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アンジェラ・加瀬 text by Angela Kase 
[2010.11.10]

高田茜がオリガ役デビューを果たしたクランコの『オネーギン』

The Royal Ballet 英国ロイヤル・バレエ団
Onegin by Jhon Cranko
ジョン・クランコ振付『オネーギン』
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9月30日、英国ロイヤル・バレエ団の2010-11バレエ・シーズンがその幕を開けた。
開幕作品はジョン・クランコ振付『オネーギン』全幕である。
プーシキンの韻文小説を原作に、クランコが1965年当時、自らが率いていたシュツットガルト・バレエ団に振付けたこのドラマティック・バレエの傑作は、その後、カナダ国立バレエ、ベルリン国立バレエ、ABT、英国ロイヤル・バレエ、最近ではパリ・オペラ座バレエやデンマーク王立バレエ、ウィーン国立バレエ、ミラノ・スカラ座バレエでも上演されるなど全世界的な人気を博している。
日本ではシュツットガルト・バレエ団の来日公演で何度か上演され、バレエ・ファンにお馴染みの作品。
 
若くして自らの人生と社交界での日々に退屈したオネーギンは、しばし田舎の領地を訪れる。そこで出会ったのは田舎貴族の娘、タチアナ。オネーギンに魅せられたタチアナは、切々と恋文をしたため送るが、彼女の初恋は無残にも踏みにじられたばかりか、妹オリガもまた、オネーギンとの決闘で婚約者であったレンスキーを失う。
決闘後の苦しみと憂いから逃れるべく数年間放浪の旅を重ねたオネーギンが、久しぶりに帝都ペテルブルグに戻り、グレミン公爵の館の舞踏会に招かれ、そこで再開したのは、輝くばかりの美しさと洗練された優雅な身のこなしの貴婦人となったタチアナだった。
彼女に焦がれ熱い恋情を手紙に綴ったオネーギンだったが、グレミン公爵の妻となったタチアナに受け入れられることはなく絶望のうちに館を去る、というストーリー。

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バレエの見どころは、オネーギンを踊る男性主役の演技力とカリスマ性、難解なパ・ド・ドゥで女性主役をリードするパートナー技術、女性主役タチアナの1幕(田舎貴族の娘)と3幕(グレミン公爵夫人)の演じ分け、1幕のオネーギン憂愁のソロ、レンスキーのソロ、オリガとレンスキーのデュエット、2幕の決闘、1幕(夢の場面)と3幕のオネーギンとタチアナのパ・ド・ドゥと、ドラマティック・バレエの大作だけに見逃せない場面が盛りだくさんだ。

全4キャストの舞台を鑑賞した。
シーズン初日はオネーギンにヨハン・コボー、タチアナをアリーナ・コジョカル、レンスキーをスティーブン・マックレー、オリガを高田茜が踊った。
この作品に定評のあるコボー、コジョカルというバレエ団のスター・カップルと、高田とマックレーという次代のスターの準主役デビューという、ファンが心待ちにしていたパフォーマンスであった。

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コボーは、登場から入魂の演舞で、自らのソロ、タチアナ役のコジョカルとのパートナーシップなど見事としか言いようがなかった。
高田も豊かな音楽性と空間使いの大きさで、入団2年目にしてシーズン初日にオリガ・デビューするという大抜擢に応えてみせた。
マックレーはレンスキー・デビューにプレッシャーがあったのだろうか?
登場場面は良かったのだが、ラーリナ家の舞踏会、2幕の決闘の場面と、幕を追うごとに過剰な演技が目立ち、オネーギンとは対照的な登場人物であるはずのレンスキーのロマンティシズムや詩人らしい繊細さが見られず、決闘の前後の場面ではレンスキー個人の怒りの感情だけが噴出し、オネーギンとの友情やオリガに対する愛が見えなかった。

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コジョカルはタチアナを好演したが、このバレエにオリガ役としてデビューし、イーサン・シュティーフェルとスーパー・パフォーマンスを見せた若き日のことが懐かしく思い出された。
手術をしたという首の後ろにはうっすらと赤い傷跡が見え隠れするが、その後のリハビリの一環として取り入れているというウェイト・トレーニングの効果から、スリムながらも首や二の腕を充分強化した様子がうかがえた。

ファースト・キャストの最大の魅力は、コジョカル・コボーのパートナーシップの妙技を堪能できることだが、全体的に見るとコボーによるオネーギンが、コジョカルのタチアナの存在感を上回り、コボーによる一人舞台の感が強かった。
(2010年9月30日 ロイヤル・オペラ・ハウス 29日ドレスリハーサルを撮影)

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撮影:Angela Kase
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