ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津 絵理 text by Eri Karatsu 
[2009.02.10]
From Nagoya -名古屋-

恒例の越智インターナショナルバレエ『くるみ割り人形』

ワレリー・コフトン振付『くるみ割り人形』

 今年も「くるみのシーズン」がやってきた。越智インターナショナルバレエは、名古屋と岐阜で『くるみ割り人形』を上演。毎年恒例となっているこの公演には、華やかに着飾った少女たちも多数訪れ、年の瀬お楽しみのイベントとなっている家族も多いように見受けられる。
今年の配役はトリプル・キャストで、24日はクララが森絵里、王子が越智友則というフレッシュコンビでの上演。(23日は、越智久美子とワディム・ソロマハ、26日の岐阜公演は、渡辺梢とワディム)。
冒頭は、劇場の橋掛かりを使った街を急ぎ家路へと着く家族たちの場面から始まる。越智家の犬も登場し、クリスマスの夜を家族で過ごすことを楽しみにしている人々の期待に満ちた冬の通りの風景だ。
第1幕シュタールバウム家の応接間では、クリスマス・パーティが開かれている。少女クララとフリッツは登場人物と等身大の中島衣里加と久野直哉。越智バ レエの『くるみ割り人形』では、男性ダンサーはウクライナからのゲストが勢ぞろいとあって、リアリティある子役と男性ダンサーの気品ある佇まいを見ている と、本当のロシアの家族のパーティ風景を傍観しているかのような気分にさせられる。ドロッセルマイヤーのセルゲイ・ボンデゥールはお茶目な役柄にぴったり で、人柄が滲むような踊りを全身で表現。プレゼントの最後に、ひとつしかないくるみ割り人形が与えられると子供たちの間で取り合いになる。
真夜中に繰り広げられるくるみ割り人形率いる兵隊とねずみの闘いでは、子供たちが兵隊を、ねずみをゲストの男性陣が演じることで、他の舞台とは一味違っ た迫力が見所のひとつ。それを見ているクララは、少し大人びた表情の森絵里。お人形のような顔立ちで、少女役が適任の森だが、この舞台ではさらに大人の洗 練が加わったようだ。勝利を決めたくるみ割り人形と踊る森には初々しさとちょっと大人に近づいたクララの心情が、ぴったりと重なって見えた。
気がつくとあたりは雪景色。振付家コフトンのロマンティックな演出で背景が目くるめく変化していく。
第2幕の夢の国では、橋掛かりから登場するクララと王子を9人のエンジェルがお菓子の国の入り口で待ち構えている。登場したのは、森絵里とワディム・ソロマハ。キャストが急遽変更になったようで、演出が変わったのかとちょっと驚いた。     
お菓子の国の門が開くと、デヴェルティスマンでは華やかな宴の舞が演じられる。そして、多様な構成の花のワルツでコール・ドが舞台狭しと踊る中、白い衣 装に身を包んだクララと王子が登場する。智友則は、秋の公演『新・白鳥の湖』の道化役とはうって変わって、ノーブルな王子らしい雰囲気を湛えている。怪我 が心配された友則だったが、そんな心配はおくびにも出さず、相変わらずの跳躍、切れの良い回転など、森とのパートナーシップにも安定感がある。
この舞台では、くるみ割り人形が常に縦軸となって物語を導いている。プロローグでは小さな小さなくるみ割り人形が上手袖から顔を出して、観客を覗き込 む。今回は思わぬハプニングもあったが、王子が幕ごとに変化することでクララの成長にしたがって、パートナーの男性が変わっていく演出のようにも思えて、 興味深かった。
(2008年12月24日 中京大学文化市民会館)