武島アイカプロデュース、大阪で新たなコンテンポラリーダンス・フェスティバル──OSAKA INTERNATIONAL CONTEMPORARY DANCE FESTIVAL2025~BEGINNING~
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ワールドレポート/大阪・名古屋
すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna
OSAKA INTERNATIONAL CONTEMPORARY DANCE FESTIVAL2025~BEGINNING~
『Just Keep Waiting(excerpt抜粋)』『Unsaid,Still Understood』武島アイカ:振付ほか
「OSAKA INTERNATIONAL CONTEMPORARY DANCE FESTIVAL(OICDF)」という新しいコンテンポラリー・ダンスのフェスティバルが大阪で立ち上がった。ニューヨークを拠点に活動する武島アイカが企画したもので、今回、武島に加えて5つの団体が出演し、大阪、北加賀屋のACCO SPACE μで開催された。
武島が主宰する「sarAika movement collective」は、多様性(Diversity)、公平性(Equity)、包括性(Inclusion)の価値を核に、ダンスを社会活動の一環と位置づけて活動しているということで、今回のフェスティバルも、ダンス作品を順に上演したというだけではなく、観客参加型の「コラボレーティブ・インプロビゼーション」も行うといった形だった。
ダンスの上演は、武島が振付けして踊った『Just Keep Waiting(excerpt抜粋)』でスタート。打楽器のリズムの中、ベリーショートヘアの少年のような武島が困難にもがくなかでも進もうとする様を表現しているように思えた。続いて、エティエンヌ・ドゥクルー振付『Le Toucher/触る』を踊ったのは、tarinainanika(増井友紀子) 。お腹の中にいる赤ちゃんを大切に慈しむような踊り──彼女は本当に今、お腹に赤ちゃんがいるそう。
『Just Keep Waiting(excerpt抜粋)』武島アイカ
撮影:大島智広
『Le Toucher/触る』tarinainanika(増井友紀子)
撮影:大島智広
松本鈴香が振付けて、激しさをもって踊った『呼吸のように』、TONE dance & co. -MaLi の動けるダンサーたちが群舞の迫力を観せた『い ち~二の前』。そして、武島の振付でniconomielの上杉真由と鍵千鶴が踊ったのは、『Unsaid,Still Understood』。母と娘、身内だからこその衝突、関係性がアングラ演劇のような心の闇の見せ方を伴って描かれた。最後のグループはサクソフォン奏者である小川幸子の演奏を中心にメンバー全員で振付構成を行ったというperformance project BLACK 1の『JACK DAW』。"カラス"を思わせる黒の様々な形の衣装(布を織るところから大阪発祥の「さをり織」で創り上げたオリジナル衣装なのだそう)も興味深く、音楽、ダンス、衣装とコラボレーションを楽しんだ。
2部が観客参加型の「コラボレーティブ・インプロビゼーション」。クオリティ・ボードの、スピードを表す「ストップ」、「ゆっくり」「超スローモーション」「早く」「超早送り」、エネルギーを表す「めっちゃ力む」、「めっちゃリラックス」「ノリノリ」、「コピー」や「リセット」といった言葉の数々、即興クロッキーのようなインスピレーション・アートなどを使って、即興でダンサーを動かしていく。ゲーム的な楽しみをともなったそんな時間が持たれた。
来年以降、さらに充実したフェスティバルすべく準備が進められている様子。大阪でコンテンポラリーダンスの魅力が広まることに期待したい。
(2025年8月17日 ACCO SPACE μ)
『呼吸のように』松本鈴香
撮影:大島智広
『いち〜二の前』TONE dance & co. -MaLi Ayana はなり誠 YuNa Runa saho 金
撮影:大島智広
『Unsaid,Still Understood』niconomiel(上杉真由、鍵千鶴)
撮影:大島智広
『Unsaid,Still Understood』niconomiel(上杉真由、鍵千鶴)
撮影:大島智広
『JACK DAW』
performance project BLACK-ITUKI,MIKI,ATSUKO,YUKIKO,SACHI,HIDE
撮影:大島智広
撮影:大島智広
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