ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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唐津絵理 text by Eri Karatsu 
[2004.06.10]
From Nagoya -名古屋-

愛知芸術文化センターフォーラム・イベント
「ダンス with ミュージック~インプロビゼーション・パフォーマンス~」

今月は愛知のダンス公演が少なかったので、私たちが企画した愛知芸術文化センターのパフォーマンス「フォーラム・イベント」を主催の側から紹介させていただいた。

 1992年に開館した愛知芸術文化センターは、日本で初めての複合文化施設である。普段は、2500席の大ホールでバレエやオペラ公演が開かれ、コンサートホールや300席の小ホールをはじめ、美術館、映像施設などでも様々な催しが開催されている。しかしそれ以外にも、施設間をつなぐ多数の公共スペースを利用し、10年間にわたってこういったフリースペース(フォーラムと呼んでいる)の魅力を生かしたパフォーマンスを開催してきている。このフォーラム・イベントは、通りすがりの人たちが気軽にアートに触れる機会として、これまでも好評を得てきた。


 

今回のフォーラム・イベントでは、初めてコンタクト・インプロヴィゼーションを取りあげた。コンタクト・インプロヴィゼーション(略C.I)は、文字通り、「コンタクト=接触」と「インプロヴィゼーション=即興」という2つの言葉からなり、ポストモダンダンスの流れを受けて、1970年代にアメリカのスティーヴ・パクストンを中心に始められたと言われている。現在では世界の舞踊界をリードしているウィリアム・フォーサイスもこの手法を取り入れ、新しいダンスのあり方を追求してきた。「コンタクト=接触」といっても、触れ合うものは、他者の身体だったり、床、壁、自分の身体の他の部位、空気と、その領域には限りがない。つまり人間を包むすべてのものへ自分の感覚を開き、即興で踊るダンスである。

フランクフルト・バレエ団でフォーサイスともコラボレーションを行ってきたオランダ在住のマイケル・シューマッハの来日により実現したこの公演、シューマッハのほかには、日本でC.Iを広め、日本でのC.Iのあり方を探ろうとするC.I.co.の代表:勝部ちこと伊藤真喜子がダンサーとして出演した。ダンサーたちは、50Mもの吹き抜け空間の様々な場所を舞台に、あるときは手すりの上、あるときは観客の背後、そしてあるときは階段と、フォーラム一帯を縦横無尽に走り抜け、フォーラム空間そのものやそこに集まった人々との対話を楽しんでいるようにみえた。また音楽家の若尾久美がバイオリンで、牛川紀政がDJ(音響)で公演に参加し、ダンスと音楽の即興のせめぎ合いがスリリングであった。ダンサーが走ると、若尾も負けずに走る。床に平行に横向きの姿勢で、マイケルにリフトされても、相変わらずバイオリンを演奏し続けようとする若尾のような演奏家にも初めて出会った。

自分・他者・環境など、すべてがコミュニケーションの対象あり、五感を鋭敏にすることで、瞬時に身体で反応していくことを目指したC.Iのパフォーマンスは、そこに居合わせた人々や物との対話を可能とし、「みる・みせる」といった一方通行的なプロセニアムのパフォーマンスとは全く質の異なった空間を創り出した。

なぜC.Iをはじめたのか? 公演終了後、マイケルに聞いてみた。「私は人を管理するのも、されるのも好きではないのです。だからカンパニーに所属していません。フォーサイスは、通常のカンパニーよりも、ずっと自由を重んじるけれども、それでもそこに全くの自由があるわけではない。私は全ての人間に開かれていたい。C.Iは、ダンスへの私の真実の愛のかたちなのです」。
C.Iは、観るダンスという限定された世界を越えて、世界や人々につながることのできる「ダンス」の本質を示している、私にはそう思えた。





(5月14日、愛知芸術文化センター2階フォーラム)