オハッド・ナハリン振付『DANCE』をヴァージョンアップ、長年にわたり創作してきた作品群から再構成した『Decadance (デカダンス)』を上演、貞松・浜田バレエ団
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ワールドレポート/大阪・名古屋
すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna
貞松・浜田バレエ団
『Decadance (デカダンス)』オハッド・ナハリン:振付
レベルの高いダンサー達の踊りの迫力、さまざまな場面が折り重なる意外性、なんとも言えないユーモア──観客も巻き込んでの75分ほどがアッという間の公演だった。
2006年に、貞松・浜田バレエ団が文化庁芸術祭大賞を受賞したのがオハッド・ナハリン振付『DANCE』だった。その後、東京も含めて再演を重ねている。最初の上演時はダンサーは全員が女性。始まる前に幕前で、瀬島五月が一人、即興的なパフォーマンス(ナハリンが創ったメソッドGAGAのトレーニングによるもの)で引き込んでいたのを思い出す。その後、男女が混ざって上演されるようになっていった。
今回の新たな作品『Decadance 』だが、やはり、開演前に一人のダンサーが踊るパフォーマンスはあった。私が観た21日、それを踊ったのは本城洸樹。抜群の身体能力を持って、スポーツ選手、または野生動物を思わせるような、まっすぐな魅力を感じさせてくれた。前日20日と埼玉公演は、ここを水城卓哉が踊ったと聞く。それは、また違った魅力のものになっていたことだろう。

『Decadance』撮影:古都栄二(テス大阪)
幕が開くと、大音量とともに、一気に観客の視線を釘付けにしていく。どこか知らない場所の何かの儀式のようにも思える不思議な雰囲気と、鍛え上げられたダンサーが揃っているからこその迫力に、グイグイと、視線だけではなく心まで鷲掴みされるような感じ。ここまでは『DANCE』と同様の構成に見えたが、そこから、ナハリンが長年にわたり創作してきた作品群から再構成したという様々なシーンが繰り広げられていく。
最初の強い衝撃に圧倒されているところに、次にはフッと鷲掴みを解かれたような、素朴な時間が始まる。「私はひなた......」とダンサー本人によるちょっとした自分語りが録音で流されるなか、本人が踊る。さまざまなダンサーの自分語りと踊り。
そして中盤は、観客を巻き込む時間。幸村恢麟がマイクを持って、観客をいったん立たせて「○○な人はお座りください」と、他愛ない選択肢で立っている人を減らしていき、、、最後には「今日、お誕生日の方は立ってください」と舞台に招く。その後には、ダンサーが観客を誘い、10数組ほどだろうか、舞台上でともに踊る。ノリよく踊る人、ちょっと恥ずかしそうな人、さまざまな人がいるのが楽しい。この場に集うからこそ味わえる微妙な、ダンサーも観客も、それぞれが醸し出すそれぞれのニュアンス。前に出なくても、客席に座っていても、いろいろな人の反応や空気感が伝わるのは、この劇場という場にともにいるからこそだと、あらためて思う。映像では絶対に伝わらない空気感というものがここには確実にある。ナハリンは、そういった感覚を自由自在に操る魔術師、と、そんな気がしてきた。
(2026年3月21日 兵庫県立芸術文化センター・阪急中ホール)

撮影:岡村昌夫(テス大阪)

撮影:岡村昌夫(テス大阪)

撮影:岡村昌夫(テス大阪)

撮影:古都栄二(テス大阪)

撮影:古都栄二(テス大阪)

撮影:古都栄二(テス大阪)

『Decadance』撮影:古都栄二(テス大阪)
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