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星野 聖子 text by Seiko Hoshino 
[2015.09.10]
From Nagoya -名古屋-

観客の心を掴んで離さない舞台を作り上げた、創造性と意外性に富んだ川口節子バレエ団

川口節子バレエ団 定期公演
川口節子、松村一葉:作・構成・振付

8月8日、9日の2日間にわたって川口節子バレエ団定期公演が開催された。それぞれ昼の部と夜の部があり、公演は全部で4回。昼と夜で演目が一部異なり、いずれの部を観ても、その都度新しい発見があるというのが同バレエ団の定期公演だ。私が鑑賞したのは8日昼の部。上演内容は大きく3つに分かれており、「バレエ&創作小作品集」『白鳥の湖(第2幕)』そして『アニー』だった。夜の部は『白鳥の湖』ではなく「バレエコンサート」が上演され、古典名作のソロヴァリエーションやグラン・パ・ド・ドゥが披露された。

nagoya1509a_01.jpg 『The Carnival Suite』撮影:国枝建央

「バレエ&創作小作品集」では、同バレエ団主任講師である松村一葉が振付と指導を手掛けた『The Carnival Suite』(音楽:ゴットシャルク「Cake Walk」等より)が一番初めに上演され、観客の心を一気に掴んだ。というのも、これは幼いピエロ(加藤秀隆)と17人のバレリーナが繰り広げる、明るく楽しいエンターテインメント作品。一度見始めたら舞台から目が離せなくなった。まず、真っ暗な舞台の真ん中にスポットライトを浴びたピエロが登場するところから始まる。少し時間を置いてからバレリーナたちが現れて、ピエロを愉快で不思議な世界へと誘う。バレリーナたちはフランスの洋菓子を思わせるような、繊細で優しい色合いの衣装を身に着けていた。スティックやリング、タンバリンを操りながら、テンポ良く陽気にステップを踏む様子はまさにカーニバル。ダンサーたちの自然な笑顔とチャーミングな振付が印象的だった。
小作品集では他にも、『口笛吹きと犬:『ジゼル』よりワルツ、『二羽の鳩』より〜friends dance〜、『Don Quixote』より〜マーチ〜、『チェリストの休日』『海賊』が発表された。『海賊』には若い男性ダンサー6人が出演。このうち4人はまだ幼いダンサーだが、将来性を感じさせる力強い演技を披露し、会場を賑わせた。高橋将貴はアクセントをしっかり付けながら独自の「海賊」らしさを表現。野黒美拓夢は手や腕の使い方が美しく、柔軟性を活かしたジャンプやポーズを華麗に決めた。
『白鳥の湖(第2幕)』は有名な湖のほとりの場面。オデット姫には中谷友香、ジークフリート王子(神澤千景バレエスタジオ)には長谷川元志。中谷は華奢だが、ダンサーに必要なスタミナと磨き抜かれた技術の持ち主である。全身を使って描くひとつひとつの線が本当に美しい。憂いのある表情がオデット姫の身の上をうまく物語った。長谷川は洗練された動きを見せながらオデット姫に心惹かれる王子を熱演。この二人のペアによる全幕もぜひ見てみたい。薄暗い湖のほとりに現れた白鳥たちによるコール・ド・バレエも見事だった。尚、翌日9日のオデット姫は太田沙樹が、ジークフリート王子は高宮直秀(DANCE COMPANY UNICORN)が演じた。

nagoya1509a_02.jpg 『海賊』高橋将貴
撮影:国枝建央
nagoya1509a_03.jpg 『海賊』野黒美拓夢
撮影:杉原一馬
nagoya1509a_06.jpg 『白鳥の湖』中谷友香
撮影:国枝建央
nagoya1509a_04.jpg 『白鳥の湖』
撮影:国枝建央
nagoya1509a_07.jpg 『白鳥の湖』中谷友香&長谷川元志
撮影:杉原一馬
nagoya1509a_05.jpg 『白鳥の湖』撮影:国枝建央

最後の演目はミュージカルや映画でおなじみの不朽の名作『アニー』。選曲・振付は川口節子。主役は今年でバレエ歴10年の林さくらこ(9日藤井くるみ)、ウォーバックスは高宮直秀が務めた。言葉を使わず、踊りだけでストーリーを展開していくのは困難だと思うが、川口の『アニー』は非常にわかりやすかった。内容は簡潔にまとめられていたし、出演者たちの表現力も豊か。特にアニー役の林の巧みな感情表現により、舞台に完全に引き込まれた。作品はバレエのクラシックな動きと創作的な動きが織り交ぜられて完成。オリジナリティーのあるものだった。犬であるサンディの友だちが多数出てきて元気よく踊ったり、ウォーバックスの宮殿のメイド役や警察官役が可愛らしい子供たちだったり、一生懸命ニュースを報道するキャスターが街の人々の混乱に巻き込まれて倒れたり…。演出や振付が細かく、コミカルな場面が多かった。それでいて『アニー』の感動的な要素も十分に描き出されていた。
川口節子バレエ団は創造性と意外性が実に豊かだ。本公演でも古典と創作の両方を取り入れ、さまざまな形で作品を表現した。観客の心を掴み、共感を呼ぶ舞台を作り上げたのはさすがである。
(2015年8月8日 名古屋市芸術創造センター)

nagoya1509a_08.jpg 『アニー』撮影:国枝建央 nagoya1509a_09.jpg 『アニー』撮影:国枝建央
nagoya1509a_10.jpg 『アニー』撮影:国枝建央 nagoya1509a_11.jpg 『アニー』撮林さくらこ 撮影:杉原一馬