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アンジェラ・加瀬 text by Angela Kase 
[2007.10.10]

注目を集めるクリストファー・ウィールドン率いる「モルフォーセス」

『アフター・ザ・レイン』
  さらに9月18日~23日までは、新進振付家クリストファー・ウィールドンが率いるカンパニー「モルフォーセス」が、ロンドンのサドラーズ・ウェルズ劇場で旗揚げ公演を行った。

ウィールドンは英国ロイヤル・バレエ出身で、ローザンヌ国際バレエ・コンクールでは傑出したダンサーにだけ贈られる金メダルを受賞している。アラインメ ントの美しさに秀でた非常に芸術性の高い踊り手であったが、ファニー・フェイスが災いし、ロイヤル・バレエ団では、アシュトンやマクミランの物語バレエの 主役には無理があったからか、20歳で渡米し、ニュー・ヨーク・シティ・バレエ団(NYCB)に入団した。音楽性とラインの美しさでダンサーとして頭角を 現し、振付家としてもデビューして26歳でNYCBの常任振付家となった。34歳になった現在では、英国ロイヤル、ボストン、サンフランシスコ、ボリショ イなどの著名なバレエ団にも作品を提供し、今や世界で最も忙しい振付家の一人といわれている。

カンパニー名の「モルフォーセス」は、ウィールドンがジョルジュ・リゲッティの弦楽4重奏曲第1番「メタモルフォーセス・ノクチューン」に振付けた小品と同名である。

現在このグループは、公演ごとにウィールドンがこれまでの活動で得た友人やお気に入りダンサーをNYCBやアメリカン・バレエ・シアター(ABT)、英国ロイヤル・バレエ団他から借りて公演を行っている。

公演はA/Bの2プロダクションが組まれ、それぞれでウィールドンの新作世界初演が行われた。
『モルフォーセス』で幕を開けたAプロではウィールドン作品3つに加え、フォーサイスの『スリンガーランド・パ・ド・ドゥ』と、今回ダンサーとしても参加したエドワード・リャン振付『ヴィシシテュード』の小品5作が披露された。

話題のウィールドンの世界初演作『プロコフィエフ・パ・ド・ドゥ』を踊ったのは、英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパル、アリーナ・コジョカルとヨハ ン・コボー。美しい構成でありながら、強い身体能力と厳しいパートナーシップが必要とされる小品に挑んだ2人は、短いリハーサル期間にもかかわらず、持ち 前の身体能力の高さと音楽性、現在、世界最高クラスと思われるパートナーシップを見せ、気鋭の振付家の期待に大いに応えてみせた。

BプロにはABTのアンヘル・コレーラと英国ロイヤル・バレエ団のアレクサンドラ・アンサネッリが客演し、バランシン振付の『アレグロ・ブリランテ』を踊ったほか、ウィールドンの小品『フールズ・パラダイス』の世界初演が行われた。

初期のウィールドン作品には、バランシンやロビンスの影響がうかがわれ、本人のオリジナリティはやや希薄に感じられた。だが8月のボリショイ・バレエ団 ロンドン公演で英国初演された『エルシノア』、そして今回の世界初演の2作品と、A/B両プロの最後に踊られた『アフター・ザ・レイン』には、身体の一部 をコンタクトすることでダンサー達が形作るフォーメーションの妙や、作品が醸し出す独特のリリシズムなど、ウィールドンのオリジナリティが光った。またこ の新進振付家は、リゲッティ、アルヴォ・ペールトなど現代音楽に造詣が深く、作品に使用する音楽選曲にも素晴らしいセンスを備え、振付と共に関係者や観客 の心を鷲掴みにした。

ダンサーでは前述のコジョカル、コボー、コレーラ、アンサネッリに加え『アフター・ザ・レイン』を踊ったウェンディ・ウィーランとクレイグ・ホール、『フールズ・パラダイス』他を踊ったゴンザロ・ガルシアが強い印象を残した。

『アフター・ザ・レイン』