ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2005.12.10]
From Osaka -大阪-

●ニジンスキー『春の祭典』日本初復刻 兵庫県立芸術文化センター「オープニング・ガラ」

10月に阪急西宮北口駅前というとても便利な場所にオープンした兵庫県立芸術文化センター、そこでの初めてのバレエ演目がこれ。初めて足を踏み入れた兵庫県立芸術文化センター大ホールは、落ち着いた木肌を生かした内装、それに合わせた黄色いオペラカーテンが印象的な本格オペラ劇場だった。

 出演は海外などからのゲストと兵庫県舞踊協会のダンサーたち、演奏は生まれたばかりのこのホール付きの管弦楽団。まず第1部は、『白鳥の湖』第2幕、主演はヤンヤン・タンとデヴィッド・アーシー。ソリスト、コール・ド・バレエを兵庫県洋舞家協会より。ヤンヤン・タンのオデットは、さすがに大きな動きもとても上品。後ろにそって、やわらかくフワッときれいなアラベスクになりながら起きてくる姿が眼に焼き付く。腕も水面にたゆたう白鳥そのものだった。王子役のデヴィッドもスタイルが良く、きれいなラインで踊る。コール・ドもよくそろった美しい動きで、スタイルのとても良いダンサーもいた。

『白鳥の湖』


『眠れる森の美女』
 2幕は3つの演目(13日は『コンティヌウム』よりパ・ド・ドゥが加わり、4演目)。はじめに、ディアナ・ヴィシニョーワとアンドリアン・ファジェーエフによる『眠りの森の美女』第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥ。笑顔がとても可憐なヴィシニョーワ、コーダのアラセゴン・アラベスクが高く驚いたが、きれいだった。続いては、観る機会の少ないプティバの振付作品(再振付ナタリア・ヴォスクレシェンスカヤ)歌劇『ラ・ジョコンダ』より“時の踊り”。美しい星空の元で色とりどりのチュチュの女性たちが踊る姿はロマンティックで楽しい。兵庫県洋舞家協会のダンサーたちばかりによる作品、出演ダンサー全員がテクニカルなパをよくこなしてこなしていた。主役の夜の女王と三日月を上村未香と貞松正一郎。動きもなめらかな上村、貞松もダイナミックで良かった。そして『ロミオとジュリエット』よりバルコニーシーンを、ヤンヤン・タンとデヴィッド・アーシー。流れるような動きが魅力的なジュリエット、激しい情熱を感じるロミオだった。

 そして最後、第3部は『春の祭典』。20世紀初頭、ディアギレフのバレエ・リュスによってパリのシャンゼリゼ劇場で上演されたニジンスキー振付の初演版を、ミリセント・ホドソンが復元したものの日本初演。主役の選ばれし乙女---つまり生け贄の乙女を踊ったのは、バレエの基礎を持ち、モダン、コンテンポラリーの世界で活躍する平山素子。他の出演者は兵庫県洋舞家協会、賢者役は企画制作アドバイザーでもある評論家の薄井憲二が自ら演じた。どこかの原住民を思わせる衣装、6番?または内向きの足、膝を曲げて、首を曲げた姿勢・・・。ちょうど一世紀ほど前、この作品はクラシック・バレエを見慣れた人々に大きなショックを与えたのだろう。今、現代のさまざまなダンスに囲まれた私たちにとっても特にラスト近くの迫力には引き込まれるものがあった。それに、1世紀前にこんなダンスが創られたことは、その後さまざまなクラシックとは違う作品が生まれる土台になったのだと思うと学術的な大きな意義を感じる。

『ロメオとジュリエット』

『時の踊り』

『春の祭典』

『春の祭典』


『春の祭典』
 ただ、少々気になるのは、もしかすると、普段バレエを見慣れないけれどオープニング公演ということで訪れた観客には、『春の祭典』は地味な難しいものに思えたかもしれない。オープニングとしていくつものバレエ公演があったなら、初めての人向けのもの、バレエを見慣れている人向けのものといろいろと準備出来たのだろうが、この公演のみだったので、そのあたりが少し心配だった。私自身も地元の人間として、ぜひこの劇場が、普通の人が気軽に楽しんでバレエを観る場所に発展してほしいと願うから。
(11月12日、13日 兵庫県立芸術文化センター、12日)
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