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守屋光嗣 text by Koji Moriya 
[2007.05.10]

ロイヤル・バレエの新シーズンのプログラム

4月号で、モニカ・メイソン監督が語っていたように、ロイヤル・バレエ(ROH2のプログラムを含む)の2007/08シーズンのプログラムと、ピリオド1の予定キャストが、4月4日に発表された。
プレス・リリースでまず強調されているのが、ジョージ・バランシーンの『ジュエルズ』が、初めてロイヤル・バレエのレパートリーに加わったこと。「ル ビー」だけは、1989年に既に上演されたそうだが、全体を通しては来シーズンが初めてとのこと。コスチュームは、ニューヨーク・シティ・バレエが初演し た1967年に、バーバラ・カリンスカ(Barbara Karinska)がデザインしたものを再現するそうだ。

2006/07シーズンには、4つの新作が上演された。来シーズンも新作3演目が予定されているが、厳密に言えば、年間プログラムの中では2作になる。 何故かというと、2006年12月1日に常任振付家に任命されたウェイン・マックグレガーの新作は、通常のプログラムとしては予定されておらず、11月の 催される「A World Stage at Covent Garden」とうい特別ガラ公演での上演予定になっている。ということは、恐らく一夜限りの上演になると思う。その替わりというわけではないだろうが、 2008年2月のトリプル・ビルで『Chroma』の再演が決まっている。

残り二つは、2008年2月/3月に、クリストファー・ウィールドン、同年4月にデンマーク人振付家キム・ブランドストラップの新作がそれぞれ予定され ている。ブランドストラップにとって、メイン・ステージでの新作は初めてだ。彼は、2005年の初夏にリンベリー・スタジオ・シアターで上演された「イン スパイアード・バイ・アシュトン」というプログラムで、『Two footnotes to Ashton』をロイヤル・バレエに振付け、高い評価をえた。既に、ヨーロッパの他のバレエ・カンパニーやダンス・グループには精力的に新作を提供してい るので、待ちに待った感がある。ロイヤル・バレエの新しい面を見せてくれるのでないかと期待している。
過去数シーズンの開幕が、ミックス・プログラムだったので、来シーズン、開幕から4作続けて全幕というのは、カンパニー創立75周年を区切りに、ロイヤ ル・バレエは新たな一歩を踏み出す、そんな意気込みを感じる。ダンサーたちには、体力的には厳しいものがあるかもしれないが、無事に乗り切った上で、更に 素晴らしい舞台を見せて欲しい。

今シーズン、多く取り上げられたバランシーンが2演目になったのと入れ替わるように、フレデリック・アシュトンの作品が戻ってきたのも楽しみだ。12月 から2008年1月にかけてダブル・ビルとして上演される『Les Patineurs 』(『スケーターをする人々』)と、『Tales of Beatrix Potter 』(『ベアトリクス・ポター』)は、21世紀になって初めての上演のはず。また、プログラム発表の際に、ロイヤル・バレエ側から発言があったそうだが、2 シーズンぶりの上演となる『A Month in the Country』(2008年2月/3月)では、新しいキャストが組まれるようだ。
というのも、ここしばらくナタリア役をほぼ独占していた感のあるシルヴィ・ギエム(彼女自身、この役を好んでいたように思う)は、来シーズンもロイヤ ル・バレエに戻る予定はなく、また2シーズン前にロール・デビューしたダーシー・バッセルの引退はほぼ確定(今月15日から18日まで、ロンドンのサド ラーズ・ウェルズ劇場でフェアウェル公演)。更に、一時期、ギエムとナタリア役を分け合っていたミュリエル・ヴァルタットも数年前にカンパニーを去ってい るので新キャストは必然だろう。舞台はロシアながら、イングリッシュ・ガーデンの片隅で、翳を増す夕闇の中に浮かび上がる名残の薔薇のようなこの演目を誰 が、どう演じるのか。熱い議論が交わされることだろう。

全体を観ると、2008年の日本公演で上演予定の『眠れる森の美女』と『シルヴィア』の上演回数が多い、という点を除けば見応えのあるシーズンになりそうだ。
ROH2のダンス・プログラムに目を移すと、ウェイン・マックグレガーは、ロイヤル・バレエへの新作振付よりも、カンパニー内の若い才能とのコラボレイ ションに期待されているのが明らかだ。この点は、4月号のインタヴューで、ROH2のデボラ・ブル・ディレクターも強調していた。また、インタヴュー時に は予定の段階だったが、Ballet Blackの次回公演で、ロイヤル・バレエのコール・ドのリアム・スカーレットに新しい作品を委嘱することが、プレス・リリースでは確定している。スカー レットは、ROH2プログラムを通して、振付家として着実に経験を積んでいるようなので、期待が高まるところだ。

成果がどのように実を結ぶのかが判るのは、当然のことながら数年後のこと。また、このような長期にわたる若手育成のプログラムを維持、運営していくのは ロイヤル・バレエに限らずどこのカンパニーにとっても負担は大きいのではと想像する。それにもかかわらず、将来を見据えたプログラムに積極的に取り組んで いるロイヤル・バレエが、伝統を維持しながらどのように変化していくのか、興味が尽きない。

http://info.royaloperahouse.org/News/Index.cfm?ccs=1133
6つあるPDFファイルの上から5番目。