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船引怜美 Text by Remi Funabiki 
[2005.04.10]

●インペリアル・アイス・スターズ 『眠れる森の美女 オン・アイス』

23人の世界選手権、オリンピックなどのメダリスト・スケーターによって構成される、ロシアのインペリアル・アイス・スターズ『眠れる森の美女 オン・アイス』がサドラーズ・ウェルズ(SW)で上演されました(3月8日~13日)。

振付はオリンピック・コーチのタチアナ・タラソワが担当、主演オーロラ姫には1998年長野オリンピック銅メダリストのマンディ・ヴォーツェルがゲスト出演しました。

この公演予定をSWのパンフレットで初めて知った際、アイススケート・ショーが劇場でどのように上演されるのか非常に興味深く思いました。まず、SWがど のようにしてアイススケート場に変わるのか? 実際14トンの氷がSWの舞台に張られ、上演中は劇場の外に設置された巨大な機械で常に氷の状態を保つため の工夫がされていました。しかしスケートリンクとまったく異なるサイズの通常のプロセミアムアーチ空間で演技をすることは、ヴォーツェルが「アイスキュー ブの上で滑っている感覚」とコメントしているようにスケーターにとって非常に困難なものだそうです。

さらにチャイコフスキーの曲とプティパの振付があまりにも固定概念化されている中で、ローズ・アダジオ、3幕のパ・ド・ドゥウやブルーバードはどのように アイススケート・ショーで振付、演出されるのかが非常に興味深い点でした。しかし考えてみれば、バレエとアイススケートでは動きが異なることは明らか。ス ケートにはアダジオ系の曲は理想的ではないためか、それらの曲は一切使われませんでした。

演出として特徴的だったのはオーロラ姫よりもカラボス(マリア・ボロヴィコワ)が中心人物的存在であったこと。作品の約半分がカラボスのシーンという特別 な演出は、サーカスのような宙吊りなどもありディズニーランドのショーを見ているようなスペクタクル性に溢れました。その他にも典令長カタブラット(アン トン・クリコフ)のアクロバティックな演技とテクニック、リラの精(オルガ・シャロウテンコ)が第2幕ではスケート靴を脱ぎポアントで踊るなど、通常の フィギュアースケートや典型的な『眠れる森の美女』では決して味わうことの出来ない意外性が印象的でした。

私の個人的な意見として、録音された音楽の質の悪さとショー用に編集された音楽の不自然さ(繰り返しの多さや他のバレエ作品の象徴的音楽が再使用されてい ること(例:『オネーギン』に使われている幻想曲『フランチェスカ・ダ・リミニ』作品32)が非常に気になってしまいましたが、バレエの公演を鑑賞するの とはまったく別の楽しみ方が出来る舞台でした。



(2005年3月10日、サドラーズ・ウェルズ・シアター)