ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Osaka Nagoya <大阪・名古屋>: 最新の記事

From Osaka Nagoya <大阪・名古屋>: 月別アーカイブ

すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2012.05.10]
From Osaka -大阪-

カンパニー・でこぼこの創意を凝らした『眠れる森の美女』で輝いた西田佑子

演出・振付:脇塚力『眠れる森の美女』
Company Deco Boco Vol.10

さまざまなバレエ団所属やフリーのダンサーが集まって作品を上演するカンパニーでこぼこ。ゲストダンサーとして、多くのバレエ団で活躍する脇塚力の呼びかけで始まったこのカンパニーも、アっという間に10回目の公演を迎えた。今回は、いつもよりかなり客席数の多い大きな劇場、兵庫県立芸術文化センター・KOBELCO大ホールでの上演、作品も壮大な『眠れる森の美女』と、いつも以上に力が入っているようだった。

osaka1205a_0602.jpg 撮影:テス大阪

オーロラ姫&デジーレ王子を踊ったのは西田佑子とワディム・ソロマハ。ソロマハが優しく気品を持った王子を、高いバレエテクニックで演じたのは事前に想像していた通り、そして、事前にも素晴らしいだろうと想像していたけれど、思った以上に素晴らしく「観て良かった!」と心から思わせてくれたのが西田佑子のオーロラ姫だ。1幕のローズ・アダージオは確かな技術で難しいバランスを優雅にこなし、全幕を通して繊細で上品。彼女の踊りを観ていると、心が洗われるような、きちんと生きている人の踊り……という気がしてくる。
そして、カラボスを踊ったのは演出の脇塚自身。脇塚は今回も、やはり作品を一から捉え直して、オリジナリティのある工夫をいくつかしているのだが、“悪”とは何かということも突き詰めて考えようとした様子。配られたパンフレットに「見終わってから読んでください」と書かれた後書きのようなものがあって、私は本当に見終わってから読んだのだが、「もしもカラボスが招待されていたら、“何を贈る”つもりだったのか?」といったことが記されていた。面白い視点だと思った。
舞台でカラボスは派手に戦うことはしない演出。王子が自分でどうすべきか考え、オーロラ姫にキスすると、それだけでカラボスは弱ってしまい、3幕の結婚式では共に踊る。カラボスが結婚式で踊るのは初演時もそうだったようだが、悪の象徴もすっと、他の妖精たちに溶け込んでしまう感じ。カラボスが、もしオーロラが誕生した際の洗礼式に招かれていたら、やはり“悪い心”を贈ったのでは……と脇塚は考えたようで、どんな人の心の中にも良い心だけでなく悪い心もある、という考え方。今回の舞台を観ただけでは、そこまでは伝わらなかったが、興味深い視点なので、再演の機会があれば、ぜひそれを活かした演出を深めて欲しいと思う。
他に、2幕の王子登場時には、貴族の中に王子の恋人とおぼしき女性(中嶋美晴)が登場したり、6人の妖精がプロローグだけでなく、ほぼ全幕に渡って出演し、幻影の場で王子をリラの精と共に導き、結婚式では宝石の踊りを踊って祝うなど、ずっとオーロラ姫を見守っている感じであったり、という演出の工夫があった。ちなみに3幕の童話の踊りそれぞれのディヴェルティスマンは、家来がオオカミの頭をかぶって踊ったり、貴族としての登場人物が童話の主人公を踊ったりで、お城の余興であるということをみせる演出。ソリストダンサーの人数の問題もあるのかも知れないが、自然で良いと思った。また、そのそれぞれのディヴェルティスマンは、短い中でその童話全体をダイジェストに見せる工夫がされていて、そのことも面白かった。
11回目以降の公演にも、さらに期待したい。
(2012年4月8日 兵庫県立芸術文化センター・KOBELCO大ホール)

osaka1205a_0876.jpg 撮影:テス大阪 osaka1205a_1169.jpg 撮影:岡村昌夫(テス大阪) osaka1205a_1190.jpg 撮影:岡村昌夫(テス大阪)
osaka1205a_1219.jpg osaka1205a_6423.jpg 撮影:岡村昌夫(テス大阪) osaka1205a_0375.jpg 撮影:岡村昌夫(テス大阪)
osaka1205a_0554.jpg 撮影:岡村昌夫(テス大阪) osaka1205a_0716.jpg 撮影:岡村昌夫(テス大阪) osaka1205a_1310.jpg 撮影:岡村昌夫(テス大阪)