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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2014.09.10]
From Osaka -大阪-

特色のある振付を踊った下村由理恵のジゼルと佐々木大のアルブレヒトが見事だった

佐々木美智子バレエ団
『ジゼル』篠原聖一:振付

オープニング的に、ピアソラの曲に乗って踊られた『ESPRIT de corps』で幕開けした今年の佐々木美智子バレエ団公演。角井志帆と福岡雄大を中心にしたタンゴ調の大人の魅力の中、キリッとした少年がとてもサマになっているのが印象的だった。

osaka1409d_3079.jpg 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

続いて上演されたのがメイン演目『ジゼル』。ジゼル&アルブレヒトは下村由理恵&佐々木大と、踊りの息がとても合う二人だ。篠原聖一の演出・振付で上演されたのだが、1幕のワルツの後、ジゼルとアルブレヒト(この場面ではロイスだが)のパ・ド・ドゥが挿入されていたのが興味深い。無邪気で楽しげなジゼルがアルブレヒトを大好きで、一緒に踊る喜びを噛みしめるような幸せなパ・ド・ドゥ。ここが幸せであればあるほど、その後の悲劇が深みを増す。バチルド姫(杉原小麻里)からプレゼントされたネックレスをしたままで踊るジゼルのヴァリエーションも想いの中で、その後には、アルブレヒトもヴァリエーションを踊るという構成。このヴァリエーションでの美しいラインも印象に残った。その後の狂乱の場面が迫力たっぷりだったことは言うまでもない。
そんな場面を盛り上げたのが、ヒラリオンの福田圭吾。登場から自然で、なおかつ気持ちが伝わる演技、ジゼルが大好きで仕方がないということが、観客にストレートに伝わってくるのだ。そして、1幕のラストのジゼルの死でアルブレヒトと争いになると、膝立ちで両手を広げて「刺せ!」と胸を突き出す。この演出は最近よく見かけるけれど、今回の迫力は本当に素晴らしかった。また、ペザントの齋藤伊世、佐々木夢奈、福岡雄大の3人も良かった。齋藤の鮮やかな速いトゥール、佐々木夢奈の長い手脚を活かした優しい雰囲気の踊り、福岡の難易度の高いジャンプもスパッときれいにこなしての素直な踊りと見応えを感じた。

osaka1409d_8057.jpg 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

そして2幕は、まず、ミルタを踊った安積瑠璃子のスケールの大きな強い踊りが素晴らしかった。彼女は大阪バレエカンパニーのダンサーで、怪我で出演を断念せざるを得なかったダンサーの代役として舞台に立つことに。今回の演出ではミルタをはじめとするウィリーたちは、とても恐いメイクをして “ゾンビ” という感じ。踊りからも強い怒り──おそらくは人間界に対する──が感じられた。まったく慎ましやかではない。そんな恐いウィリーの女王ミルタはウィリーの中でもっとも強く、恐くないと絵にならない訳だが、その通り、迫力で迫ってくる強さがあった。もちろん、2幕のジゼルが叙情性に溢れていたのはいうまでもない。とても美しいパンシェから、祈り、静かな優しさが伝わってきた。怨念に包まれたウィリーたちの中、ジゼルだけが慎ましやかに優しく舞う、周りの恐ろしいウィリーとはまったく違う空気をまとった存在。アルブレヒトとの、二人の愛おしく想い合う姿に引き込まれた。
(2014年8月9日 八尾プリズムホール)

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osaka1409d_8038.jpg (すべて)撮影:岡村昌夫(テス大阪)