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守屋光嗣 text by Koji Moriya 
[2006.12.10]

オランダ国立バレエ団の4作品

 5年ぶりのロンドン公演(サドラーズ・ウェルズ劇場)を行ったオランダ国立バレエは、20世紀後半と21世紀にはいって創作されたコンテンポラリーの振付をそれぞれ2作、計4作を持ってきた。既に定評のあるダンサーたちの身体能力の高さは、噂にたがわぬものだった。

上演された振付は順に、『Vier letzte Lieder』(1977年作、振付:ルディ・ヴァン・ダンツィヒ、音楽:リヒャルト・シュトラウス)、『Suite for Two』 (2006年作、振付:Krzysztof Pastor、音楽:バッハBWV1008)、『Frank Bridge Variations』(2005年作、振付:ハンス・ファン・マーネン、音楽:ベンジャミン・ブリテン)、そして『The Second Detail』 (1991年作、振付:ウィリアム・フォーサイス、音楽:トム・ウィレムス)。コンテンポラリーと括られる4作だが、振付と音楽がどれほど強く結びついて いるかによって、振付の普遍性がより一層高まる、ということを強く感じた。言い換えれば、片方だけよくても駄目なのだ、と。

フォーサイスを除いては、音楽は振付家が選ぶ前から、どれもとても強い個性を持っていた曲ばかり。残念ながら、最初の2作は、まず音楽と拮抗できるほど の強さ、独自性を持っていなかったように感じた。『Suite for Two』は、現在、マーネンとともにカンパニー所属の振付家であるKrzysztof Pastorが今回の公演のために振付けたものとのこと。言っても仕方ないことだが、もう少し時間があれば、違ったものになった可能性も。『Vier letzte Lieder』は、この作品より数年先んじて創作されたケネス・マクミランの『大地の歌』を思い浮かべるシーンが、いくつもあった。「死」を扱うにして は、どこかもう一歩踏み込む勢いがなく、シュトラウスの旋律が舞台の主導権を握っていたようだった。

 


『Vier Letzte Lieder』

『Vier Letzte Lieder』

『Vier Letzte Lieder』


 

  対照的に、後半の2作は、共に音楽を上手く味方につけた振付、という印象だった。2005年から、カンパニーの振付家に戻ったマーネンは、1932年生ま れ。今回、イギリス初演となった『Frank Bridge Variations』は、彼の年齢への偏見を跡形もなく砕いてしまうほど、軽快でウィットに富んだものだった。男女のペア5組が交互に踊るもので、カッ プルの間に緊張が高まったかと思うと、肩の力をすっと抜いたような踊りがその緊張の直後に続くなど、舞台への集中力が全くそがれなかった。

フォーサイスの『The Second Detail』は、創作された年代から推測できるように、バレエ・ファンが彼に期待する典型的な振付、と言い切ってもいいだろう。13人のダンサーが、そ れぞれの身体の限界に挑むような、それでいてバレエの様式美を感じさせる振付だった。オランダ国立バレエ団のダンサーのエッジがきいた踊りは、ウィレムス の挑発的な音楽にひけを取ることはなかった。

『The Second Detail』