中村祥子、米沢唯、佐々晴香が『くるみ割り人形』『海賊』『コッペリア』を踊った見事な舞台、グラン・ドリーム・バレエ・フェス 2026
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ワールドレポート/大阪・名古屋
関口 紘一 Text by Koichi Sekiguchi
グラン・ドリーム・バレエ・フェス 2026 松岡伶子:芸術監督
「海賊」2幕・3幕より 梶田眞嗣:振付、「くるみ割り人形」1幕・2幕より 松岡璃映・市橋万樹:振付、「コッペリア」3幕 徳山博士:振付
「グラン・ドリーム・バレエ・フェス」は、世界で活躍するプリマバレリーナを招き、東海地方を中心としたオーディションにより選ばれた未来を担うダンサーたちと、クラシックの傑作バレエのハイライトを愛知県芸術劇場大ホールで共演すると言う、若きダンサーたちにとってはまさに夢の舞台である。東海テレビ放送が2022年にこの試みを始めて成功を収め、今回が3回目公演となった。(ちなみに第1回は飯島望未、上野水香、中村祥子、第2回は上野水香、倉永美沙、中村祥子、近藤亜香が出演した)
今回、グラン・ドリーム・バレエ・フェス 2026に登場したプリマは、中村祥子(K BALLT TOKYO 名誉プリンシパル)、米沢唯(新国立劇場バレエ プリンシパル)、佐々晴香(ベルリン国立バレエ プリンシパル)。ゲストダンサーとしてヴィスラフ・デュデック(元ベルリン国立バレエ プリンシパル)、速水渉悟(新国立劇場バレエ プリンシパル)、中野吉章(谷桃子バレエ登録プリンシパル)、牧村直紀(スターダンサーズ・バレエ団)であった。

「くるみ割り人形」中村祥子、ヴィスラフ・デュデック ©wakoophoto」
上演演目は『くるみ割り人形』『海賊』『コッペリア』の三演目。松岡伶子が芸術監督を務め、三作のハイライト部分を中心に、それぞれの振付担当が構成振付を行なっている。
まず『くるみ割り人形』(松岡璃映、市橋万樹︰振付)の舞台。クララ(松尾ミチル)くるみ割り人形(竹中俊輔)が旅立つところから雪のシーンとなる。雪の女王(加藤千佳)雪の王(奥田丈智)四人のソリストを中心に、粉雪が舞い散る華やかな踊りが繰り広げられ、お楽しみのデヴェルティスマン。チョコレート、コーヒー、お茶、トレパックと活発な踊りが続いて、金平糖の精の中村祥子とお菓子の国の王のヴィスラフ・デュデックのグラン・パ・ド・ドゥとなる。長身で見事なスタイルの豪華カップルの登場で舞台は一段と華やかになる。中村は複雑な振りをこともなげに楽々と余裕を見せて踊る。デュデックは落ち着いてサポートし、うまく音楽に乗せて見せた。やはり、『くるみ割り人形』のグラン・パ・ド・ドゥは、チャイコフスキーの素晴らしい音楽が踊りを彩って美しい舞台を創る。そしてパ・ド・カトルから花のワルツとなり、30人近いダンサーが流れるようにチャイコフスキーのメロディを身体で表し、大いに盛り上がった。見応え充分、『くるみ割り人形』のエッセンスを堪能することができた。

「くるみ割り人形」中村祥子 ©wakoophoto

「海賊」佐々晴香、中野吉章、牧村直紀 ©wakoophoto
『海賊』(梶田眞嗣︰振付)花のリングを手にしたコール・ド・バレエと二人のソリスト(斎藤侑里奈、千野梨華)が踊って、佐々晴香のメドーラ、中野吉章のコンラッド、牧村直紀のアリによるパ・ド・トロワが踊られた。アリは小柄ながら俊敏な動きで舞台狭しと踊った。白に赤のアクセントを着けた衣裳のコンラッドは全身から活力を感じさせる首領らしい表現。そして佐々晴香のメドーラは動きは歯切れ良く、しかし指先に感情の雫が滲んで現れているような素敵な表現があり、その身体の表情と紫をあしらった衣裳が良く似合っていた。コール・ド・バレエも活発で良く整って、『海賊』らしい明るく華々しいが、幻想性を秘めた美しい表現を作った。

「コッペリア」米沢唯、速水渉悟 ©wakoophoto」
最後は『コッペリア』(徳山博士︰振付)。米沢唯のスワニルダと速水渉悟のフランツである。「時」「あけぼの」「祈り」「仕事」「婚礼」「戦い」などが舞台全体を使って大きく豊かに踊られ、民族舞踊とクラシック・バレエが融合した踊りの豊穣感が会場いっぱいに溢れるようだった。
そしてやはり米沢唯と速水渉悟のグラン・パ・ド・ドゥ。米沢は体調を崩してから立ち直り、新国立劇場バレエの『ジゼル』ロンドン公演の成功が自信となったのであろう、ダンサーとしてのレベルが一枚上がっていた。感情表現は隙なく全身で表しており見事。それでいて表現が柔らかく優雅、自ずと情感がたゆたっている。プリセツカヤやロパトキナの境地に達している、そう見えた。そしてロシアのバレリーナたちよりも柔らかく優しい米沢唯自身の表現が生まれているのではないか、私はそう感じた。一心にバレエに打ち込んで得た素晴らしい成果であろう。ダンサーには役の解釈や音楽性、演技表現など様々な能力が要求されるが、身体能力を使った表現力は米沢自身の独特の力を身につけているのは間違いないと思う。
速水も米沢と共鳴し合って踊り、とても良かった。シャープなキレの良い動きでありながら、ゆとりがあり、慎重に技を重ねているが一段と舞台が映える踊りだった。コール・ド・バレエも次々とヴァリエーションを踊って良く整っていた。改めてドリーブの音楽の素晴らしさをも再確認させられて、私はなんだかとても嬉しい気持ちになった。
(2026年2月22日 愛知県芸術劇場 大ホール)

「コッペリア」米沢唯、速水渉悟 ©wakoophoto

「海賊」佐々晴香、中野吉章、牧村直紀 ©wakoophoto

フィナーレ(22日)©wakoophoto

「フィナーレ」(23日 全景)©wakoophoto
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