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アンジェラ・加瀬 text by Angela Kase 
[2011.05.10]

来日直前!BRBプリンシパル・インタビュー:ナターシャ・オートレッド

ナターシャ・オートレット
バーミンガム・ロイヤル・バレエ団プリンシパル・ダンサー
london1105b06.jpg Photo:Andrew Ross

11歳でロイヤル・バレエ・スクール(RBS)初等科、全寮制のホワイト・ロッジに入学したナターシャは厳格な校風に馴染めず、2年後バレリーナの卵としてエリートの地位を捨て、実家と子供時代のお稽古場に戻ってしまう。普通校に通いながら夜遅くまでレッスンに励む日々。15歳で出場したローザンヌ国際バレエコンクールで彼女に目を留めたのが現RBS校長ゲイリーン・ストック。運命の女神は16歳のナターシャを再びRBSに連れ戻した。しかも昔のクラスメートより1年上の最終学年に飛び級しての再入学だった。
翌年アデリーン・ジニー・コンクールで銀賞を受賞した彼女に注目したのはモニカ・メイソン。直後に16歳のナターシャをロイヤル・バレエに入団させる。7年後新境地を目指しバーミンガム・ロイヤル・バレエ団に移籍。バレエ団では主としてジェイミー・ボンドを相手役に素晴らしい舞台の数々を披露し観客に夢を与えている。11歳の時ホワイトロッジで出会った女の子(ナターシャ)と男の子(ジェイミー)は、13年後運命の再会を果たし、互いになくてはならない舞台のパートナーになったのである。

1983年7月19日生まれ。イギリス東ヨークシャー ノース・ケイヴ出身。血液型A型。 1998年ローザンヌ国際バレエコンクール、セミ・ファイナリスト。2000年アデリーン・ジニー・コンクール銀メダル。2000年4月16歳でロイヤル・バレエ団に入団。2007年秋 バーミンガム・ロイヤル・バレエ団に移籍。09年秋よりプリンシパル。

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「母によると私は小さな頃から人目につく場所に行くたびに踊っていたのだそうです。それならバレエを習ってはどうか、ということになり3歳半で地元のスケルトン・フーパー・スクール・オヴ・ダンスに通い始めました。」

スケルトン・フーパーといえば才能のあるティーンを数多く輩出することで有名なイギリス北部のダンス・スクール。子供時代のマイケル・オヘア(元BRBプリンシパル、現バレエ・マスター)とケヴィン・オヘア(元BRBプリンシパルで長らく吉田都の相手役をつとめた。現RB総務ディレクター)、BRBのジョゼフ・ケイリー、RBからマリインスキー・バレエに入団したザンダー・パリッシュ、RBのエリザベス・ハロッドなど綺羅星のようなダンサーたちがここから世界の檜舞台に羽ばたいている。
ちなみにヨークシャーは古くからバレエ・ダンサーの宝庫で、デイヴィッド・ビントレーを初め、BRBのプリンシパル、ロバート・パーカーや、元RBプリンシパルのデボラ・ブルもこの地方の出身。
オートレッド家は11世紀からヨークシャーのノース・ケイヴに居を構える由緒ある家系で、ガーター勲章を有し、18世紀の英海軍士官、探検家でオーストラリアやハワイ諸島を発見したキャプテン・クックも一族の出身だという。

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「バレエは大好きでしたが、11歳でホワイト・ロッジに入学した後、子供たちの個性を認めず、型にはめようとする当時の学校の厳格な雰囲気に馴染めませんでした。2年生になってからは、担任の先生ともそりがあわず「ここは自分の居場所ではない」と自主退学してヨークシャーに戻り、普通校に通いながら夜スケルトン・フーパーでお稽古したり、週2回は別の先生の個人レッスンを受けました。人前で古典バレエのヴァリエーションを踊ったのはローザンヌ・コンクールに出た15歳の時(『眠れる森の美女』よりオーロラ姫のヴァリエーション)が初めてでした。ローザンヌにはRBS校長に就任したばかりのゲイリーン・ストック先生が来ておられアッパー・スクール(高等科)への復学を勧められました。ストック新校長の影響でRBSは昔の厳格な校風から、明るくフレンドリーな学校に変わっていて驚きました。アデリーン・ジニー・コンクール出場にあたっては、校長直々の指導を受けましたが、先生と生徒というよりまるで友だちのように何もかも話せる間柄は、昔の校風を知る私には夢のようでした。
数年前バレエ団のジェイミー・ボンドやRBのローレン・カスバートソン、セルゲイ・ポルーニンと一緒に学校を訪ねて模範演技を見せたことがありました。演技の後、子供たちが私たちを憧れの眼差しで見つめ、いろいろ質問してきたのにも感動しました。私が子供の頃のRBSでは授業中はとにかく<大人しく先生の言うことをきくよう>に言われていて、子供たちが自分の意見を言えるような雰囲気はなかったんです。」

アデリーン・ジニー・コンクールを観ていたモニカ・メイソンの勧めで2000年4月にRB入団を勧められる。16歳でプロになって以来RBとは『くるみ割り人形』のクララを踊ったり、『田園の出来事』では準主役のヴェラを踊りシルヴィ・ギエムと共演、『マイヤリング うたかたの恋』ではプリンセス・ステファニーを踊る。24歳で新天地を求めBRBに移籍した。

日本公演で共演するバレエ団のプリンシパル、ジェイミー・ボンドについて教えてください。

「物語バレエを主演する場合、私も彼も<役作り>を最重要課題としています。舞台の出来、不出来や自分に対してとても厳しいところなど性格的にも似た者同士なんです。ジェイミーは感情表現やパートナーリングに優れたダンサーですから、共演すれば彼の目を見るだけで物語の世界に引き込まれ、演技力に触発されます。それが私達の舞台を特別な物にしているようです。」

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2人が日本で踊る『ダフニスとクロエ』は、オートレッドがBRBに移籍して初めて主演した作品。アシュトン作品はRB時代から踊りこんでいるので独特なダンス・スタイルも体にしみこんでいると語る。
団員数の多いRBではプリンシパルですら主役を充分な回数踊っているとは言いがたい。BRBに移籍すれば主演のチャンスこそ増えるが、今度は数多い主演回数をこなすだけのスタミナ作りが大切になる。また英国内ツアーが中心のバレエ団だけに、公演先の劇場の舞台サイズに合わせて踊ることや相手役が怪我をした場合、即座に別の相手と組んで踊る器用さなどが重要視される。

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RB時代に比べ全幕作品主演のチャンスが増えましたが、どのように対応していますか。また新しい全幕バレエを主演する場合、どのような準備をしているのでしょうか

「全幕作品を習う場合、まずはスタミナ作りを含む健康管理を徹底します。そうすることが、怪我の予防や公演期間を乗りきる肉体的・精神的な強さに繋がるからです。古典作品の場合、マリオン・テイト(BRB元プリンシパル、現バレエ・ミストレス)がリハーサルに立会い、振付指導と作品を上手に踊るための様々なアドバイスをしてくれます。その後は私自身が作品に自分の解釈を付け加え、役やバレエを自分の物にしていく番です。このプロセスでは自分の直感に従うこともあれば、音楽や他の踊り手からヒントを得ることもあります。時にはわが家のキッチンで夜1人ソロを踊って舞台前の仕上げをすることもあるのよ。」

日本ではどんなことをしてみたいですか。

「日本にはRBS時代に1度、その後それぞれのバレエ団とツアーに行って、今年が4度目。お買い物が大好きなので、空っぽのスーツケースを持って行きます。」

●好きなバレエ作品について教えてください。
マクミラン版『ロミオとジュリエット』
ビントレー作品では『ダンス・ハウス』

●将来、どんな役を踊りたいですか。
『ジゼル』。狂乱の場など 演ずることが好きなタイプのバレリーナには魅力的な役よね。
また、いつか自分のために振付けられた作品を踊るのが夢です。

●趣味
ガーデニング。今の家に住み始めて3年目なので、やっと好みの庭になってきたところです。今週末(4月最終週)は、トマトの苗を植える予定。種から大切にケアして、やっと植え頃になったところ。先週はバレエ団と国内ツアーに行っていたのでトマトの苗たちも車につんで連れて行っていたのよ。

●心に残る本 
セバスチャン・フォークスの『バードソング』(BBCによる03年の調査で「イギリス人が最も愛する本200冊」の13位に選ばれたベスト・セラー)
1日で読破。読んでいる間、本から目を離したのは、感動であふれた涙をふいている時だけでした。

●心に残る映画
『英国王のスピーチ』。見終った時には思わず映画館の中で席から立ち上がって拍手をしてしまったぐらい感動した映画。主演のコリン・ファースは、私が大いに尊敬しているイギリス人俳優です。

●好きな音楽 お気に入りのCD
Adele のニュー・シングル「Rolling in the Deep 」

●ロンドンでお気に入りの場所
夏の夕暮れにハイド・パークで1人折りたたみのイスに腰掛け静かな時間を過ごすのが大好き。

●バーミンガムでお気に入りの場所
バーミンガム・インドア・マーケット。お料理好きな私が食材を買いに行く場所です。普通の物から珍しい食材まで何でもあるの。何と最近、お刺身として使えるほど新鮮な赤身のマグロを売っているお店を発見! 頑張っている自分へのご褒美としてよく買って週末に食べているのよ。

●故郷のヨークシャーでお気に入りの場所
サンズエンド・ビーチ。子供の頃、両親が良く連れて行ってくれた場所。土地柄、夏でも寒かったり、雨が降ったりするけれど、素敵な想い出の場所です。

●世界の料理でお気に入り
日本料理。お寿司やお刺身、お味噌汁など

●好きなファッション
ビンテージ・ファッションが大好きで、ウェディング・ドレスも今から100年も昔に作られた物を着ました。服を通じて古きよき時代にタイムスリップするのが大好きなので。

●お気に入りの香水
アクア・ディ・パルマ

●モットー
人生を謳歌し、愛し、笑うこと Live,love & Laugh

※それぞれの詳細・撮影クレジットは、画像をクリックし拡大写真にてご覧ください。