長年踊り続けて来た小西裕紀子のクララ、有馬和弥をパートナーに──桧垣バレエ団『くるみ割り人形』
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ワールドレポート/大阪・名古屋
すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna
桧垣バレエ団
『くるみ割り人形』小西裕紀子:改訂振付
クララ:小西裕紀子 撮影:岡村昌夫(テス大阪)
第74回と回を重ねての桧垣バレエ団の公演。今回のプリマもやはり小西裕紀子だ。開演時、幕前にクララとしての小西が現れて、客席の子どもたちに向かって無邪気な口調でお話するところから。そうして親しみやすく観客を『くるみ割り人形』の世界へ誘っていった。
フリッツは妹尾充人。小柄だが、正確な技術が気持ち良いダンサーだ。脇には、ドロッセルマイヤーの巽誠太郎、ねずみの王様の榎本心をはじめとした演技力を兼ね備えたダンサーが並び、見やすく物語を進めて行った。小西はベテラン中のベテランだが、ちょっとおしゃまな少女を好演、長年、踊り続け、この作品にも向き合い続けているからこそだろうと思えるスムーズな表現だった。
パートナー、くるみ割り人形(王子)を踊ったのは有馬和弥。安定した高い技術を持つ彼が、信頼感を持ってクララをお菓子の国にエスコート。お菓子の国での最後のグラン・パ・ド・ドゥも、この2人、小西と有馬が踊るヴァージョン。ピンクのチュチュを身に着けた小西の、穏やかで踊る喜びをしみじみと感じさせる様子を観ていると、こちらも幸せな気持ちになってくる。金平糖のヴァリエーションは、動きそれぞれに意味が感じられ、とても丁寧に取り組み、仕上げられていることを実感。有馬は、さすがにとても美しいジャンプなど、高度なバレエテクニックをふんだんに観せて、王子らしい魅力を満喫させてくれた。
そして、今回、お菓子の国のディベルティスマンに、楽しみな若手ダンサーが豊富だったことも、とても興味深かった。長身を活かして鮮やかに見せた中谷美咲、大塚春菜、中井嵩人、宗近匠のチョコレート、さらに長身、10等身かと思える素晴らしいスタイルで憂いを表現した牧野カレンと榎本のコーヒー、男性の技を楽しんだ福島元哉と妹尾のロシアンケーキ、パティシエ(芦笛)の西口瑠美の踊りもとても見応えがあり、楽しんだ。もっと観たいと思える若手が揃っていることが喜ばしい。
(2025年9月2日 ロームシアター京都メインホール)
クララ:小西裕紀子、ドロッセルマイヤー:巽誠太郎
撮影:岡村昌夫(テス大阪)
クララ:小西裕紀子、フリッツ:妹尾充人
撮影:岡村昌夫(テス大阪)
クララ:小西裕紀子、くるみ割り人形(王子):有馬和弥
撮影:岡村昌夫(テス大阪)
お菓子の国 撮影:岡村昌夫(テス大阪)
クララ:小西裕紀子、くるみ割り人形(王子):有馬和弥
撮影:岡村昌夫(テス大阪)
フィナーレ、96歳の桧垣美世子と 撮影:岡村昌夫(テス大阪)
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