ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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船引怜美 text by Remi Funabiki 
[2004.05.10]

●ダンサーの身体と公演のスケジュールの問題

アリーナ・コジョカルの怪我のニュースは、日本にもショックを 与えました(アリーナの怪我は長い間被っているもので、十分な休養が必要とされたと報告されています)。現在タマラ・ロッホの怪我も報告されていて、4月 下旬のマクミラン『アナスタシア』のキャストに変更がありました。

以前からロイヤル・バレエで問題になっていることは、公演スケジュールとプリンシパル・ダンサーの怪我の関係です。ロイヤル・バレエはここ数年上演作品数 が非常に多く、大変バラエティーに富んでいます。その一方でプリンシパル・ダンサーの怪我によるキャスト変更が非常に多いのは否めない事実です。どの作品 にもキャストされるプリンシパルは同じで、アリーナやタマラなどの超人気プリンシパルは多くのコレオグラファーも起用したがり、カンパニー側も積極的に キャストに入れます。すると、3~5プロダクションのリハーサルが同時に行われ、海外公演へのゲスト出演などが加わると信じられないほどの過密スケジュー ルになり、ダンサーに怪我などのリスクを必要以上にもたらす結果になります。特にアリーナは頑張り屋で有名で、ロイヤル・バレエのクラス以外にも、自ら オープン・クラスに行ってレッスンをしている姿をよく見かけます(レッスン中も休むことなく、ずっと稽古場の隅で何かを練習しています)。

ロイヤル・バレエの2004/5シーズンも例年に増して、新作やここ数年上演されていなかった作品が多く挙げられています。劇場側の営利的意向、観客の要 望も理解できますが、ダンサーの身体に何らかの配慮を施さない限り、ダンサーが直面する問題・危険はさらに増すばかりです。公演とリハーサル・スケジュー ル、トレーニング・プログラムの見直しが要望されます。

その現れとして、今回のアリーナの5月17日までの出演中止はダンサーの身体・ダンサーとしての将来を熟慮した上の判断と思われます。必死の思いをしてチ ケットを予約し、公演を心待ちにしている観客にとって、ダンサーの怪我によるキャンセルほど悔やみきれないものはありません。しかしそのダンサーの舞台を 一生観ることが出来なるのではなくて、一回だけ逃すのだと、状況を理解するしかありません。