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守屋光嗣 text by Koji Moriya 
[2005.09.10]

●「ダンス・アンブレラ2005」が開幕する

 ロンドンのダンスシーンを彩る「ダンス・アンブレラ2005」がまもなく開幕する。 今年で27回目を数え、9月22日から11月8日までの間、25のカンパニー、グループが参加し公演数は60回を越える。

今年の特徴は、タイトルに「フランス・ムーヴス」と掲げられているように、フランスからのカンパニー、グループがイギリス初演や、世界初演の作品の上演を予定していること。 シルヴィ・ギエムとラッセル・マリファントによるコラボレイション(9月30日、10月1日、2日、3日:サドラーズ・ウェルズ(SW)劇場)、 ジョゼフ・ナッジ(10月4日から8日:グリニッチ・ダンス・エージェンシー)、リヨン・オペラ・バレエ(10月6日、7日:SW)、ラシド・オラムダン(10月8日、9日:リリアン・ベイリス劇場)、 パリ・オペラ・バレエ(10月14日から16日:SW)、エルマン・ディプス(10月22日、24日:ザ・プレイス・シアター)、マギ・マリン(10月22日と23日:クィーン・エリザベス・ホール)など。

これらの中で一般に人気・注目が高いと思われるのが、ギエムとマリファントの共演、リヨン・オペラ・バレエ、そしてパリ・オペラ座バレエの『ル・パルク』だろう。

ラッセル・マリファント

2003年12月、ロイヤル・オペラ・ハウスでの初演の衝撃以来、ヨーロッパ各地や日本で熱狂を持って迎え入れられた、 シルヴィ・ギエムとバレエ・ボーイズの二人(ウィリアム・トレヴィットとマイケル・ナン)のために、マリファントが創作した「Broken Fall」。その後、ギエムはインタヴューのたびに、更なるマリファントとのコラボレイションをと言い続けてきた。漸く実現したこのプログラムは3つの作品から構成される予定。 マリファントの代表ソロ、ギエムのソロ(世界初演)、そして二人の共演(世界初演)というもの。今度はどんな衝撃が待ち受けているのか。
数週間前に紹介されたマリファントの言葉が興味深い。「僕はシルヴィのようには踊ることは出来ない。でも、僕は(二人の間の)違いを活かす事ができる」。 どのような化学反応が二人の間に生まれているのか興味が尽きない。


『ル・パルク』

 リヨン・オペラ・バレエは、イギリス初演となるフィリップ・ドゥクフレ作の『トリコデックス』を上演。 このバレエ・カンパニーは未見なので、得意とするプログラムや特徴についてはわからないが、作品の紹介に想像力が刺激されている。 舞台にはイソギンチャクから、無数のなぞめいた動物や想像上の植物、空飛ぶ機械や迷路が現れる。 その中を28人のダンサー(中には踊るサイクリストも居るそう)が重力を感じさせないような踊りを繰り広げるとか。


 
『トリコデックス』

そして、今年初めのある新聞の文化面で、「パリ・オペラ座バレエ(POB)がサドラーズに」と報道されて以来、イギリスのバレエファンが首を長くして待っていたであろう、 プレルジョカージュ振付の『ル・パルク』。2、3年前に、POBはサルフォードでヌレエフ版の『ラ・バヤデール』を上演した。 が、ロンドンでは、ここ数年では、2000年の冬にアニエス・ルテステュとジョゼ・マルティネスによるイングリッシュ・ナショナル・バレエの『くるみ割り人形』への客演、 2003年のロイヤル・バレエでの「ヌレエフ追悼」プログラム他でローラン・イレールがギエムと踊った以外に、POBのダンサーを観る機会はなかったと記憶している。 今回のロンドンでの公演は実に28年ぶりとのこと。更に演目が、古典ではなく現代の振付家の中でも常にバレエファンを刺激しているプレルジョカージュとなれば、期待が高まらないはずがない。

ロイヤル・バレエファンの方は覚えているかもしれないが、ロイヤル・バレエはこの『ル・パルク』を、ストレットン前芸術監督の2期目の春に上演する予定だった。 が、監督交替のあおりであえなくキャンセル。とても残念だった半面、やっぱりオペラ座バレエで観て見たいもの、と思っていたので、個人的にも非常に楽しみです。

「フランス・ムーヴス」を監修しているYorgos Loukosによると、フランスとひとくくりにしてあってもダンサーや振付家のバックグラウンドは多岐に渡っているので、 マルティ・カルチャルのコンテンポラリー・ダンスを観ることが出来るだろう、とのこと。


フォーサイス・カンパニー『N.N.N.N.』
 

フォーサイス・カンパニー『Of Any If And』

注目は、フランスばかりではない。今回のシリーズの幕開けはフォーサイス・カンパニー(9月20日から24日:SW)のイギリス初演作品。 マーク・モリス・ダンス・グループは、グループの25周年を記念してプログラムを二つ用意している(10月18日から22日:SW)。 また、ダンスが披露される場所として面白そうなのが、ローズマリ-・ブッチャーが選んだ「テイト・モダン」のタービン・ホール(10月24日と25日)。 ホールの巨大な空間を目いっぱい使った特別展示で常に大人気のテイト・モダンで、どんなパフォーマンスが繰り広げられるのか。 更に、すべてではないが、公演によっては、ダンサーやディレクターとのトークが設定されている。

サドラーズ・ウェルズ劇場を中心に、ロンドン各所で夜毎繰り広げられる刺激に満ちたパフォーマンスに、モダン、コンテンポラリーのダンスファンは暗い秋を嘆いている暇などないでしょう。