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吉村 麻希 text by Maki Yoshimura 
[2016.12.12]

激情に身を焦がしたジュリエットを瀬島五月が熱演----貞松・浜田バレエ団『ロミオとジュリエット』

貞松・浜田バレエ団
『ロミオとジュリエット』貞松正一郎:演出・振付、貞松 融/浜田蓉子:演出

創立から半世紀を迎える貞松・浜田バレエ団が、12年ぶりにクラシック・バレエの全幕の新作『ロミオとジュリエット』を上演した。振付は芸術監督の貞松正一郎。
ダンサーの力量と優れた演技力。さらに宝塚歌劇やミュージカルなどでも活躍し注目を集める若手舞台芸術家 二村周作のシンプルながら変幻自在に様相を変える舞台美術と豪奢さとシックを兼ね備えた衣装のデザイン。衣装製作の第一人者である林なつ子、メディアや舞台で活躍中のヘアメイク石田弥仙と、作品の制作を支えるスタッフの力も大きな牽引力となって、バレエは総合芸術だと改めて感じさせてくれた舞台だった。

osaka1612a_3259.jpg 撮影:岡村昌夫(テス大阪)(すべて)

初日は川﨑麻衣(ジュリエット)と武藤天華(ロミオ)、2日目は瀬島五月(ジュリエット)とアンドリュー・エルフィンストン(ロミオ)という配役だった。私は2日目の公演を鑑賞した。
キャピレット家での舞踊会で瑞々しく愛らしい瀬島五月のジュリエットと、若者らしく明るく少し浮ついたところのあるアンドリュー・エルフィンストンのロミオ。この二人の出会いは運命的で輝きを放っていて、のちに起こる惨劇を想起することはできないものだった。ジュリエットが人々の合間をぬってロミオに投げかける視線、恥じらいながらも弾むようなポワントワーク。ジュリエットの胸の高まりが、客席にまで聞こえてくるかのようだ。巡り逢えた二人の喜びはバルコニーのパ・ド・ドゥでさらに高まるのだが、欲を言うならば、高揚する恋人たちの躍動感をさらに引っぱり上げるくらいの軽やかさを、演奏でも感じられればよかったとも思う。
諍いはカーニヴァルの喧噪の中で始まった。サーベルを激しく交じえながら舞台狭しと争う川村康二(ティボルト)と塚本士朗(マキューシオ)。この2人が鮮やかにそれぞれのキャラクターを演じたことで、両家が互いに相容れない存在であり、対立がいかに根深いものであるかを浮き上がらせた。そして両家を巻き込んで悲劇へと加速しながら堕ちてゆく。諍いの末にはロミオがティボルトを刺殺し、追放の身となってしまった。

osaka1612a_3498.jpg 瀬島五月、アンドリュー・エルフィンストン)

追放となる夜明けがくるまでの僅かな時間を共にするロミオとジュリエット。寝室のパ・ド・ドゥでは、惨劇を招いたことの許しを神に請うかのようにジュリエットを高く掲げるロミオ。悲しい運命に身をまかすかのように、ロミオに身体をあずけるジュリエット。誠に愛すべき者と出会った喜びを発露させバルコニーで踊ったパ・ド・ドゥと同じ旋律をたどりながら、全く状況が変わってしまったやり場の無い絶望感が漂った。さらに悲劇の糸は絡まり、ジュリエットの仮りの死とそれを知らせる神父の使いが暴漢に襲われて死に、行き違いでロミオの元にジュリエットの死の知らせが届く。ロミオは仮死するジュリエットが横たわる地下納骨堂に駆けつけ、彼女に寄り添うパリスを刺殺し、自らも命を絶つ。両親にパリスとの結婚を迫られ行き場を無くし、今、最愛のロミオまでも失ったジュリエットは絶望に慟哭し、毒をあおって絶命する。瀬島五月のジュリエットは、この運命の悲劇をすざまじい熱量で駆け抜けていった。両家の諍いを重ねる愚かさが招いた、若い恋人たちの悲劇の結末の深淵に、観客はただただ息をのむばかりであった。
(2016年11月6日 あましんアルカイックホール)

撮影:岡村昌夫(テス大阪)(すべて)
osaka1612a_3914.jpg 塚本士朗、川村康二osaka1612a_3227.jpg
osaka1612a_4086.jpgosaka1612a_4331.jpg
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