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篠原聖一振付、佐々木夢奈と今井智也が主役を踊った『ロミオとジュリエット』、佐々木須弥奈と北井僚太他による『ESPRIT de corps』──佐々木美智子バレエ団公演

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

佐々木美智子バレエ団

『ロミオとジュリエット』『ESPRIT de corps』篠原聖一:振付

今年の佐々木美智子バレエ団の公演、代表で芸術監督の佐々木美智子の孫にあたる3兄弟が彼、彼女らと同年代の仲間たちとともに活躍する舞台だった。上演された演目は2つで、ともに篠原聖一振付作品。

まず、はじめに『ESPRIT de corps』。アルゼンチンタンゴにのせての憂いを持った作品。英国ロイヤル・バレエで頭角を表している3兄弟の末っ子・佐々木須弥奈が、ポーランド国立劇場バレエ団の北井僚太をパートナーに中心を踊った。身長も髙いが、踊り自体、表現や醸し出すものがとても大きく感じられる。須弥奈の踊りは"西洋の淑女"、"大人の女性"の魅力。彼女は3兄弟のなかで一番年下なのだけど、まるで一番年上のようで、とても堂々としていた。

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『ESPRIT de corps』佐々木須弥奈
撮影:文元克香(テス大阪)

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『ESPRIT de corps』佐々木須弥奈、北井僚太、ほか
撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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『ロミオとジュリエット』
ジュリエット:佐々木夢奈、ロミオ:今井智也
撮影:文元克香(テス大阪)

そして、メイン演目の『ロミオとジュリエット』。篠原版の『ロミオとジュリエット』は、このバレエ団で3兄弟の父である佐々木大がロミオ、下村由理恵のジュリエットという配役で過去に2度上演されている。幕開けに「運命」が天秤を手に登場。その後全編にわたって適宜登場して、二人の"運命"を司っていく。この「運命」役を今回、佐々木大が担った。数々の舞台経験を重ねたからこその存在感、出演者たちの現実の父でもあり、そんな関係性も透けて見えるような気がしながら観た。ジュリエットは3兄弟の長女、一番年上で、日本の様々な舞台で活躍する佐々木夢奈、ロミオは谷桃子バレエ団の今井智也だ。夢奈のジュリエットは、登場では、やんちゃな可愛らしい魅力、アイドルのように愛らしいルックスも無邪気な踊りにとても合う。そんな子供のようなジュリエットが、場面が進むなかで一歩一歩、大人になっていく。ラストシーンでは、墓場で目覚めた時の、とまどいから、そばにロミオを見つけた時の喜び、そこから事実を知っての落胆、絶望──そんな感情の変化が手に取るように伝わってきた。ロミオの今井智也も的確で自然な演技で、満足のいく踊りだった。
脇も充実。マキューシオは3兄弟の真ん中で、ジャクソン国際コンクール金賞の後、アメリカのジョフリー・バレエで活躍していた佐々木嶺。彼はこの夏、帰国し、秋からは日本を拠点にするという。的確なテクニックとやりすぎない演技が良かった。そして、ベンヴォーリオは貞松・浜田バレエ団の小森慶介。実は小森と佐々木夢奈は新婚カップル。また、キャピュレット夫人は、実際にジュリエットの佐々木夢奈の母である杉原小麻里、長身の美しいバレリーナである。今回の演出ではジュリエットがパリス(今井大輔)との結婚を承諾しないことをしかる場面で、ひっぱたいてしまったことに戸惑う、、、本当は叱りたくない、そんな両親をキャピュレット公の山本隆之とともに演じ、心に残った。
(2025年7月31日 東大阪市文化創造館大ホール)

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『ロミオとジュリエット』
撮影:文元克香(テス大阪)

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ジュリエット:佐々木夢奈、キャピュレット公:山本隆之、キャピュレット夫人:杉原小麻里
撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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ジュリエット:佐々木夢奈、運命:佐々木大
撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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ジュリエット:佐々木夢奈、ロミオ:今井智也
撮影:文元克香(テス大阪)

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マキューシオ:佐々木嶺
撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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ジュリエット:佐々木夢奈、ロミオ:今井智也
撮影:岡村昌夫(テス大阪)

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