苫野美亜が手掛けるGallery Project ♯2は、中之島美術館での『haptics』──「触覚の伝達」
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ワールドレポート/大阪・名古屋
すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna
苫野美亜プロデュースDance Performance
LIVE Gallery Project #2 haptics
春のそよ風のような優しさ、穢れない純白、透明感──そんな言葉で表したくなるパフォーマンスだった。
苫野美亜が手掛けるGallery Project の2回目。前回1回目は、芦屋市、奥池のコシノヒロコの元住居であるKHギャラリーで昨年(2025年)3月に行われた『White Noesis』。その時と共通するのは、まず、窓から差し込む自然の光のなかで踊られたということ。閉ざされた劇場空間ではない、開放感が感じられる場所でのダンス。今回の中之島美術館では、ロビーと呼んでいいのだろうか、展示室ではない全面ガラス張りで外が見える一角で行われた。パフォーマンス中に、普通に外を通行人がちらほらと往き来する。家族連れのなかの小さな女の子がお出かけが嬉しいのか踊るような足取りだったりして、それもパフォーマンスの一部のような気がしてしまう。

『haptics』南江祐生、荒俣夏美、松村有実、鈴木舞子
© 植村耕司

『haptics』南江祐生、荒俣夏美、松村有実、鈴木舞子
© 植村耕司
今回のタイトルは『haptics』。「haptics(ハプティクス)」というのは、振動や力などの刺激を通して、デジタル空間や遠隔操作で「実際に"そのもの"に触れているような感覚」を再現する技術を指す言葉だそう。かつて東京ディズニーランドにあったアトラクション「ミクロアドベンチャー!」で使われた、画面上に大量のネズミが駆けまわるシーンで、座席の前方から空気が細切れに放出されて、まるで自分の脚に駆け回るネズミが当たっているかのような感触が味わえる仕掛けなどが例に挙げられるということをプログラム印刷物から知った。
だが、今回は、デジタル技術というよりも自然な"人間"、ダンサーによる触覚の伝達。まず、会場に着くと、受付で白いベールを渡され、頭に被るように言われる。『ジゼル』のウィリーになったようなベール。少し、こそばゆい触覚。そのベールを着けた観客が、並べられたイスの片側だけに案内され、向かい側のイスはオブジェのように空席、だがこれが定員らしい。パフォーマンスの後半には、観客も中央のエリアに誘われ歩み進んだり、さっき空席だったイスに座るように促されたり。触れるか触れないかくらいのダンサーたちのエスコートで、観客も移動するのだ。

『haptics』松村有実 © 植村耕司

『haptics』南江祐生、荒俣夏美 © 植村耕司
静かな、ミニマル音楽のなかでのパフォーマンス。その音楽を創ったのはブルガリア国立バレエ団で活躍するダンサーでもある玉川貴文。
踊ったのは、中性的な魅力と男らしさが場面によってどちらも見え隠れするような東京バレエ団の南江祐生、踊り重ねて来たであろう安定感の上でさらなる冒険を求めているように感じられる荒俣夏美、少女から大人へ移り変わる時の艶っぽさのような魅力を感じさせてくれる松村有実、清純で素直な良い少女で白がもっとも似合うように感じられる鈴木舞子の4人。東京、名古屋、関西から集っての今回だ。いずれも、実力、独自の魅力を備えたダンサーだと実感した。
そしてまた、苫野の作品に共通するかと思える清潔感も心地よかった。
(2026年3月15日 大阪中之島美術館)

『haptics』荒俣夏美 © 植村耕司

『haptics』鈴木舞子 © 植村耕司

『haptics』
南江祐生、荒俣夏美、松村有実、鈴木舞子
© 植村耕司

『haptics』
南江祐生、荒俣夏美、松村有実、鈴木舞子
© 植村耕司
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