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船引怜美 Text by Remi Funabiki 
[2005.03.10]

●イギリス人ダンサー不足? 心配されるイギリス・バレエの将来

●イギリス人ダンサー不足? 心配されるイギリス・バレエの将来

ここ最近のロイヤル・バレエの公演を観ていて、プリンシパル・ダンサーの活躍のみならずカンパニー全体に満ち溢れるエネルギー、 コール・ド・バレエ一人一人に至るまでの技術的・芸術的レベルの高さと統一感は、目を見張るものがあります。そのカンパニーとしての安定感と勢いはチケット売り上げにも見られるように思います。 『シンデレラ』、『白鳥の湖』、『マノン』と連日ほぼ完売という事実は、人気の高さを示しているのでしょう。 2月7日付のテレグラフ紙では、オペラ評論家のルパート・クリスチャンセンがRB芸術監督モニカ・メイスンの指揮・指導とカンパニーとしての大活躍を 「オペラの発展もバレエに見習うべき」とコラムで大絶賛していました。

しかし2月3日付タイムズ紙と2月10日付ガーディアン紙にはイギリス・バレエの将来が心配される衝撃的な統計結果がロイヤル・アカデミー・オヴ・ダンス(RAD)からレポートされ、 イギリス・バレエの若い世代の育成における変革に焦点が当てられています。RADの報告によると、毎年約30000人以上の子供がRADのトレーニングを始めているのに対して、 10/11歳の時点でその約67%がトレーニングを止めてしまっているといわれています。

このレポートに際しRAD会長、元ロイヤル・バレエプリンシパルのアントワネット・シブレーが、現在のイギリス・バレエにおけるイギリス人ダンサー不足を指摘しています。 その事実はイギリス3大カンパニーのイギリス人プリンシパルの数に表れています。ロイヤル・バレエ:16人中イギリス人はたった2人- ダーシー・バッセルとジョナサン・コープ。イングリッシュ・ナショナル・バレエ:12人中2人、バーミンガム・ロイヤル・バレエ:13人中3人。 その数は1986年時ロイヤル・バレエのプリンシパル21人中16人がイギリス人だったことと比べると、事の重大さが明らかになってきます。 20年前に限らず、アダム・クーパーやバレエ・ボーイズ、サラ・ウィルドーらが在籍していた約10年前と比べても、現在のロイヤル・バレエを代表するダンサーが国際色豊かなことは明らかでしょう。

今回イギリスバレエの将来を担う若手ダンサーの育成の一環として、新しいコンペティション「フォンティーン・ヌレエフ・ヤング・ダンサーズ・コンペティション」がRADによって発足されました。 10歳から13歳の若いイギリス人ダンサー(イギリスでRADの教育を受けている生徒)を対象に、彼らにより多くの舞台のチャンスを与え、さらに彼らを刺激することが目的とされています。 既に注目されている15歳から17歳を対象にしたコンペティション、「ヤング・ブリティッシュ・ダンサー・オヴ・ザ・イヤー(ロイヤル・バレエ・スクール校長ゲイリーン・ストック監修)」と共に今後のイギリスバレエ発展への大きな影響力が大いに期待されています。

イギリス人ダンサー不足が問題となっている現在のロイヤル・バレエですが、プリンシパルとして在籍していたイナキ・ウルレザーガの退団とジェイミン・タッパーの産休によるキャスト変更が、 今後の活躍が注目されるイギリス人ダンサーに更なる飛躍のチャンスをもたらしています。 2001年ヤング・ブリティッシュ・ダンサー・オヴ・ザ・イヤー受賞者でソリストのローレン・カスバートソンはデビット・ビントリーの『Thombeaux』、 ファーストソリストのエドワード・ワトソンはアシュトンの『オンディーヌ』、マーティン・ハーヴェイはニジンスカの『牝鹿』、とそれぞれの主演に抜擢されています。