ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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船引怜美 text by Remi Funabiki  
[2004.04.10]

ジョージ・パイパー・ダンスのスプリングツアー2004

<バレエボーイズ>こと、マイケル・ナン&ウィリアム・トレビットのジョージ・パイパー・ダンスの公演は、絶対見逃すことができないと言われています。 1999年にロイヤル・バレエを退団、Kバレエを経て2001年1月、マイケル&ビリー(ウィリアム・トレビット)は二人のミドルネームをとって、 ジョージ・パイパー・ダンス(GPD)を結成し、様々な賞を受賞しています。彼らの公演の特徴は、世界的に注目を集める振付家とのコラボレーションのみならず、 マイケル&ビリーが撮影したビデオ・ドキュメンタリーを上映すること。ビデオ・ドキュメンタリーはテレビでも放映されたのですが、 彼らの公演では作品と作品の間に上映され、観客を自然と次の作品へと導きます。ドキュメンタリーは、「パフォーマーと観客との壁を打ち破り、 構えることなく自然にダンス・パフォーマンスを楽しんでもらいたい!」というコンセプトのもと、リハーサルシーンから、日常生活、入浴シーン、 ショートコント、時にはぼやく姿まで映されています。

1作品目のウィリアム・フォーサイスの『アポロックシィメイト・ソナタ I, V』では、フォーサイス特有のムーブメントと身体の無限の可能性に挑戦する振付を、 オクサナ・パンチェンコ(GPDの注目のバレリーナ)が、強靭な身体と目を見張るようなテクニックで観客の目に焼き付けました。 2作品目の、21世紀のバランシンと呼ばれるクリストファー・ウィールドン振付『メズメリックス』 (2004年ローレンス・オリヴィエ賞ノミネート)は、カンパニー(5人)総出演の作品。 ユニゾンやシンメトリーなムーブメントの構成+古典的なバレエのヴォキャブラリー、 フィリップ・グラスの叙情的なチェロ八重奏に溶け込むようなウィールドンの天才的音楽解釈の振付が特徴です。 まるでスローモーションを見ているようなコントロールされた動き、鏡を見ているように、重なり合うダンサーの動きなどとても印象的でした。 「あれ? 目が霞んじゃって、映像がぼやけて見えているのかな?」という錯覚に陥らせる照明デザインとダンサーの動きはまさにタイトルそのものでした。 3作品目は2004年ローレンス・オリヴィエ賞受賞作品、ラッセル・マリファンの『ブロークンフォール』。 この作品は昨年12月にロイヤル・オペラハウスで、シルヴィ・ギエム&バレエボーイズという奇跡的競演で初演され、注目を集めました。 今回の公演では、もとバーミンガム・ロイヤル・バレエのモニカ・サモラがシルヴィとは全く異なった存在感で、この作品に新たな魅力を引き出しました。 コンタクトインプロバイゼーション的な動きを主に、体操のようなアクロバティックなパートナリング、 ビリーの肩の上から倒れ落ちるモニカをマイケルが受け止めたり、マイケルは頭上にリフトしているモニカを床に落ちる寸前のところでキャッチするなど、 スリルにあふれる振付が強烈な印象を与えました。ダンサーのテクニックのレベルの高さと、終わりのないムーブメントの可能性への追求を観ることができました。 バレエボーイズとラッセル・マリファンの更なるコラボレーションに期待が高まります。

ウィリアム・フォーサイス
『アポロックシィメイト・ソナタ I, V』




クリストファー・ウィールドン
『メズメリックス』