劇場が遊園地に!? ダンサーがエスコートする劇場ワンダーランド、愛知県芸術劇場

ワールドレポート/大阪・名古屋

井出 裕子

2026年5月2日(土)3日(日)名古屋市・栄にある愛知県芸術劇場にて、県民が気軽に舞台芸術に親しむことができる「劇場ワンダーランド」が開かれた。大ホール・小ホール・コンサートホールなどを有する同劇場全体を使った大規模な回遊型イベントであり、舞台・舞台裏・客席の見学はもちろん、様々な体験や、小規模な公演が準備され、同劇場ダンスアーティスト(酒井はな、島地保武、三東瑠璃、Null〔岡田玲奈、黒田勇〕)が大活躍した。

小ホールではNullがゲストダンサー仙石孝太朗を迎えて創作した新作『WITH LiMBO』が初演された。人間関係の距離感に迷う姿を、大人が座ってすっぽり入る立方体の「枠」を使い表現するという、やや重いテーマを持ちながらも、Nullの若さあふれるパワフルな動きが、観る者を前向きな気持ちにさせる。影を活かした照明デザインも美しかった。2025年6月のワークインプログレスから創作過程を公開しており、見守ってきた観客にはより特別な鑑賞体験となったのではないか。

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『WITH LiMBO』© Naoshi Hatori

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「しまちゃんディスコ」© Tomohiro Gokita

大ホールでは「しまちゃんディスコ」が開かれた。ミラーボールにDJブース、スモークも炊かれた舞台上は、さながらディスコクラブ。大人も子供も舞台に上がり、島地(しまちゃん)のリードで、DJトリエユウスケの繰り出す音に合わせ自由に踊る。初日は現代美術家・ブレイクダンサーの辻將成(「辻」は正しくは一点しんにょう)、二日目はダンサーの堀江善弘がゲスト出演し、公演を終えたNullも加わるなど、多様なバックボーンを持つダンサーも参加した。間近で踊るダンサーに刺激を受けた子供たちは、目を輝かせ競うように踊り、始めは戸惑っていた大人たちも、気づいた頃には汗ばむほどに踊っていた。

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「DANCEパレード!」© Tomohiro Gokita

辻は仲間のダンサーと「DANCEパレード!」も披露した。客席に現れたダンサーが、1本の長い綱を波のようにくねらせながら、近くの観客を巻き込んでいく。綱を掴んだ者も見守る者も、綱と一緒に移動し、ホールの外まで出ていく。言葉による約束がなくとも、ただダンスだけで動き、呼吸、そして心が一つになる不思議な体験だった。

大ホール舞台上での「スポットライトを浴びたい!」も盛り上がった。10人程度のグループに分かれ、スポットライトの下、一組ずつ島地と酒井のアイデアでポーズを取る。筆者の参加したグループが島地から提案されたポーズは「帰宅してドアを開ける瞬間」。恐る恐るポーズを取る参加者に、酒井から「いいよ!素敵!」の声が飛ぶと、一瞬でポーズが輝く。たった30秒程度で次々と魅力的な変化を起こす島地と酒井の一流の技に驚くと同時に、舞台でライトを浴びる快感も知った。

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「スポットライトを浴びたい!© Tomohiro Gokita

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「スポットライトを浴びたい!© Tomohiro Gokita

コンサートホールでは「THE オルガン NIGHT&DAY 2026」が開かれ、観客は国内最大級のパイプオルガンの生演奏をワンコインで楽しんだ。演奏は同劇場オルガニストの都築由理江で、三東が、J.S.バッハ「小フーガト短調」とC.グノー『操り人形の葬送行進曲』でダンス共演した。前者は黒のパンツスーツで舞台を大きく使った情熱的なダンスを、後者は白狐のお面と白いワンピースでくるくるその場で回り続ける可愛くも妖しいダンスを披露し、抽象性の高いクラシック音楽に新たな楽しみを加えてくれた。

他にも多彩なイベントが行われ、まるで劇場が遊園地になった二日間。舞台と客席、つくる人と観る人、一見隔たれているようだが、実は「壁」など存在しない。ダンサーのエスコートで舞台に上がり、劇場を身近に感じられたなら、舞台芸術への共感も感動も今後はもっと大きくなっていくだろう。
(2026年5月2日、3日 愛知県芸術劇場)

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「THE オルガン NIGHT&DAY 2026」© Tomohiro Gokita

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「THE オルガン NIGHT&DAY 2026」© Tomohiro Gokita

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