ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2014.10.10]
From Osaka -大阪-

堀内元、吉田都がバレエにモダンダンス、コンテンポラリーを加えた素敵なダンスを踊った

堀内元バレエUSA V
"Valse Fantaisie" ジョージ・バランシン:振付、Pandora's Box" クリストファー・ダンボァ:振付、"Sinatra Suite" トワイラ・サープ:振付、”La Vie" 堀内元:振付

2010年以来、毎年、この時期に兵庫県立芸術文化センター主催により開催されている「堀内元バレエUSA」も、今年で5回目を迎えた。アメリカ、セントルイス・バレエ団の芸術監督を務めている堀内元は、この公演以外にも時折日本の舞台で踊るようになった。これは大いに歓迎すべきことで、バランシンの下で鍛えた「堀内元バレエ」の精髄をぜひとも日本に伝えて欲しい。前回に続いての出演となる吉田都と、K バレエ カンパニーの創立メンバーの1人だった英国ロイヤル・バレエ団出身のマシュー・ディブルがゲスト出演した。ほかにはセントルイス・バレエ団からは森ティファニー(ファーストアーティスト)上村崇人、新国立劇場バレエ団から寺田亜沙子(ファーストソリスト)毛利実沙子なども踊った。作品は、ジョージ・バランシン、クリストファー・ダンボァ、トワイラ・サープ、堀内元の振付作品がそれぞれ1曲ずつ計4曲上演された。

tokyo1410a_198.jpg "Pandora's Box"

まず、バランシン振付、グリンカ曲の "Valse Fantaisie" で幕が開いた。ピンクのチュチュを着けた木村綾乃(ワシントン・バレエ)と末原雅広(SAB出身)を中心に、4人のやはりピンクのチュチュを着けた女性ダンサーがリズムに良く乗って踊った。バランスのとれた構成の作品だった。続いて堀内元のNYCBの先輩でセントルイス・バレエ団の常任振付家でもあるダンボァ振付、シューベルト曲の "Pandora's Box" 。鮮やかなえんじ色の衣裳の荒井茜(スクール・オブ・アルバータ・バレエ出身)と上村崇人のパ・ド・ドゥだった。コンテンポラリーな感覚の大きな動きで構成されていて、なかなか見応えがあった。
つぎはサープがフランク・シナトラの歌に振付けた "Sinatora Suite"(シナトラ組曲)を、森ティファニーとマシュー・ディブルが踊った。シナトラの大ヒット曲「夜のストレンジャー」「マイ・ウエイ」など胸に深々と染み込むような歌声を、ボールルーム・ダンスのスタイルで踊る。サープの振付は、スローもアクロバットも女性を振り回すようなワイルドな動きもあるが、バレエとモダンダンスのテクニックを駆使して、豊穣なムーヴメントにして舞台に現す。サープの才気が鮮やかに際立つダンスである。森ティファニーにはエレガンスに踊って魅力的だった。終曲はディブルのソロとなった。K バレエ カンパニー時代より身体はいくらかふっくらとしたが、堂々とした舞台だった。

tokyo1410a_.jpg "La Vie"

ラストの曲 "La Vie" は、堀内元が2013年にセントルイス・バレエ団に振付けた作品。フランスのジャズ・ピアニスト、クロード・ボリングの曲に振付けている。全体は4章に分かれる。オープニングには手拍子とともにプリンシパル以外全員が踊り、心臓の鼓動が舞台に脈打った。最初は背景にデジタルの模様を映して、淡いブルーのチュチュを着けた女性ダンサーのコール・ドと黒いパンツにベージュのトップを着けた男性ダンサーのコール・ド、真っ赤なドレスを着けた寺田亜沙子と岡田兼宣(ダズル・ダンス・カンパニー出身)のペアが踊った。音楽は様々に変化するが、モダンジャズの曲調で寺田と岡田のペアが踊ったシーンが、寺田の長い手足が活きた振付だった。
次は自然の情景をホリゾントに映した。ペアを組んだコール・ドと吉田都と堀内元のペアが踊った。プリンシパルの二人が素晴らしい踊り。ジャズ調のテンポの速いピアノを柔らかく受け止めた吉田都のステップがじつに見事。圧巻だった。堀内元は同じピルエットを回って、どうしてこんなに魅力的にみえるのか、と思わせる鮮やかなステップ。バランシン・ダンサー独特のスピード感のある動きが、音楽とも独特のタッチで融合し、魅力的なダンスを繰り広げた。続いて都会の夜の情景を背景に映して、寺田、岡田のペアを中心に、後半には吉田、堀内のペアも加わってアーバンな感覚の振り。そして最後は全員が速い出入りを繰り返して、大いに盛り上がった。ダンサーたちそれぞれの表情にも踊る喜びが溢れる素晴らしいダンスだった。堀内の振付は、とに角、ステップが多彩。上体を無理に捻って意味あり気な造形を作るような表現は、どこにも見当たらない。シンプルでいて多彩、これ見よがしのフォーメーションもないが、それでいて音楽のイメージを超えた、躍動的なムーヴメントが展開した。
あるいは、吉田都も堀内元も全幕のような長丁場の踊りは難しいかも知れないが、キラリと見せる超一流の輝きは、さらなる高みに達している。まさに日本の至宝である。
(2014年8月31日 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール)

tokyo1410a_168.jpg "Valse Fantaisie" tokyo1410a_337.jpg "Sinatora Suite"
tokyo1410a_432.jpg "La Vie" tokyo1410a_512.jpg "La Vie"
tokyo1410a_864.jpg tokyo1410a_876.jpg