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アンジェラ・加瀬 text by Angela Kase 
[2011.03.10]

来日公演直前!BRBプリンシパル インタビュー 佐久間 奈緒&イアン・マッケイ

佐久間 奈緒 / イアン・マッケイ
london1103b04.jpg 『リーズの結婚』撮影/Angela Kase

バーミンガム・ロイヤル・バレエ(BRB)は、2月18日〜20日まで香港でビントレー振付『ホブソンの選択』を5公演。帰国直後からバーミンガムで公演する『リーズの結婚』のリハーサルを行っていた。
3月2日の初日をつとめるのは佐久間奈緒とイアン・マッケイ。
2月25日、バレエ・ミストレスのマリオン・テイトの指導の元、同バレエのスタジオ・リハーサルを行う佐久間とマッケイをバレエ団の本拠地、バーミンガム・ヒポドローム劇場に訪ね、撮影・インタビューを行った。

<佐久間 奈緒> 
1976年2月6日生まれ  福岡出身  身長162cm 血液型O型
98年ジャクソン・バレエ・コンクール 審査員特別賞受賞

「バレエは5歳から始めました。イギリスに来たのはローザンヌ・コンクールのご縁です。(93年のコンクールで)セミ・ファイナリストでしたが、カナダ国立バレエ学校校長のメイヴィス・ステインズ先生に気に入って頂き「カナダに留学しませんか?」とお誘いを受けました。ただ当時私が師事していた小森先生はマーゴ・フォンティーンやロイヤル・バレエがお好きで、私をロイヤル・バレエ・スクール(RBS)に留学させたいと考えていました。そうお話ししますとRBSの関係者にご紹介下さり、コンクール翌日に急にロンドンにRBSのオーディションを受けに行くことになりました。そしてその場でオーディションに合格し、秋からの留学が決まりました。」

「RBSには95年まで2年留学しました。1年目の学校公演ではブルノンヴィルの『ナポリ』とマクミランの『コンチェルト』の第3ムーブメント、卒業公演ではアシュトンの『2羽の鳩』のジプシー・ガールを踊りました。
ツァオ・チーとは学校時代から同期で卒業公演でも一緒に踊っています。当時の彼は中国人の男子生徒以外とは会話もせず、笑顔も見せないとてもシャイな男の子でした。
ロイヤル・バレエで活躍するラウラ・モレーラやベネット・ガートサイトも95年に卒業した同期生なんですよ。卒業の年の春は殆どBRBで公演のお手伝いをしていて雰囲気の良いBRBに入れたらいいなぁ、と思っていましたので(バレエ団の団員になる)コントラクト(契約書)を頂けた時は本当に嬉しかったです。」

london1103b01.jpg (C)Peter Teigen

今年の日本公演では「眠れる森の美女」と「真夏の夜の夢」を主演されますね。
「『眠れる森の美女』を踊る場合、ローズ・アダージオのバランスですとか、どうしても技術的な面が気になってしまうものですが、ピーター・ライトさんからは「ローズ・アダージオの部分は、(技術に気をとられるのではなく)オーロラ姫が自分の誕生日に、4人の王子たちから求婚され高揚する気持ちを始めから終わりまで表現すべきだ。」と、技より感情表現を重視するよう指導されました。

『真夏の夜の夢』は、1年半ほど前に、この作品の主役オべロンとタイターニアを世界初演された、アントニー・ダウエルさんとアントワネット・シブレーさんから直々にご指導を受けました。お2人からオベロンとタイターニアのやり取りですとか、シブレーさんからはタイターニアのちょっとした仕草や目線使いなど見せて頂きました。2人の持つスター・オーラの大きさ、シブレーさんが見せてくださる仕草の色っぽさに思わず見入ってしまいました。ダウエル、シブレーといえばフォンティーン、ヌレエフの次の世代のイギリス・バレエを代表するパートナー同士で、世界的な存在ですが、お2人ともとても気さくでおごらない方たちなのにも感動しました。」

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今回の日本公演で主役を踊るバレエ団の男性プリンシパル、ツァオ・チー、イアン・マッケイ、セザール・モラーレスについて教えて頂けますか。
「ツァオ・チーと私は音楽に対する感性が同じなんです。どんなに優れた技術を持つ相手でも音感が違うと良いパートナーシップは築けません。そういう意味で、チーと踊るのは大変心地が良いですし、一番<息の合うパートナー>ですね。また回りにもそれが分かるんでしょうね。これまでたくさんの作品に抜擢され一緒に踊ってきました。
イアン・マッケイとは『火の鳥』『シラノ』『リーズの結婚』などで共演しています。パートナー技術に優れ、人間的にも思いやりがあってとても優しいので、相手役に対する配慮が素晴らしく、どこまでも助けてくれようとするんです。ですから一緒に踊っていて時々「どうしてこんなに踊りやすいんだろう」と感じることがあるんですよ。
セザールとは最近『海賊』と『ドン・キホーテ』のパ・ド・ドゥを踊りました。大人しく優しい性格のダンサーです。」

ビントレーさんとバレエ団について教えてください。
「デイヴィッドは初対面の人にはシャイなのですが、本当はとても暖かく優しい方です。またイギリス的なユーモアのセンスの持ち主で、今年の<音楽とバレエの夕べ>(昨年3月号参照)はデイヴィッドが司会を勤め、お客様を何度も大爆笑させていました。彼のユーモアのセンスは作品にも反映されていると思います。バレエ団は、皆本当に仲良しで、新人の子が初役をつとめることになると皆が(激励の)カードを送ったり、舞台袖から応援したりするんですよ。」

london1103b12.jpg 撮影/Angela Kase london1103b13.jpg 撮影/Angela Kase

チャコット製品についてはどのような思い入れがありますか。またお気に入りのチャコット製品などあれば教えてください。
「日本時代はレオタード、タイツ、トゥパッド、トゥシューズなど、皆チャコットでした。今もレオタードやニットウェアなどを愛用しています。今日のリハーサルで着ていたレオタードは、東京のチャコットで働いている福岡時代の友達が、日本公演を観に来てくれた時にプレゼントしてくれた物なんです。また私は他のダンサーに比べてウォームアップの時になかなか身体が温まらないタイプのようで、そのため(団員)クラスの時にチャコットのニットウェアを着ているんです。胸の上までの黒のオールインワンの定番ニットで、身体のラインを見せながらダンサーの身体を温めてくれるので、古くなると新しい物を買いながら、もう20年以上も愛用しているんですよ。」

london1103b08.jpg 『白鳥の湖』Photo:Bill Cooper

好きなバレエ・好きな役柄
「古典であれば『白鳥の湖』、ビントレー作品であれば『シラノ』のロクサーヌです。ロクサーヌは踊り終える度に深い充実感を感じる役です。」

心に残る映画
「5年ほど前、私にしては珍しく腰を悪くして家で休んでいた時(バレエ団の女性プリンシパルの)アンブラ・ヴァッロに薦められて、DVDを借りて家で見たのが『ノートブック』というアメリカ映画でした。私の場合、人から薦められた物に対しては「引いてしまう」傾向があるのですが、この映画には怪我のことも忘れて号泣してしまったんですよ。あとツァオ・チーと親しいから言うのではありませんが、最近観た映画では『小さな村の小さなダンサー』にとても感動しました。」

好きな音楽
「最近までバレエ団にいた厚地康雄くんの影響で、EXILEをよく聞いています。」
世界の都市でお気に入りは。
「ローマ」
コーヒー党ですか、紅茶派ですか。
「コーヒー」
好きなファッション
「帽子が好きでよくかぶります。家に5つほどお気に入りの帽子があります」
好きな香水
「ジョー・マローン 以前はディオールのアディクト2をつけていました。」

london1103b09.jpg 撮影/Angela Kase london1103b10.jpg 撮影/Angela Kase london1103b11.jpg 撮影/Angela Kase

 

3年前の日本公演では吉田都と『コッペリア』を、今年5月の日本公演にはタマラ・ロホと『眠れる森の美女』を踊るイアン・マッケイ。20代初めでプリンシパルに上りつめ、2度の日本公演の間にスペインのコレーラ・バレエ団に移籍。2年間スペインで活躍した後、昨年1月にBRBに復帰した彼にこれまでのキャリアと、日本公演の抱負について語ってもらった。

<イアン・マッケイ> 
1980年7月28日生まれ スコットランド グラスゴー出身 身長183cm 体重75kg
99年ロイヤル・バレエ・スクール卒 同年BRBに入団 03年よりプリンシパル
08年〜2010年 アンヘル・コレーラ・バレエ団 プリンシパル

london1103b02.jpg (C)Peter Teigen

「バレエを始めたのは7歳の時でした。2歳年上の兄のロリー(BRBファースト・ソリスト)が、テレビ番組の『フェイム』(映画の『フェイム』の元になった番組)に夢中になってしまってバレエの稽古を始めたのですが、男子は兄1人ということで、僕も一緒に習うことになりました。その後、兄も僕もロンドンのロイヤル・バレエ・スクール(RBS)のホワイトロッジ(1〜15歳までの生徒が学ぶ全寮制の初等課)への入学を許可されましたが、グラスゴーからロンドンは遠すぎるということで、15歳までは地元のダンス・スクールでバレエ、ジャズ、タップと一般教科を勉強し、16歳でロンドンに移ってRBSのアッパー・スクール(高等科)で2年学びました。」

「RBSの同期にはアリーナ・コジョカルとルーパート・ペネファーザーが、1学年上にはマリアネラ・ヌニェズはがいました。当時は学校もバレエ団のリハーサル・スタジオも(ロンドン西部の)バロンズ・コートにあって、学生たちがバレエ団のリハーサルを垣間見たり、食堂や廊下で有名ダンサーとすれ違うチャンスもたくさんありました。当時の僕はプリンシパルのジョナサン・コープにとても憧れていました。彼を見かけたり、すれ違うたびに「なんて素敵な男性なんだろう」と感じたものです。2年生の時にはバレエ団にカルロス・アコスタが移籍してきました。驚異的なダンス・テクニックを持つ舞踊神のようなカルロスにも、またひどく憧れたものです。」

「99年の卒業公演では『ジゼル』のアルブレヒトを踊りました。ダブル・キャストでルーパート・ペネファーザーと日替わりで主役をつとめました。僕の相手役は日本人の女子留学生だったんですよ。そして、その後ルーパートはロイヤル・バレエに、僕はBRBに入団したというわけです。BRBで仕事をする醍醐味はピーター・ライト版の優れた古典作品と、ビントレーのオリジナル・バレエ、そして様々なネオクラシックや現代作品を踊れることです。自分に合ったこのバレエ団入団することができてとても幸せでした。」

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08年にスペインのコレーラ・バレエに移籍されたのは、どのような経緯からなのでしょうか?
「入団から10年近くBRBで踊り、ダンサーとし新しい環境で、これまで挑戦したことのない作品や役柄に取り組みたい、と思ったからです。そんな時アンヘル・コレーラが「スペインに新しいバレエ団を設立する予定で、お姉さんのカルメンのパートナーをつとめる長身の男性ダンサーを探している」という話を耳にし、履歴書を送りました。ある晩僕がのんびりお風呂につかりながら疲れた筋肉をほぐしていると、電話が鳴り、出てみるとアンヘルからでした。「是非入団してほしい。旗揚げ公演はマカロヴァ版『ラ・バヤデール』で、君にはカルメンの相手役としてソロルを踊ってもらいたい」と言われました。『ラ・バヤデール』はBRBの演目にはない古典の大作です。マカロヴァから直接ご指導を受けてデビューできるなんてこのチャンスを逃がしてはいけないと、入団の決意を固めました。
僕のコレーラ・バレエへの移籍は、これまでスペイン人である僕の妻(当時バレエ団のソリストだったシルヴィア・ヒメネス)が、バレエを辞めてスペインに落ち着きたがっていたからだ、と言われてきましたが、当時の彼女は引退するつもりはなく、外国暮らしに馴染んでいてスペインに戻りたいと願ってはいませんでした。僕のために古巣のRBRを辞めてついてきてくれたのです。アンヘルは世界的な踊り手で、また人間も素晴らしく、そんな彼と一緒に2年仕事ができたのは僕にとってかけがいのない経験で、踊り手として人間として大いに成長できたと思っています。設立直後のバレエ団にはアンヘル以外にも素晴らしい男性ダンサーがたくさん在籍していました。旗揚げ公演でエルマン・コルネホが踊ったソロルも大変見ごたえのある素晴らしい物でした。」

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コレーラ・バレエ時代のイメージ写真

09年の秋にはゲストとしてBRBに戻り「シラノ」のタイトル・ロールと準主役のクリスチャンを踊られましたね。(10年1月号参照)その数ヵ月後にBRBに復帰された理由について教えてください。
「当時のコレーラ・バレエは充分なスポンサーを得られず、公演数も少なかったのです。僕がバレエ学校を卒業したばかりの若手であれば楽しんで仕事を続けられたかもしれませんが、BRBのプリンシパルとして様々な作品を踊り、30歳になろうとしていた僕がアーティストとして円熟できる環境ではありませんでした。僕はシュツットガルトやオランダ国立などヨーロッパの大バレエ団への移籍を考えるようになり、ある日デイヴィッド(ビントレー)に電話で、そんな心境を打ち明けたんです。するとデイヴィッドが、他に行かなくてもBRBに戻って来たらいいじゃないか、と言ってくれたのでした。」

マッケイさんというと踊り手としての魅力と共に、素晴らしいパートナー技術の持ち主として有名ですが、どのような努力をすればマッケイさんのような優れたパートナーになれるのでしょうか。
「RBS時代の僕の先生の1人、ジェイ・ジョリー(アメリカ人で元RBプリンシパル)は現役時代たいへん優れたパートナーとして知られていました。僕はRBSに入学した時、既にとても背が高かったので、先生たちから背が高いということは、プロになってからバレエ団で一番大きなバレリーナと組まされるということだ。パートナー技術をしっかり身につけないとプロとしてやっていけないぞ、と言われ、学生時代からパ・ド・ドゥ・クラスを随分と頑張ったんです。BRB入団後もデズモンド・ケリーのような素晴らしいコーチのご指導を受け、良いパートナーになる為のコツを教えて頂きました。
優れたパートナーになるためには、学校やバレエ団で指導者から教えてもらう技術を学び、練習してしっかり身につける事、また相手役の女性が「舞台で何を求めているのか」「僕の助けでどこまで良く踊れるのか」を、瞬時に感じ取り、見極められる感性の持ち主である事の2つが大切なのではないでしょうか。」

london1103b16.jpg 撮影/Angela Kase

来日公演では『眠れる森の美女』と『ダフニスとクロエ』を踊られますね。
「それぞれ素晴らしい作品です。ライト版の『眠れる森の美女』は2幕の後半のオーロラと王子のパ・ド・ドゥが特徴的で、僕がこれまで見た中で最も美しく、かつロマンティックな作品です。『ダフニスとクロエ』と共に日本のバレエ・ファンの皆さんに是非観て頂きたいバレエです。」

好きなバレエ・好きな役柄
「ビントレー作品では「遥か狂乱の群れを離れて」(『風とともに去りぬ』を彷彿とさせるトマス・ハーディーの小説のバレエ化)の(軍人)トロイ役、そして最新作「シンデレラ」の王子役」

趣味
「7歳の時からゴルフを始めてハンディキャップは12。」
心に残る本
「『千の輝く太陽』カーレド・ホッセイニ作。アフガニスタンを舞台に悲しい境遇の元に生まれた1人の女性が、運命に翻弄されながら生きる物語です。だいぶ昔に読んだのですが、今回この質問を頂いて真っ先に頭に浮かびました。」
心に残る映画
「『ワンス・イン・アポンナ・タイム・イン・アメリカ』。初めて観たのは17歳の時。若き日のデ・ニーロ、美しい映像と音楽。今も週に一度は観てしまう僕にとって永遠の名画です。」
好きな音楽 1枚のCD
「『Counting Crows の August and Everything After』。妻と初めてデートした頃よく流れていた曲。今もよく聞きます。」
世界の都市でお気に入りは?
「スペインのマヨルカ。スペインは乾燥した北部を除いて大好き。」
故郷のグラスゴーでお気に入りの場所は?
「ボタニカル・ガーデン(植物園)」
ロンドンでお気に入りのエリアは?
「コベントガーデン」
好きな飲み物、食べ物
「日本料理 お寿司や鉄板焼き。
ビールにはすごくこだわりがあってドイツ・ビールかアサヒ・スーパー・ドライが好き。」
好みのアフターシェイブ
「マーク・ジェイコブス」
モットー
「美しい花 と 美しい音楽、優しい人々に囲まれて生きる人生」

london1103b14.jpg 撮影/Angela Kase london1103b15.jpg 撮影/Angela Kase london1103b17.jpg 撮影/Angela Kase