団で最も完成されたパートナー・シップを見せるが、それぞれの怪我もあ り、今回『くるみ割り人形』で久々の顔合わせとなった。

ギエム、バッセルなき今、バレエ団の2大女性スターといえばコジョカルとロッホ。
身体能力と音楽性に優れ古典からマクレガーの現代作品までを得意とするコジョカル。ウルトラC級の旋回の美技と、踊る女優として演技力に秀でるロッホ。 清純で繊細、野に咲く小さな花のようなコジョカルに対して、ロッホは艶やかに咲き誇る牡丹かダリアのよう。男性の庇護欲をそそるコジョカルに対して、ロッ ホは男性を惹きつけ、甘やかに、だがしっかりとその魅力で彼らを支配する。何においても対照的な二人である。
コジョカルに何らかの問題があるとすれば、バレリーナとして様々な美質を持ちながら、スター性が希薄なために、時として古典バレエの豪華絢爛な舞台セットにのまれたり、衣装に負けてしまうこと、現代作品においては作品や群舞にのまれて見えなくなってしまうことであった。
だが、研鑽と努力によって近年だいぶ存在感や、貫禄が備わってきており、当日の金平糖の精でも、コボーと共に登場して輝くスターのオーラを放った。
主役以外で当日観る者の目を楽しませたのは、雄弁なマイムと明るい個性、跳躍に旋回、指先からつま先までコントロールの行き届いたハンス・ペーターとく るみ割り人形2役のリッカルド・セルヴェーラ、「アラビアの踊り」で妖艶な魅力をふるった蔵健太、「ロシアの踊り」で勇壮なジャンプを見せたスティーブ ン・マックレー、「花のワルツ」の薔薇の精役で、たくさんのバレリーナに囲まれ抜きんでたバランスや身体のコントロールを見せたラウラ・モレーラであっ た。