ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Osaka Nagoya <大阪・名古屋>: 最新の記事

From Osaka Nagoya <大阪・名古屋>: 月別アーカイブ

すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2010.10.12]
From Osaka -大阪-

関西の男性ダンサーたちが中心に石井潤、矢上恵子の新作を踊った

演出・振付:石井潤『THE HUMAN TOUCH』、矢上恵子『Mask』
PDA(Professional Dancer's Assocation)
osaka1010b03.jpg

関西の男性ダンサーは結束が堅いと、東京など他の地方を拠点にするダンサーに言われたことが数度ある。実際に彼らと接していても、先輩後輩のけじめをしっかりつけて、お互いが良い方向に伸びていけるよう深い、厚い人間関係を持っていると感じることは多い。そんな関西の男性たちが先輩格である樫野隆幸を中心に集ったのがこの舞台。“Professional Dancer's Assocation”を略した“PDA”として行った第一回目の公演だ。石井潤、矢上恵子と関西を代表する振付家2人が、ともにこのために新作を振付けた。

第1部は、石井潤振付『THE HUMAN TOUCH』。ニーナ・シモンの歌に乗って、酒場で男たちが繰り広げる人生模様。最初の群舞から、鍛えられた身体のダンサーたちが揃っていることを実感。最初のソロ、山口章は、大人のしっとりしたものを見せる踊り。惠谷彰のソロは、走り出てきたところから感じさせるものがある。彼は技術はもちろんだが表現力もあるダンサーなのだということがあらためてよく分かった。秋定信哉、沖潮隆之、樫野隆幸、森充夫4人による、疲れたサラリーマンのおじさん風のダンスも良い味。全員での群舞に目が釘づけになる中、最後のソロは福岡雄大。メリハリの効いた動き、ちょっと切なく繊細な想いを表現する踊りに、爽やかなブルーのシャツが目に焼き付き、込められた想いが心にしみ込むような気がした。 

osaka1010b01.jpg osaka1010b02.jpg osaka1010b04.jpg

第2部は小作品4つ。法村珠里と青木崇が華やかにテクニカルに踊った『ドン・キホーテ』第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥに続いて、今回のバレエ・ミストレス錦見眞樹がロッシーニの曲に振付けた『Run Wind』。酒井直希、池上彰朗、佐藤信吾の3人が、ジャンプなど男性のパを多用した振りを若さを持って魅力的にこなした。
キミホ・ハルバート振付で、キミホ自身と佐藤洋介が踊った『Skin to Skin』は、男女の想いがナチュラルに、優しい視線で綴られた作品。もう一度観たいと思わせるしみじみとした魅力。2部のラストは、篠原聖一振付の『シェヘラザード』よりパ・ド・ドゥを下村由理恵と佐々木大が踊った。大人の官能とチャーミングさが同居する下村のゾベイダ、勇壮なだけではなく、もっと深いものを感じさせる佐々木大の金の奴隷、ラスト、まるでカルメンのように金の奴隷がゾベイダを刺し、それから自分も死ぬという演出には意表をつかれた。

osaka1010b08.jpg

そしてこの公演のラスト第3部が矢上恵子振付の『Mask』。幕が開くと、出演するダンサーたちの赤ちゃんの時、幼児の時、小学生くらいの発表会など、小さな頃のスナップがゆっくりとスライドに映し出される。その可愛らしさとよく知る現在の姿の片鱗が見えるからか、客席からは穏やかな笑い声が度々湧く。そのスライドの下から、まるでこの世に生まれるように出て来て踊るダンサーたち。スライドが終わるとビートの聞いた音楽で、激しくスピーディな踊り。矢上の作品を踊ることが初めてのダンサーも多いようだが、ハードな振付にすべてのダンサーが持てる力を出し切ろうとしているのが感じられる。
グレゴリオ聖歌、ハチャトリアンなどさまざまな曲が移り変わり、いつしか仮面舞踏会の曲に。仮面をつけての全員での群舞、良いダンサーが19人、これだけの人数で激しく踊る姿、その迫力にゾクッとした。とにかく、その場にいなければ体験できない、生の舞台だからこそ、レベルの高い踊りだからこその観客を惹きつけてやまない魅力──ぜひ、第2回に期待したいと思う。
(2010年8月25日 兵庫芸術文化センター阪急中ホール)

 osaka1010b05.jpg osaka1010b06.jpg 
 osaka1010b07.jpg osaka1010b09.jpg 

撮影:古都栄二 / 文元克香(テス大阪)
※画像をクリックすると、大きな写真をご覧いただけます。