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守屋光嗣 text by Koji Moriya 
[2007.06.10]

『マイヤーリンク』:エドワード・ワトソンへの期待

エドワード・ワトソン
  4月から5月にかけて、ロイヤル・バレエはケネス・マクミラン振付の『マイヤーリンク(うたかたの恋)』を上演した。あら筋については、2004年4月号の、船引さんのレヴューをご覧ください。http://www.chacott-jp.com/magazine/around/uk_16.html
3シーズンぶりの今回の公演で注目を集めたのは、イギリス人プリンシパル・ダンサー、エドワード・ワトソンの、ルドルフ役のデビュー。古典バレエでの主 役へのキャスティングが少ない一方で、高度な演技力を要求される役や、モダン、コンテンポラリーでの活躍が著しいワトソン。今回、上演前に幾つかの新聞で 彼への単独インタヴューが掲載されるなど、現段階で、イギリス人男性としては唯一のプリンシパルとしてここにきて注目度が高まっている印象を受けた。
ワトソン、ガレアッツィ
  その期待に応えてか、ワトソンのロール・デビューは批評家から、そして観客から非常に高い評価を得た。また、ワトソンはファースト・キャストではなかっ たため、脇はファースト・ソロイストやソロイストのダンサーがキャストされたそうだが、彼の熱演に刺激されたのか、全体的に見ても、多くのプリンシパルが 共演したカルロス・アコスタやヨハン・コボーの舞台よりも好意的な評価を得ていたのが、印象に残った。

ここまでワトソンの評価が高まっているにもかかわらず、既に発表されている来シーズンのピリオド1のプログラムの中で、ワトソンはマクミランの『ロミオ とジュリエット』だけにしかキャスティングされていない。観客として、彼を古典バレエの王子役でも観てみたいのだが、なかなか実現しない。このいってみれ ば偏ったキャスティングを見ていると、ロイヤル・バレエのキャスティングはかなり固定観念、例えばダンサーの容貌などに縛られてしまっているのではない か、と思ってしまうことがよくある。
筆者が実際に観たのは、ヨハン・コボーとアリーナ・コジョカルのキャスト。この二人の他、ルドルフの母、エリザベート皇后を演じたイザベル・マックミー カンや、その愛人を演じたヴァレリー・フリストフが好演していた。反面、ルドルフの妃を演じたロベルタ・マルケスが全く役を演じるレヴェルに到達していな くて、誰が舞台の中央にいるかで物語の連続性が途切れてしまうような印象だった。『マイヤーリンク』の世界を舞台に最良の形で再現するには、ロイヤル・バ レエといえどもキャスティングについては難しいことがあるのだろうと想像する。
ワトソン、ガレアッツィ
エドワード・ワトソン