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船引怜美 Text by Remi Funabiki 
[2004.12.10]

●ロイヤル・バレエのシーズン開幕
  アシュトン100 セレブレーション:『レクイエム』ミックス・プログラム

フレデリック・アシュトン生誕100年を祝う「アシュトン100セレブレーション」を主とするロイヤル・バレエ(RB) 2004/5シーズンが10月22日開幕しました。このセレブレーションの第1プログラムであるミックス・プログラム:『レクイエム』、『ウェディング・ ブーケ』、『結婚』が10月22日~11月8日の約2週間ロイヤル・オペラ・ハウス(ROH)で上演されました。

ケネス・マクミランがジョン・クランコの死を悼み創作した『レクイエム』(音楽:フォーレ)では、ファーストキャストとセカンドキャストの間で作品の与え る重みに大きな差が見られました。ファーストキャスト(リアン・ベンジャミン、ジョナサン・コープ、ダーシー・バッセル、カルロス・アコスタ、イヴァン・ プトロフ)では各ダンサーの存在感の強さと技術的な安定感が作品をとても印象深いものにしました。非常に強い表現力でありながらもその透明感はまさに精魂 のよう。一方セカンドキャスト(タマラ・ロッホ、マーティン・ハーヴェイ、ジェイミン・タッパー、フェデリコ・ボネリ、ヴィアチェスラフ・サモドゥロフ) ではリハーサル不足と思われるような不安定さが表現的/技術的な面で見られました。10組以上と思われるコールドの女性ダンサーが男性ダンサーの頭上に横 向きにリフトされゆっくりと舞台に登場する様はまさに天国に浮遊する魂のイメージ。彫刻的なポーズやリフトは神秘的で美しく、マクミラン独特の描写が印象 的でした。

「レクイエム」

アシュトンがRB (当時ヴィック・ウェルズ・バレエ)のダンサー兼振付家として招かれて間もない1937年に振付けた『ウェディング・ブーケ』は、フランス田舎町のとある 結婚式を描いた作品。ガートルード・スタインの詩を元に、20人近くのゲストが次々と訪れ慌しい結婚式の様子がロード・バーナーズの音楽にコミカルに描写 されています。作品の中でメインとなるは、友人として結婚式に訪れた新郎の元愛人ジュリアの妬み悲しむ姿。陰のあるジュリアをタマラ・ロッホが存在感たっ ぷりに演じました。新郎を演じたヨハン・コポーは歩く姿からも笑いが起きるような見事なコメディアンぶりを発揮。純粋無垢でかわいらしい花嫁をアリーナ・ コジョカルは彼女そのままのイメージで演じました。はじけるようなアリーナの踊りは、ジュリアの嫉妬と対照的に何も知らない幸せな花嫁の姿を的確に描写し ました。アンソニー・ダウエル務めるナレーターは存在感と声の鮮明さに欠けとても残念でしたが、作品としては、珍しいナレーター付コメディ・バレエとして 非常に楽しむことができました。ROHの廊下にはセレブレーションの一環としてアシュトンにまつわる様々な写真が展示されており、『ウェディング・ブー ケ』初演時の写真(マーゴット・フォンティーン演じるジュリアの写真など)やデザイン画を見ることが出来ます。それらの写真と約70年の時代のギャップを 経た舞台を同時に鑑賞することはとても興味深い体験となしました。

「ウェディング・ブーケ」
「結婚」

アシュトンがニジンスカ自身にリバイバル依頼をし、1966年の上演以来RBの代表的レパートリーとなっている『結婚』では、アンサンブルの迫力、花嫁を 演じたクリスティーナ・アレスティの切なさにじみ出る表現力、花嫁の友人を演じたラウラ・モレラの空気を切るようなジュッテがとても印象的でした。
それぞれの作品で印象深い部分はあったものの、プログラム全体的にはインパクトに欠けていたように思えます。婚礼と葬礼、つながりはあるものの統一感を見出すことのできない3作品。シーズン開幕プログラムとしてはどこか満足できないものを感じました。
(2004年10月27・30日、11月2日、ロイヤル・オペラ・ハウス、ロンドン