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『Ballet suite "Raymonda"』で幕開け、福田圭吾、山本勝利の振付作品、迫力たっぷりの『イーゴリ公』より韃靼人の踊り──Y.S.BALLET COMPANY 17th PERFORMANCE

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

Y.S.BALLET COMPANY

『Ballet suite "Raymonda"』山本庸督:振付、『Search Light』福田圭吾:振付、『I Leave Light On(For You)』山本勝利:振付、『イーゴリ公』より韃靼人の踊り カシアン・ゴレイゾフスキー:原振付

それぞれ違ったタイプの4作品を楽しませてくれた公演だった。まず幕開けは、クラシック、山本庸督振付で『ライモンダ』3幕の見せ場を『Ballet suite "Raymonda"』として構成した舞台。中心を踊ったのは中浜のぞみと飯田慧。落ち着いた大人の魅力を活かした中浜の踊り、高度なテクニックでも見せた飯田の踊りと、主役+11カップルで観せた壮観なアダージオなどゴージャスな構成を楽しんだ。

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『Ballet suite "Raymonda"』中浜のぞみ、飯田慧
撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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『Ballet suite "Raymonda"』中浜のぞみ、飯田慧
撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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『I Leave Light On(For You)』山本勝利
撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

2部ではオリジナル作品を2つ。まず上演されたのは、福田圭吾振付『Search Light』。"光"がテーマだが、スマートフォンに右往左往させられているような現代社会が描かれる。手に持ったスマートフォンで話す、画面の向こうの"イイネ!"に一喜一憂する。眼の前に現れた人に向き合うこともままならない──出会うカップルを髙井香織と山本庸督が踊り、周りの人々とともに"今"を表現した。
次には、この団体出身で、長年ヨーロッパで踊っており、現在、シュツットガルトに拠点を置くゴーティエダンスで活躍する山本勝利の自作ソロ『I Leave Light On(For You)』。5年前のコロナ禍に同僚に振付けた作品だというが、今回は自身が踊った。黒いジャケット、ズボン姿で、人生中盤に差し掛かろうとしている男性が自分と向き合う。一筋縄にはいかない、良いことばかりではない、でも悪いことばかりでもないさ──私にはそんな風に受け取れた。

3部、最後は『イーゴリ公』より韃靼人の踊り、これが圧巻。まずキャスト。イーゴリ公には、2部最後の『I Leave Light On(For You)』でも良い表現を観せてくれた山本勝利。若い頃、とても気持ちの良いテクニックで湧かせてくれた彼が、ここでは囚われの身となりながら饗され、それでも自らの矜持を失わない、そんな存在を静かに演じていたのが印象的。そして、コンチャーク汗の山本庸督の威厳、騎兵隊長の待山貴俊の雄々しい獣のような荒々しさ。それと対になるフェータルマの田中佐季の女性の柔らかな曲線美、艶めかしさ。また、漢の僕の大巻雄矢とチャガの村越南月のチャーミングな弾けるような踊り。群舞もこの作品の世界観に丁寧に向き合っているのが感じられた。
男性らしさ、女性らしさ、生物学的な性にとらわれる必要はないけれど、バレエの世界には確かに、男性らしさ、女性らしさの魅力が残っていると思う。
(2025年8月2日 東大阪市文化創造館大ホール)

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『Search Light』髙井香織、山本庸督
撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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『Search Light』髙井香織、ほか
撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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『イーゴリ公』より韃靼人の踊り
チャガ:村越南月、汗の僕:大巻雄矢
撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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『イーゴリ公』より韃靼人の踊り
フェータルマ:田中佐季、騎兵隊長:待山貴俊
撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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『Search Light』
撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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『イーゴリ公』より韃靼人の踊り
撮影:尾鼻文雄(OfficeObana)

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