ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2010.02.10]
From Osaka -大阪-

年末年始に踊られた様々の『くるみ割り人形』

『くるみ割り人形』
貞松・浜田バレエ団 / はなやまバレエスクール / バレエスタジオミューズ

浜田蓉子:演出、貞松正一郎、長尾良子:振付『くるみ割り人形』
貞松・浜田バレエ団

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貞松・浜田バレエの『くるみ割り人形』はここ数年、毎年2日間を一日ずつ、“お菓子の国ヴァージョン”と“お伽の国ヴァージョン”と演出を変えて上演されている。
数日連続して『くるみ割り人形』を上演する団体は複数あるが、そのなかで演出を変えてというのはかなり珍しいのではないだろうか。どちらのヴァージョンも毎年、キャストが少しずつ変わっているのはもちろん、細かな振付もその都度工夫が凝らされるようで、年々内容が充実してゆくように感じられる。年に一度と限られてはいるけれど、演出を深める機会を持って上演されているようで嬉しい。

1日目の19日、クララ役が2幕のグラン・パ・ド・ドゥまでを踊る“お菓子の国ヴァージョン”は、正木志保と武藤天華が主役。お姉さんらしい雰囲気で明るく溌剌とした魅力のクララ、ストイックな雰囲気の王子、二人ともテクニックもあるダンサーだが、ケガなどで練習不足かパ・ド・ドゥのパートナーリングに若干不満が残ったのが残念。次の機会に期待したい。
このヴァージョンで長年ドロッセルマイヤーを務めたのは泉ポールだったが、今年は川村康二になるなど、若返ったキャストも多かった。雪の女王の廣岡奈美、雪の王のアンドリュー・エルフィンストンはスピーディなシーンを鮮やかに。花の王女の竹中優花は抜けるように色白で王女にぴったり、花の王子の芦内雄二郎とともに優しい魅力で花のワルツの中心を飾った。

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翌日2日目、20日は“お伽の国ヴァージョン”。クララと王子をお伽の国の女王と王が迎えるという形で、クララがグラン・パ・ド・ドゥを踊らないヴァージョンで、ディヴェルティスマンもアラビアの踊りが「シェヘラザード」にされているなど、全編を通してオリジナリティを持った工夫が凝らされている。
クララはチャーミングで表情豊か、この役にぴったりの安原梨乃、フリッツの水城卓哉も人を惹きつけるダンサーになってきているように見える。お伽の国の王子は弓場亮太で、彼も成長が見える。2幕、金平糖のグラン・パ・ド・ドゥは、お伽の国の女王と王、瀬島五月とアンドリュー・エルフィンストン。2人共安定した高い技術の上に内面表現が加わった素晴らしい踊りで、プロらしい余裕さえ感じさせて舞台に引き込み、観る者を幸せな気分にさせてくれた。
(2009年12月19日、20日 神戸文化ホール)

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撮影:岡村昌夫/田中 聡(テス大阪)
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エレーナ・レレンコワ振付『くるみ割り人形』
はなやまバレエスクール

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1948年に石井獏門下の花山義英によって京都・太秦に設立された、はなやまバレエ研究所。現在は、はなやまバレエスクールと名称変更し、長岡京市に本部を置き、花山知栄子が学園長を務める。62年という長い歴史を持つ団体が、機が熟しての公演を行った。
エレーナ・レレンコワの演出による『くるみ割り人形』は、1幕から全体にお芝居と言うよりも踊り繋ぐ感じで、メイドのお掃除も踊りになっているなどテンポ良く進む。
大きな特徴は、王子(佐々木大)が、1幕の終わり雪の場面でもまだ魔法が解けきらないように人形ぶりだということ。2幕のはじめにねずみと戦い完全に倒してやっと人間らしいスムーズな動きになるという形だ。踊った佐々木は床の問題か若干の失敗はあったものの、それも人形ぶりのなかのコミカルさに感じられる雰囲気で、やはりさすがに鮮やかなジャンプなどは観ていて引き込まれる。
クララを踊ったのは齋藤真希。ちょっとハーフっぽいエキゾティックな顔立ち、演技・表情変化も良い感じ。2幕のグラン・パ・ド・ドゥのアダージオは、王子+4人の男性と踊る形だが、可愛らしさ、華やかさも感じさせ、大役をよくこなしていた。初めての大きな役だというからこれからの成長が楽しみだ。
(2009年12月24日 大阪厚生年金会館大ホール)

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撮影:古都栄二/金原優美(テス大阪)
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夏山周久:演出・振付『くるみ割り人形』
バレエスタジオミューズ

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バレエスタジオミューズとソウダバレエスクールによる公演。夏山周久による演出は、幕開けが12月の街の風景。花売り娘やパン屋さん、尼さんに加えて制服の警察官なども登場し、そこからクララの家のパーティへと進んでゆく形だ。
私が観た6日、クララを踊ったのは前野香代子(5日は徳永由貴)。明るく可愛らしいクララだった。家族のなかでサイトウマコトが演じたお祖父さんが、細かな演技もよく特にいい味を出していたのが印象的。くるみ割り人形を踊ったのは末原雅広で、人形ぶりのなかでの多回転のピルエットが鮮やか。彼は2幕のディベルティスマンでのロシアの踊りでもテクニックで楽しませてくれた。
雪の女王と王は中尾公美と岡田兼宜。中尾の踊りは、スッキリとした知性的な魅力。また、雪のコール・ド・バレエにはラインのきれいな若手が複数いて将来が楽しみ。花のワルツの中心、花の女王を踊ったのは日比マリア、実は急遽の代役だったようで、良いスタイルを持ちながら表情に少しとまどいが見えてしまったようで残念だった。出来れば、近いうちに彼女が本調子での舞台を観てみたい。金平糖のグラン・パ・ドゥ・ドゥは中屋利萌子と河島真之。さすがに二人とも表情も流れるように自然、中屋の香り立つような優しい踊り、河島の王子らしい気品とテクニック、プロらしい踊りでクライマックスを華やかに盛り上げた。
(2010年1月6日 兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール)

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撮影:近藤幸博(イングルウッド)
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