エヴァン・マッキー Text by Evan McKie/訳:香月圭  
[2016.12.12]

エヴァン・マッキーによる11の質問
ナショナル・バレエ・オブ・カナダ日本人ダンサー=インタビュー

ダンス・キューブの読者の皆様、ナショナル・バレエ・オブ・カナダに在籍する素敵な日本人の同僚たちをご紹介致します! このカナダのカンパニーは、少しだけ例を挙げても市野陽子や平野啓一、そしてステイシー・シオリ・ミナガワといった優れた日本人ダンサーを輩出してきました!
現在在籍する日本人のメンバーにリハーサルと舞台の合間を縫って最近話したことをこれからお伝えします!彼らが舞台で踊るのをいつかご覧になる機会もあろうかと思います。彼ら直接聞いた、一人一人についての情報をお教えします!

Q1トロントの好きなところ

江部直哉:トロントについて好きなことは多様性です。世界中から異なる文化がたくさん集まってこの街を面白くしています。この街ではどんな文化にも簡単に触れることができます(そして世界各地の料理がいろいろ楽しめます!)

子安美代子:トロントの好きなところは大都市と自然がひとつの場所で共生していることです。私は田んぼやホタル、緑の木々や水辺のある平地の風景と共に育ちました。トロントに移住したとき、ふるさとがとても恋しくなるだろうと思いましたが、都会の真ん中でもある程度の静けさと新鮮な空気を私にもたらしてくれる公園をいくつか見つけたのです。

佐藤航太:トロントは生活するにはとてもクールな都市です。非常に多文化で私たちのカンパニーでも世界中からダンサーが集まっています。この都市は“大都市”と自然がいいバランスを保っていて、トロント島や公園に行くとリラックスしてリフレッシュできるのです。

森 志乃:大都市に関わらず、ダウンタウンを少し外れるだけで全く違う街並みや自然があり、いろんな角度から楽しめて、とても住みやすい街です。

ローリナス・ヴェジャリス:トロントにはとてもきれいな公園がたくさんあります。僕はスポーツが好きなので、時々友だちと遊びに出かけます。トロント島がこの街ではお気に入りです。それから、人々もとても親切です。通りを歩くだけで新たな友だちができますよ!

Q2.ナショナル・バレエ・オブ・カナダに入団したきっかけは?

江部直哉:15歳のとき、トロントに行ってカナダ・ナショナル・バレエスクールに入学しようと思いました。この街の生活の質の高さと、もちろん成長を続けるバレエ団に魅力を感じて、そのままここに滞在することにしました。

子安美代子:私はカナダ・ナショナル・バレエスクールから奨学金をいただいて、初めてカナダへやってきました! ナショナル・バレエ・オブ・カナダのレパートリーと才能豊かな様々なダンサーに惹かれました。二年後、このバレエ団の研修生として採用されて現在に至ります。

佐藤航太:僕は入団前に3年間カナダ・ナショナル・バレエスクールに通いました。生徒のときこのバレエ団の公演は欠かさず観ており、このバレエ団で踊りたいと思いました。このカンパニーの一員となり、共に芸術を創り上げていくことができて幸せです。

森 志乃:ローザンヌ国際バレエコンクールでスカラシップを頂き、カナダ国立バレエ学校に入りました。そこでカナダ国立バレエ団の舞台を観る機会が沢山あり、とても魅力を感じるカンパニーで、私もこのカンパニーの舞台に立ちたいと思い研修生のオーディションを受けたのがきっかけです。

ローリナス・ヴェジャリス:ここに入団した最大の理由はレパートリーにあります。クラシック・バレエの作品もたくさんありますが、ほぼ毎シーズン新作も取り上げられています。また、日々のレッスンやリハーサルで素晴らしいダンサーたちに触発されます。彼らから学ぶことはとてもたくさんあり、それらのおかげで私は意欲を高めています。


Q3.演じてみたい役、または演じるのが好きな役は?

江部直哉:いくつかお気に入りの役がありますが、特に演じて楽しいのは『ジゼル』のアルブレヒト、『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』のコーラス、ジェローム・ロビンズの『作品19/ザ・ドリーマー』、ウィリアム・フォーサイスの『セカンド・ディテール』などです。レパートリーにはいろんなジャンルが混じっているでしょう!

子安美代子:演じてみたいのは『眠れる森の美女』のオーロラ姫です。物心ついて以来の夢です。このカンパニーではヌレエフ版も踊ります!

佐藤航太:『眠れる森の美女』の青い鳥は本当に演じていてとても楽しかったです。このカンパニーの伝統的なバレエで、過去に多くの偉大なダンサーが演じてきました。そのため僕もこの作品には特別な思いを抱いてきました。演じてみたい役はたくさんあります!

森 志乃:私のお気に入りの役は『白鳥の湖』のイタリアの王女とジェイムズ・クデルカの『四季』の鳥です!

ローリナス・ヴェジャリス:演じてみたいのはオネーギンです。この作品のありとあらゆるシーンや役が好きで、特に夢/鏡のパ・ド・ドゥが大好きです。このバレエを観ると感情を揺さぶられます。たった今トロントで上演中ですよ!


Q4.日本について恋しいと思うことは?

江部直哉:故郷に帰ったら、絶品のラーメンと焼肉を食べなくては! トロントでは和食をよく作りますが、日本の食材を扱う店がほとんどありません。お米なしでは生きていけないです。

子安美代子:家族と友人に会えないのが一番さびしいです。時々和食を食べたくなるし、際立って美しい日本の自然が恋しいです。

佐藤航太:新鮮な魚介類を食べたいですね…トロントは海に面していない街なので、新鮮で美味しい寿司はなかなか食べられないのです。

森 志乃:家族と和食です。

ローリナス・ヴェジャリス:和食はいつも作りますが、味がどこか違います。バレエ学校や中学校の友人に会えないのがさびしいです。彼らと昔の思い出話をするのが好きです。家族と過ごせないのもさびしいです。彼らのそばにいるだけで幸せです。


Q5.踊りを始めたきっかけは?


江部直哉:実はバレエを始める前は体操選手でした。私の体操を改善するために私にバレエを始めさせようというのが母の考えでしたが、私はバレエに夢中になりました!!

子安美代子:もちろん音楽がきっかけですが、それに加えて、ダンサーと観客が感情的につながったと感じられたからです。

佐藤航太:音楽を聞いたときです!気分が乗ってきて動きたくなるんです!

森 志乃:幼いころ、私はいつも家で踊っていました。踊りを始めたのは自然な流れだったと思います。

ローリナス・ヴェジャリス:4歳の頃、母が初めて僕をバレエ教室に連れて行ってくれました。音楽に合わせて踊るのは大好きでしたが、バレエのことを真剣に考えてはいませんでした。
10歳の頃、初めてコンクールに挑戦しました。私の演技はひどいもので、そのコンクールで実に多くの才能豊かな男性ダンサーを見ました。私はとても落ち込んで、一生懸命練習してなにを目指すか考えなければと思いました。あれは私の人生のなかでとても重要な瞬間だったと思います。


Q6.あなたの憧れのダンサーは?

江部直哉:とくに尊敬するダンサーはいませんが、刺激を与えてくれるダンサーは世界中にたくさんいます。

子安美代子:ヴィヴィアナ・デュランテ。彼女は常に私のオーロラ姫で憧れです。

佐藤航太:あらゆるバレエ・ビデオを見て育ったので、一人に絞るのはとても難しいです。でも、ミハイル・バリシニコフと熊川哲也は確かに何度も見ました。特別なカリスマ性と魅力をもつダンサーを見るのは大好きです。

森 志乃:憧れのダンサーは、アリーナ・コジョカルさんです。

ローリナス・ヴェジャリス:バリシニコフ、彼しかいません。


Q7.この仕事がよかったと一番思えるときは?

江部直哉:毎日一生懸命練習し舞台のために準備をしているときと、舞台で演じているときです!

子安美代子:自由に存分に踊りを楽しむことができ、私に可能なことすべてを表すことができたときです。

佐藤航太:演じているとき、そして舞台独特のエネルギーを感じることができるときです。

森 志乃:日々の課題や目標に、少しでも近づけたと自分自身で感じられた時です。

ローリナス・ヴェジャリス:舞台に立つときです。どのダンサーも私と同じように答えるでしょう。そのために私たちは練習し、痛みに対処することができるのです。素晴らしいフォー・シーズンズ・センターの舞台に立つのが大好きです。世界中の舞台に立ち、皆さんと私たちの時間を分かち合いたいと思います!


Q8.あなた方それぞれの踊りの個性や動きの特徴をひとことあるいは1つの文章で表すとどうなるでしょう?

江部直哉:“自由にジャンプする”

子安美代子:表すのは難しいです…でも私は「空中に浮かんでいる」ように感じます。

佐藤航太:情熱とエネルギー。

森 志乃:喜び。

ローリナス・ヴェジャリス: “興奮”という言葉を選ぶかな。舞台で自分がどう見えているかは分かりませんが、常に人々がその舞台を見てワクワクさせるよう努めています。バレエにはとても多くの作品があり、ひとつの作品の中にも実にたくさんの役は様々な登場人物があります。しかしどの役を演じるにせよ、私は人々の心を様々に揺さぶることができると思います。


Q9.あなたのファンは知らないけれど、実は知ると面白いことは?

江部直哉:冬でも毎日自転車で仕事に行くことです。

子安美代子:料理やお菓子作り、そしてお風呂に入ってリラックスするのが好きです!!! SFやスリラー映画も大好きです!

佐藤航太:バレエを教えるのが好きで、トロントや日本で時々教えています。

森 志乃:実は双子です。

ローリナス・ヴェジャリス:サッカーが大好きで“チェルシー”を応援しています。スタジアムに行って試合を見たこともあります。時には自分でもサッカーをします。ロンドンに住んでいた頃は、ほぼ毎週パブに出かけて試合を見ていました。それが僕の日課でした。試合を見るならイギリスのパブが最高です。


Q10.秋冬のシーズンにトロントであなたが演じている役についてはどう感じていますか? どのような役で、あなたにとってどういったところが特別なのでしょうか?

江部直哉:『シンデレラ』のチャーミング王子と『オネーギン』のレンスキーです。『シンデレラ』は技術的に要求が高く、やりがいのある作品ですが、この作品を踊ることがその点で私を満たしてくれます。
レンスキーは私にとって特別な役です。なぜなら、この役は演じるのにとても繊細な感性が必要だからです。

子安美代子:今シーズンは『シンデレラ』や『オネーギン』、『くるみ割り人形』を踊ってきました。群舞やソロ、そして主要な役で合計10もの様々な登場人物を踊りました。それらはすべて異なる登場人物で、演じ分けるのに様々なエネルギーを必要とします。『シンデレラ』のソリストの役や『オネーギン』のオルガのような主要な役はどちらも私にとって新しい体験でしたが、一方の役が他方の役よりも重要だということではありません。私が踊る役はすべて私にとって特別なものです。

佐藤航太:『シンデレラ』と『オネーギン』に出演しています。これらのバレエはストーリーが素晴らしいです。様々な登場人物に扮して場面を進めていくのはとても面白いです。
『くるみ割り人形』では初めて雪の精のトリオを演じます。とても美しく、力強いパ・ド・トロワです。この役を演じるのはわくわくします。

森 志乃:残念ながら、ケガのリハビリに専念してきました。

ローリナス・ヴェジャリス:『オネーギン』の農夫を演じています。『シンデレラ』の公演が終わったところですが、“独身貴族”役でした。農夫は実に面白い役で、楽しく、エネルギーに満ち溢れています。『オネーギン』では大部分の場面はとても暗くドラマチックですが、農夫のシーンは平和で楽しい雰囲気です。男性ダンサーにはたくさんのジャンプがあって、そこが大好きです! “独身貴族”はとてもクールな男たちで、1930年代の粋で古風なファッションです。僕たちはタキシードを着て王子やシンデレラとパーティを開いています。このダンスのスタイルとムードが大好きです。ジャズの雰囲気に溢れています。


Q11.ダンサーとして毎日どんなダンス・スポーツ用品・化粧品を使っていますか? どのブランドですか?

江部直哉:ユニクロのようないつもベーシックでシンプルなウェアを使っています。

子安美代子:チャコットのボディスーツはたくさん持っています。特別な時や少し元気づけが必要なとき、それらを身に着けます。中村祥子デザインのものも持っていて、特にお気に入りです。

佐藤航太:練習着にはユニクロ・スタイルの服が大好きです。簡単に洗える素材で、着ていて快適です。

森 志乃:日本に帰った時は、よくチャコットのお店でお買い物をします。

ローリナス・ヴェジャリス:バレエ用にはそれほど練習着の数は持っていません。 でも、いつも“アンダーアーマー”のTシャツを着ます。軽くて快適で、通気性がいいのです。それから、プロテインを毎日飲むようにしています。カナダでは、最近“バイオスティール”からプロテインを摂取しました。とても美味しくてプロテインと一緒に何種類ものビタミン類も配合されています。チャコットではいつもタイツを買います。とても快適で僕の脚のラインと形をより美しく見せてくれます!

image001.png 江部直哉 プリンシパル・ダンサー
東京生まれ。カナダ・ナショナル・バレエスクールを経て2006年入団。2015年よりプリンシパル・ダンサーに昇格。
 
image002.png 子安 美代子 コール・ド・バレエ
千葉生まれ。橋本バレエスタジオ、島田バレエ学院、カナダ・ナショナル・バレエスクールを経て2011年入団。2013年よりコール・ド・バレエに。
 
image003.png 佐藤 航太 コール・ド・バレエ
東京生まれ。志村 昌宏・有子バレエ スタジオ、カナダ・ナショナル・バレエスクールを経て2012年入団。2014年よりコール・ド・バレエに。
 
image004.png 森 志乃 コール・ド・バレエ
群馬生まれ。山本禮子バレエ教室、カナダ・ナショナル・バレエスクールを経て2008年入団。2009年よりコール・ド・バレエに。
 
image005.png ローリナス・ヴェジャリス コール・ド・バレエ
トアニア、ヴィリニュス生まれ。オーストリア・バレエ・スクール・イン・ジャパン、英国ロイヤル・バレエスクールを経て、2015年コール・ド・バレエに。
all photos by Karolina Kuras-

 

Evan  McKie エヴァン・マッキー

image006.jpg この世代では国際的に最も愛されているカナダの男性バレエダンサー。北米とヨーロッパを行き来し、とりわけ世界中で最も演じるのが困難な英雄的でドラマチックな男性役を演じる。コンテンポラリー、クラシック、ストーリーを踊る領域を、極めて幅の広いジャンルの振付家と最も優れたカンパニーにおいて押し広げている。観る者の心を奪う彼の類い稀なる独特の舞台のスタイルは、パリからロシア、ニューヨーク、シュツットガルトで絶賛されている。現在は彼の生まれ故郷トロント在住。舞台から離れると、他のダンサーの作品にスポットを当て、正しい創造的な指導により極めて明るい可能性は高いと彼が見る未来のためにアーティスト、観客、振付家を一同に集めることを好む。そもそも、このために彼がダンスを始めたのだという。ダンスはコミュニケーションと精神の寛容にとって限界のない可能性を秘めている。