ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2004.09.10]
From Osaka -大阪-

42年ぶりの新振付、ワクイバレエ団の『まりも』

 1962年に、石井歓の作曲でロシアのワルラーモフの振付で東京バレエ団によって上演されたグランド・バレエ『まりも』。42年の時を経て、涌井三枝子が新たな演出・振付での上演に取り組んだ。

 初演時の石井歓の曲を使用しつつ、部分的に重複使用するなど、現代風な振付に対応するためにアレンジし、全く新しい振付での上演、日本人の振付による『まりも』は初ということになる。
『まりも』は日本の先住民と言われるアイヌ民族を題材とした悲恋物語。美しい娘セトナ(山川未実子)が身分違いの下僕のマニペ(池上彰朗)に恋をする所から話は始まる。セトナの許嫁メカニ(高須佑治)がマニペを亡き者にしようと襲うが、争いの中で逆にナイフはメカニ自身を刺してしまう。思いがけず殺人者になってしまうマニペ。
 セトナはそんなマニペを救おうとチュッカランカムイ(月から下った神)に逢いに行き、罪を償うためには眼、耳、口のすべてをささげなければいけないと告げられる。その試練を受け入れ、廃人のようになるセトナ。それを知ったマニペは真実の愛を貫いて踊り、二人は湖の底へ旅立つ・・・阿寒湖だけに浮かぶ“まりも”は二人の愛の化身だと伝えられている、というストーリー。

 1幕は熊祭りなどのにぎやかで明るいシーンが続く。そういうシーンも良いのだが、マニペが襲われる2幕から心情的な踊りが多くなり、引き込まれた。最も感動的だったのは、廃人のようになったセトナを愛で包むマニペ、その二人の絶望の中で踊られる「死のアダージョ」。1幕では元気な踊りを披露していた山川が、ここでは池上に引きずられるように踊る----このシーンが、最もバレエだからこそ表現することの出来る感動的なものを観客に伝えていたように思う。
 ラストの安川千晶と山本庸督によって踊られた「トウラサンペ(まりも)の精の踊り」も踊りとしてのレベルも高く良かった。(8月10日 吹田メイシアター大ホール)