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船引怜美 text by Remi Funabiki 
[2004.07.10]

●ランベール・ダンス・カンパニー、アシュトン生誕100年記念プログラム

ランベール・ダンス・カンパニーはイギリスで最も歴史の長いダンス・カンパニー。カンパニー創設者マリー・ランベールの元で勉強していたフレデリック・ア シュトンは、カンパニー設立の1926年に21歳の若さで『ファンションの悲劇』を振付け、この作品が彼のデビュー作となりました。アシュトン生誕100 年記念に際し、アシュトンにちなんだ2作品と2つのコンテンポラリー作品を含むミックス・プログラムがサドラーズ・ウェルズで上演されました(5月 25~29日)。アシュトン振付『5つのブラームスのワルツ』の再演と『ファッションの悲劇』の改作版発表は、今公演の注目の的で話題を呼びました。
『5つのブラームスのワルツ』はイサドラ・ダンカンへのオマージュとして1976年に創作、リン・シーモアによって初演されました。イサドラの特徴的なギ リシャ風のチュニックに身を包んだ女性ダンサーのソロ作品。スカーフをもって陽気にスキップしたり、そよ風のように駆け抜けたり、薔薇の香りに酔いしれ花 びらをちらつかせながら叙情的に踊る姿は、感情の自己表現として身体と心が赴くまま自由に踊ったイサドラを思い起こさせました。今回の再演では、エイ ミー・ホリングワースの指先からも情感溢れる繊細な表現力、身体の芯からこみ上げる情熱とエネルギーがとても印象的でした。

振付家イアン・スピンクによって改作された『ファッションの悲劇』は、コレクションでの失敗を苦に自殺したあるデザイナーの悲劇の物語。この改作では作品 の歴史的背景を継承しつつ、コンテンポラリー作品を創作することに焦点が絞られました。ニジンスカの『雌鹿』や『青列車』の衣裳やムーブメントの影響が多 く見られました。非常に演劇的要素の強い作品でしたが、次々と目の前で起こるシーンは単調でムーブメントから物語を読み取ることもできません。そのため作 品にこめられた意味を理解することも出来ませんでした。作品がどのように舞台で展開されるかよりも、作品制作の発想や創作過程に重きをおいたコンセプチュ アルな作品だったのかもしれません。

このほかアシュトン関連作品とは対照的な抽象的コンテンポラリー作品:ラファエル・ボナチェラ振付『リニアー・リメインズ』とフィン・ウォーカー振付『リ フレクション』ではコンテンポラリーダンサーの象徴である強靭な身体と並外れた身体・運動能力、ランベールダンサーならではのテクニックの正確さと美しさ が非常に印象的でした。(2004年5月25日、サドラーズ・ウェルズ劇場)