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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2011.06.10]
From Osaka -大阪-

こうべ全国洋舞コンクール、第一位受賞者インタビュー

こうべ全国洋舞コンクール「モダンダンス部門」「クラシック・バレエ部門」
こうべ全国洋舞コンクール実行委員会
osaka1106f06.jpg モダンダンス
シニア1位 伊東由里

モダンダンス部門&創作部門、クラシック部門の各決選後に速報をお送りしていた「こうべ全国洋舞コンクール」。ここでは、各部1位の舞台写真とともに、受賞者の喜びの声をお伝えする。(創作部門は最優秀賞が出なかった。優秀賞を写真で紹介する)。全部門ともグランプリは出ていない。

【モダンダンス部門】
○ジュニア2部1位
古賀 奏子『Blue Tears』
丸岡有子バレエ・モダンダンススタジオ(福岡県)

「Blue Tears」という男性の声で歌われる曲に溶け込むように想いを込めた踊りを観せてくれた古賀奏子。指導者である丸岡有子にこの振付をもらった時「とてもきれいで嬉しかった」という。「Blue Tears=青い涙っていうのは、ただ単に悲しい涙じゃなくて……」と、もっと深いものを込めて踊った。「今日は気持ちよく踊れました。これからも頑張って踊って行きたい」と話す。

○ジュニア1部1位
杉村 香菜
『漂泊の詩人』
金田尚子舞踊研究所(岩手県)

3月に大きな被害を受けた岩手県からの参加。速報でも触れたが、何かに立ち向かうような力強い迫力が素晴らしい踊りだった。指導者である金田尚子の振付で、もともとは特に震災を意識したものではなく昨年から踊っている作品。
震災では、幸い家も家族も無事だったそうだが、停電やガソリン不足、食品不足で混乱した日々が続いている。震災後4日目からは、(ガソリン不足のため片道1時間歩いて)稽古場に通っている。
「地震の数日後に父の仕事の関係で沿岸部に行く機会があって、大きなショックを受けました。震災をまのあたりにして、この気持ちをどう表現したらいいのだろうと悩んで。母がこの作品と照らし合わせると良い踊りになるのではないかと言ってくれたのをきっかけに、そうすることにしたんです」。
この日の自分の出来を聞くと「やっぱり本番は難しい。振りのミスはないけれど、気持ちがもうちょっと……稽古場の方が良かった」。けれど、筆者を含め観た人は多数、その迫力に眼を奪われたようだ。

○シニア1位
伊東 由里『JIKUU?時空?』
Roussewaltz(東京都)

昨年のこのシニア1位の佐藤宏美に続いて、今年も1位は同じRoussewaltzからの受賞、昨年2位だった伊東由里だ。恵まれた身体を活かしてのスケールの大きな表現が印象的。映画『天使と悪魔』のサウンドトラックから選んだ曲に自ら振付けた作品。「地響き、地球がうごめく感じを表現したかった」という。「ビデオに撮ってみて自分でチェックしたり、カンパニーの先輩方にみてもらったりして作りました。表現することが好き、これからも創って、踊っていきたい」。

osaka1106f01.jpg モダンダンス:ジュニア2部1位
古賀奏子
osaka1106f03.jpg モダンダンス:ジュニア1部1位
杉村香菜
osaka1106f07.jpg 創作部門優秀賞
池田素子

【クラシックバレエ部門】
○女性ジュニア2部1位
左右木 茉琳『コッペリア』よりスワニルダのVa.
左右木健一・くみバレエスクール(宮城県)

オーストラリアなどでよく踊られる振付でのスワニルダのヴァリエーション。イタリアン・フェッテのような派手な技はないが、その分、基礎がより大切になってくる。それをバランスのとれた体型でチャーミングな魅力も感じさせて踊った。
「こうべコンクールに参加するのは始めて。予選、準決選、決選のなかでは、準決選が自分では一番よかった。今日は地味だった」とニコニコと笑顔を絶やさずに。
実は彼女、宮城県仙台市からの参加。3月の震災で大きな被害を被った地域だが、幸い家族や友人は無事だったそう。とはいえ、家のなかにものがたくさん落ちてきたり、停電で夜はレッスンできないので早朝にレッスンするなど、少なからずの影響を受けている。
また、彼女は震災の3日後からニュ−ヨークに向かって、YAGP(ユース・アメリカ・グランプリ)の決選に参加、プリコンペティティブ部門の銀メダルも獲得しているのだ。指導者で父親でもある健一さんによると「震災が起こった時、行くのは無理だと思ったのですが、娘のことの他に、僕が振付をしているということもあって、とにかく行けるところまでいってみようと」と、高速バスで日本海側に出て、かなりの時間をかけて成田に着き、ニュ−ヨークに到着、無事に参加することができたそう。
「たいへんな状況のなか不謹慎かと悩んだのですが、いろいろな方に言葉をかけていただいて、悩んで何もしないでいても何も良い方向に向くわけではないと思い直して」と健一さん。
茉琳さんは、今、11歳、これからどんどん成長していきそうなバレリーナの卵だ。

○女性ジュニア1部1位
直塚 美穂『バヤデルカ』よりVa.
テアトル・ド・バレエ カンパニー(愛知県)

とても伸びやかに楽しそうに『バヤデルカ』よりガムザッティのヴァリエーションを踊った。空中でしなるようなジュテ、なめらかな多回転などテクニックの高さがよく分かる。今、高校1年生、一昨年にはジュニア2部で1位を獲得している。「今日は、止まるとところがちょっと……予選、準決選、決選のなかでは予選が一番良かったと思います」。ロシア・バレエが大好き、いつか留学したいと思っている。

○女性シニア1位
山田 由佳『エスメラルダ』よりVa.
北本バレエスタジオ(大阪府)

タンバリンを持っての『エスメラルダ』のヴァリエーション。なめらかな動き、スキッとしたポーズとメリハリがあり、物語を感じさせる踊り心が見えた。
「予選を通って、今日踊れるのが嬉しくて!」と、気負わずの決選だった様子。「小さい時にバレエを始めて、でも中学高校時代はブランクなんです。20歳の頃にまた始めて」というクラシック・ダンサーには珍しいタイプ。今、北本バレエスタジオで子供たちを教えている。「エスメラルダのようなジプシーの踊りが好き、自分が役に入れる。お姫様系などは苦手なんで」と笑う。カメラを向けると即座にピースマークを向けてくれるとても気さくなバレリーナ。「これからは苦手な難しい踊りにも挑戦してみようかな」と微笑んだ。

osaka1106f09.jpg クラシック:女性ジュニア2部
第1位 左右木茉琳
osaka1106f11.jpg クラシック:女性ジュニア1部
第1位 直塚美穂
osaka1106f14.jpg クラシック:女性シニア
第1位 山田由佳

○男性ジュニア2部1位
金 世友『コッペリア』よりフランツのVa.
CJG BALLET STUDIO(三重県)

すごく高く美しいパッセでのトゥールが印象的。三重県在住で陳建国さんに師事している。こうべコンクールに参加するのは3回目。
「小学校1年生の時にバレエを始めました。今、中学2年生。フランツは小さい時に一度踊ったけれど、久しぶりです。もっときれいに踊れるようになりたい。将来は、クラシック・バレエだけでなくモダンダンスやコンテンポラリーなどいろいろなものが踊れるダンサーにになりたい」。

○男性ジュニア1部1位
出野 佑都『眠れる森の美女』より王子のVa.
畠中三枝バレエ教室(滋賀県)

美しい甲、バランスの取れた体型でクラシック・バレエらしい王子を踊った。雰囲気があるだけでなく、ジュテ・アントゥールナンなどを見ると高いテクニックを持っていることも分かる。
「本当は『ドン・キホーテ』のバジルなどが好き。王子は苦手なんですけど、9月からシュツットガルトに留学することが決まって、畠中先生から留学前に王子はやらせておきたいと言われ・・・」。確かに、バジルはバジルでテクニックをイキイキと見せてくれそうな気がする。
「ドイツで勉強して、ドイツでフリーデマン・フォーゲルのようなダンサーになりたい。彼はテクニックだけじゃないものを持っているダンサーだから」と、フォーゲルの母校でもあるシュツットガルトのジョン・クランコ・シューレに向かう彼。着実に思う方向に進み始めた彼の成長を期待したい。

○男性シニア1位
末原 雅広『シルヴィア』よりVa.
ソウダバレエスクール(大阪府)

いきいきとした表情でとても楽しそうに踊る。上げた脚に伸びやかに近づくもう一本の脚、美しい甲、高いテクニックを鮮やかに踊り心たっぷりに見せる。観ていて本当に気持ちの良い踊りだった。
「16歳〜19歳までSAB(スクール・オブ・アメリカン・バレエ)に留学していました。今は日本でゲストとしてなど、さまざまな舞台に出ています。SABでバランシンのバレエを学んだので、今日、選んだ演目もバランシンなんです」。バランシン作品の魅力をよく知っているからこそのいきいきした表現、空気感だったのだろう。
「海外にもチャンスがあればまた行きたいけれど、行ったら身長のこともあって役が限られてしまう可能性が高い。今は、いろんな役が踊りたいと思っています」。夏には、兵庫県立芸術文化センターで行われる、やはりバランシン・バレエを熟知した堀内元の公演に出演する予定だ。

osaka1106f15.jpg クラシック:男性ジュニア2部
第1位 金世友
osaka1106f18.jpg クラシック:男性ジュニア1部
第1位 出野佑都
osaka1106f21.jpg クラシック:男性シニア
第1位 末原雅広

(4月23日、24日 モダンダンス部門・創作部門決選、5月1日〜4日 クラシック部門予選・準決選。
5月5日 クラシック部門決選 神戸文化ホール大ホール・中ホール *各部門決選を鑑賞)

撮影:岡村昌夫・文元克香・古都栄二(テス大阪)
※それぞれの詳細・撮影クレジットは、画像をクリックし拡大写真にてご覧ください。