吉田早織、福岡雄大のオーロラ姫&フロリモンド王子を中心に日本バレエ協会中部支部が力を合わせた『眠れる森の美女』
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ワールドレポート/大阪・名古屋
すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna
日本バレエ協会中部支部
『眠れる森の美女』山本康介:改訂再振付、マリウス・プティパ:原振付
日本バレエ協会中部支部が今回取り組んだ公演は、山本康介による改訂・再振付による『眠れる森の美女』。山本が長年活躍してきた英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団が大切にするピーター・ライト版を思い出させる、リラの精(小野由加利)がロングドレス姿での演技を中心とした役で、カラボス(田川陽子)と対称をなす描かれ方であるなど、ロシアでのマリウス・プティパの初演から、英国で慈しまれてきた歴史までをよく知った上で、今回のダンサーたちのための細かいアレンジを加えて全幕を仕上げていた。演奏は、井田勝大指揮セントラル愛知交響楽団。

『眠れる森の美女』
オーロラ姫:吉田早織、フロリモンド王子:福岡雄大 © 和光写真

『眠れる森の美女』
フロリーネ姫:瀧澤利來、青い鳥:長谷川元志 © 和光写真
オーロラ姫を踊ったのは、愛知県生まれで神澤千景バレエスタジオでバレエを始め新国立劇場バレエ団、東京バレエ団、K バレエカンパニーと主要バレエ団で活躍してきた吉田早織。良い意味で日本人らしい端正で安心感のある踊り。また経験を重ねてきたからこそなのだろう、特に、表現が難しい2幕の幻影の場の憂いを含んだ踊りに深みを感じた。フロリモンド王子は福岡雄大。こちらもさすがの安心感のある踊り。身体が本調子ではないと聞いたものの、まったくそれを感じさせないダイナミックなジュテ・アン・トールナンはじめ、高度な技の数々に大きな存在感、気品が感じられた。
フロリーネ姫(瀧澤利來)と青い鳥(長谷川元志)のグラン・パ・ド・ドゥもとても良かった。瀧澤の輝きがあって伸びやかな踊り、長谷川の歌うように楽しげな高テクニック、コーダの軽く鮮やかなブリゼはずっと観ていたくなるものだった。
プロローグの6人の妖精に男性のカヴァリエが付くなど全体に豪華な構成。プティパ版でのリラの精のヴァリエーションは喜びの精として宮原詩音が長身を活かした大きな踊りで楽しませてくれた。群舞の各場面も、普段、別々の様々な団体で踊っているダンサーたちが集った形だが、心を合わせて取り組んでいることが感じられて好感が持てた。
(2025年10月5日 愛知県芸術劇場大ホール)

リラの精:小野由加利 © 和光写真

カラボス:田川陽子 © 和光写真

『眠れる森の美女』 © 和光写真

オーロラ姫:吉田早織、フロリモンド王子:福岡雄大、リラの精:小野由加利 © 和光写真

宝石の踊り:小林里奈、西尾美紅、栗原柊、牧村直紀 © 和光写真

白い猫:松尾ミチル、長靴をはいた猫:浅井敬行 © 和光写真

赤ずきん:冨吉蒼唯、狼:後藤蒼志 © 和光写真

オーロラ姫:吉田早織、フロリモンド王子:福岡雄大 © 和光写真
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