ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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守屋光嗣 text by Koji Moriya 
[2006.07.10]

●オマージュ・トゥ・ザ・クィーン:エリザベス女王80歳の誕生日に

エリザベス女王の即位を記念して、1953年に創作された振付。音楽(マルコム・アーノルド)はこのための特別に作曲されたもので、振付はフレデリック・ アシュトン。4つのパートからなる振付だが、残念なことに、最後の「Air」のパート以外は振付が残されていなかった。そこで、ロイヤル・バレエの芸術監 督、モニカ・メイソン女史は、ロイヤル・バレエと絆が深い3人の振付家に残りのパートを新たに創作するように依頼した。順に「Earth」をマイケル・ コーダー、「Waters」をデヴィッド・ビントレー、そしてクリストファー・ウィールドンが「Fire」を振付けた。また、今回も、アシュトンの 「Air」のパートはクリストファー・ニュートンが再構築を手がけた。美術は、ピーター・ファーマー。


「Waters」のパートから

「Fire」のパートから

「Air」のパートから


最初と最後には、背景に王冠や紋章があしらわれて、祝祭のバレエ、と言うのは明らか。その趣旨は伝わるのだが、4人の振付家を無理やりにくっつけたよう な、流れが一つにならない印象は否めなかった。個人的に一番気になったのが、アーノルドの音楽。これが、大袈裟に言えば、ビントレーなどにとって「足枷」 となってしまったのではないか、と思えてしまった。特にコーダーの「Earth」はもう少し短くできていればかなり印象が違ったのではないかと想像する。

各パートとも、精霊とその従者がいて、他にパ・ド・シスやパ・ド・カトル、更にコール・ドの踊りという具合にオーソドックスな構成になっている。どの パートも特に主役二人の美しい動きと細やかなパートナー・シップを強調しているようだった。そんな中で観客の注目を一身に集め、かつ強烈な印象を残したの が、「Fire」でSpirit of Fireを踊ったスティーヴン・マックレイ。ウィールドンは自身に割り振られたパートを振付ける際、マックレイを念頭においていたのは疑う余地がないくら い、それほどマックレイの独壇場だった。舞台上の空気を切り裂き、勢いよく火を吹き上げるかのごとく舞う姿は、まさに圧巻。素晴らしいのは、そのパフォー マンスが全くアクロバティックな印象を与えず、マックレイの踊りのすべてがバレエという芸術として表現されていたてん。正直な所、コジョカルと吉田の優美 な踊り、バッセルのオーラもかすんでしまうくらいだった。


始まり

始まり

終わり