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桜井 多佳子 text by Takako Sakurai 
[2004.11.10]

大阪バレエカンパニー公演『パキータ』『アルレキナーダ』

 今年6月に逝去した、同カンパニー代表者、安積由高のプロデュース。特に『アルレキナーダ』は、故人が日本初演を切望していたという。
パ・ド・ドゥ部分は知られているが、その全幕は、現在、世界でもあまり上演されていない『アルレキナーダ』は、プティパの台本・演出・振付作品。1900年2月10日にペテルブルグのエルミタージュ劇場で初演され、その3日後の13日にはマリインスキー劇場で上演されている。金持ちのカサンドル役はエンリコ・チェケッティ(バレエ教師としても著名なイタリア人)、コロンビーナ役はクシェンスカヤ、ピオレッタ役はプレオブラジェンスカヤら、バレエ史上に残る舞踊家たちが初演した。
イタリアのコメディア・デラルテ(16-18世紀にイタリアで流行した仮面の即興喜劇)風の楽しい作品。主要人物はみな人形のようでもあるし、アルレキンやピエロは道化役者。ストーリーはシンプルだ。~カサンドルの娘コロンビーナとアルレキンは恋人同士だが、カサンドルは娘を金持ちのレアンドルに嫁がそうとしている。だがコロンビーナの友人ピエレッタの助けも借り、妖精の祝福も受け、最後に恋人同士は結ばれる~。


今回はサンクトペテルブルグからデスニツキーら指導者を招き、ロシア版を直伝。コロンビーナ役の堀端三由季は、華やかさもあり表情も豊かでこの役にぴったり。ただ、身体のラインに以前のシャープさがあれば、さらにファンタジックな魅力が加わったのではないか。ピエレッタ役の山下摩耶は、正確なポジションやステップで人形のようにも見せる。ピエロ役の青山崇は高いジャンプで、役柄にも作品全体にもアクセントをつけた。カサンドル役のアンドレイ・クードリャは独特の存在感を見せた。なるほどと思わせるキャスティングだ。アルレキンは新国立劇場バレエの奥田慎也が演じた。
音楽はリッカルド・ドリゴ。有名な「ドリゴのセレナード」(劇中、アルレキンが歌うという設定)も、この作品から生まれ、前述したようにパ・ド・ドゥ部分は、コンサートやコンクールでもよく踊られている。その原典の全幕は、カラフルな衣裳も鮮やかな、陽気で洒落た作品だった。大変意義深い日本初演だといえるだろう。またひとつ、同カンパニーは貴重な財産を増やした。


第1部に上演した『パキータ』は、子供たちのポロネーズとマズルカで幕を開けた。続く、安積瑠璃子、ユリア・レペット、アンドレイ・クードリャのパ・ド・トロワも見ごたえがあった。安積はスタイルが美しく、清潔感がある。今後が楽しみな舞踊手だ。
ソリストはもちろん、コール・ドに至るまでもワガノワ・スタイルが徹底しているので、統一性がとれている。全体的に水準の高い『パキータ』に仕上がっていた。

特記しておきたいのは、リシュアン役、青木崇の(おそらく)主役デビュー。青木はワガノワ・バレエ学校留学を経て、リトワニア国立バレエ団でソリストとして活躍、今年5月に帰国した。彼は2000年に行われた第一回大阪Prixのジュニア一部で第一位に輝いている。そのときのゲスト審査員、ファルフ・ルジマートフが、特に印象に残ったダンサーとして青木の名を真っ先に挙げていた記憶がある。ちょうど、ワガノワ留学の直前で、「留学すれば、もっとよくなるんじゃないかな」とも語っていた。それから4年を経て青木は、一回りも二回りも大きくなった。身体全体に筋肉がつき、堂々とした演技が舞台で映えた。ジャンプは高く、回転力もある。[白いタイツ]が似合うノーブルな雰囲気も持つ。関西のバレエ、いや日本のバレエ界待望の大型新人男性ダンサーといえるだろう。これからの活躍に注目したい。


河崎聡指揮、エウフォニカ管弦楽団演奏。(10月2日、八尾市文化会館)