ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2011.10.11]
From Osaka -大阪-

素晴らしい堀内元のダンスと清新な振付作品

振付:堀内元Little Diamond』『Le Reve』『Romantique』、クリストファー・ダンボア『Tribute』
兵庫県立芸術文化センター

1982年にジョージ・バランシンに認められ、日本人として初めてニューヨーク・シティ・バレエ(NYCB)に入団した堀内元。その後、プリンシパル・ダンサーに昇格して活躍した。現在は、セントルイス・バレエの芸術監督としてカンパニーを率いるとともに、多くの作品を振付けている。彼についてはアメリカでの活躍を耳にするものの、なかなか日本でその作品を観る機会はなかったのだが、昨年から日本でも兵庫県立芸術文化センターで作品を発表する舞台を行っており、今回はその2回目となった。セントルイス・バレエのダンサーと、日本でオーディションによって選ばれたダンサーがともに出演する舞台。

osaka1110b02.jpg 『Little  Diamond』撮影:岸隆子

まず、最初の演目は、堀内がトークでバランシンの『ジュエルズ』の「ダイヤモンド」に影響を受けて創ったことを語った、J.S.バッハの曲に振付けた『Little Diamond』。シンプルな白いチュチュの6人の女性たちと4人の男性が、インパッセなども含んだ、ちょっとアメリカのミュージカルを思わせる動きもいれながら、クラシック・バレエのテクニックを活かして踊る。
ふたつ目は、同じNYCB出身で兄貴のような存在だというクリストファー・ダンボア振付の『Tribute』よりソロ&パ・ド・ドゥ。ブルーのライトのなか、シンプルなレッスン着のアルベルト・ロドリゲスと短いスカート付きレオタードの東山香織が踊る。2人はともにセントルイス・バレエのファースト・アーティストだ。憂いを感じさせる男女の関係が美しいラインで表現されていた。2人とも叙情性を出せるダンサーだと感じた。
その後、堀内元によるトークと、映像によるセントルイス・バレエの紹介。地元で放映されたテレビ番組も上映された。番組によると堀内が着任する以前は、セントルイス・バレエは、ダンサーが7人ほどのとても小さなバレエだったようだ。それが着任して10数年の間に、23名のダンサーを抱える全幕バレエのレパートリーも多数持つカンパニーに成長、ダンサーのテクニックも飛躍的に向上したそうだ。拠点となる劇場も1600席あるところに移し、住民に愛される存在になっているそう。堀内が語る「都市に公園や美術館があるように、バレエ団もあるべき」という言葉が心に響いた。今、日本にはまだまだそんな都市はほとんどないけれど、アメリカもまだ、すべての都市が理想的な状態というわけではないのだろう。

後半は、堀内元振付の2作品。まず上演されたのは『Le Reve』、セントルイス・バレエが委託してのジョー・モッラ作曲の音楽に乗せての物語性のあるバレエ。セントルイス・バレエのプリンシパル高田麻名と関西で活躍する岡田兼宜を中心に群舞とともに踊られた。自動車のクラクションの音から始まり悲しく佇む淑女──大切な存在を交通事故で亡くしたのだろう……そう私には受け取れた。悲しみの中、男女で、また群舞とともに踊る中で、女性の心は揺れながらも前向きになってゆく。最後にまたクラクションの音、だが、その時の女性の耳には、スポーツをする少年たちの楽しそうな声もちゃんと聞こえるようになっている。こういう心情の変化は、言葉のない踊りだからこそ、私たち観客の心にしみ入る、そんな気がした。高田の自然な感情の流れの表現も良かった。

osaka1110b01.jpg 『Romantique』撮影:岸隆子

そしてラストは、クロード・ボリングの曲に乗せて恋を描いた『Romantique』。これには、堀内元自身が中心となって出演した。光の中、短いパンツにハイソックスの男性、若いダンサーかと思えば、それが堀内自身で、柔軟性のある動き、着地がとてもスムーズなアントルラセ、さすがに素晴らしい。ジャズピアノの音のなか、セントルイス・バレエのファースト・アーティスト、森ティファニーをパートナーに楽しげに踊る。森は小さな顔に笑顔がとてもキュート。その魅力的な彼女を見失い、悲しく膝を抱える後ろには彼女が……と終わる、さりげなくて、その名の通りロマンティックで可愛らしい作品だった。
また、彼の作品、彼の踊りを観る機会に期待したい。
(2011年8月26日 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール)

osaka1110b03.jpg 『Tribute』撮影:岸隆子 osaka1110b04.jpg 『Romantique』撮影:岸隆子
osaka1110b05.jpg 『Le Reve』撮影:岸隆子 osaka1110b06.jpg 『Le Reve』撮影:岸隆子
osaka1110b07.jpg 『Le Reve』撮影:岸隆子 osaka1110b08.jpg 『Le Reve』撮影:岸隆子