ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2013.04.10]
From Osaka -大阪-

『火の鳥』と『春の祭典』をミュージシャンとのコラボレーションより上演

アルティ・ダンスカンパニー
『火の鳥』振付:山口陽子『春の祭典』振付:河邉こずえ、芸術監督:望月則彦

京都府民ホール “アルティ” を拠点に、芸術監督・望月則彦のもと、所属の違うダンサーや振付家が集い活動するアルティ・ダンスカンパニー。その公演が今年も行われた。9回目となる今回、取り上げたのは『火の鳥』と『春の祭典』。ストラヴィンスキーの曲に世界中の名だたる振付家がそれぞれ独自の作品を作り上げている演目だ。
9日の開演前には、唐津絵理(愛知芸術文化センター主任学芸員)によるプレトークがあり、それも聞くことができた。今回の作品についてというのではなく、『火の鳥』と『春の祭典』という作品そのもの、加えてバレエ・リュスに関する解説だったのだが、さすがに唐津の幅広い知識が活かされ、また初めてこの作品に触れる観客にも分かりやすくコンパクトにまとまったトークでとても良かったと思う。その日の作品に関するアフタートークという企画は多く、またプレの場合は別の日にということが多いが、こういった開演前のプレトークというのも、意義のあるものだと感じた。

osaka1304a03.jpg 『火の鳥』(C)京都府立府民ホール“アルティ”

先に上演されたのは、山口陽子振付の『火の鳥』。打楽器のアーティスト、宮本妥子、後藤ゆり子とのコラボレーション。ロシアの民話『火の鳥』のストーリーに沿ったものではなく、“火の鳥”を“憧憬”や“崇拝”、“恐れ”の対象として抽象的に描いた作品。中心となる“火の鳥”を踊ったのは桑田充。他のダンサーはすべて女性だったのだが、桑田も男性と言うよりは、中性的な存在と見えたのが興味深かった。客席を使ったり、舞台の形を変化されることができる(高低差を部分的に変えることができる)アルティの劇場特性も活かして、ラスト、希望を感じさせて終わる心地よい作品に仕上げていた。
後半は、河邉こずえ振付の『春の祭典』。ピアノのパトリック・ジグマノフスキー・池田珠代夫妻とのコラボレーションだ。観て、意外な『春の祭典』だった。はじめ、白い衣装の女性(枡富元穂)が目を引き、彼女が生け贄の乙女かと思ったが、そういうストーリーではなかった。中田一史演じる男性が切腹し、命を絶つところから作品は始まる。白い衣装の彼女は愛する人を失い悲しみに震えるーーー。日本人の死生観を描いた作品だという。確かに内なる葛藤は、群舞によっても感じられた。けれど、このストラヴィンスキーの変拍子の激しい曲は、ロシアの大雪に閉ざされた厳しい冬から人々が待ち焦がれた春が来る、その激しさや野蛮とも言える荒々しさが強く伝わる曲だと思う。日本人の死生観が内面ではげしいものを持ったものだとしても、少し質が違っているように思え、日本人の死生観を表現するなら別の曲を使った方が良かったのではないか、と、私は個人的にそんな印象を持った。とはいえ、中田のピュア、透明感のある踊りをはじめ、ダンサーたちの魅力は味わえたし、構成の工夫は感じられたと思う。
(2013年3月9日 京都府立府民ホール“アルティ”)

osaka1304a04.jpg 『火の鳥』(C)京都府立府民ホール“アルティ” osaka1304a05.jpg 『火の鳥』(C)京都府立府民ホール“アルティ”
osaka1304a06.jpg 『火の鳥』(C)京都府立府民ホール“アルティ” osaka1304a01.jpg 『春の祭典』(C)京都府立府民ホール“アルティ”
osaka1304a02.jpg 『春の祭典』(C)京都府立府民ホール“アルティ”