ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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すずな あつこ text by Atsuko Suzuna 
[2009.12.10]
From Osaka -大阪-

泉鏡花『春昼後刻』に想を得た『黄昏れる砂の城〜サイトウマコトの世界』

サイトウマコト:演出・振付『黄昏れる砂の城〜サイトウマコトの世界』
ダンスの時間プロジェクト
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これまで私がコンテンポラリー・ダンスを観る時、勝手な意見ながら、「ダンサーは良いんだけど、内容がないよなぁ」とか、逆に「意図するところは無理矢理分かるけど、それを身体で分からせる演じ手じゃないなぁ」と思うことが、正直多々あった。けれど、この公演はそんなことがなかったのだ。鍛えられたダンサーが、打ち出したい想いを持った振付家の作品に自然に取り組んでいるのが見えた。

まず、はじめに上演されたのは、1月に立ち上げられたMomo Diri Marbleによる『七つの墓』。7人の女がそれぞれ生きて、そして死ぬ、亡霊になるものも……。7人のダンサーそれぞれが、ダンスに真摯に取り組んでいることが感じられた。

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そして、とにかく心に深く残ったのは、後半に上演された『黄昏れる砂の城』。泉鏡花の『春昼後刻』を元にした作品。波の音、水の音、海鳥の声、並んで座る男女──始まりを観て演劇的かと感じたが、その後は、身体の動き、ダンスでしか現せない世界。

海を見晴らす静かな丘に住む美女・玉脇みを、この謎に包まれた存在を関典子と幻想の中としての難波瑞枝が踊りわけ、鏡花を思わせる散策子を岡田兼宜、みをと恋仲になり海に沈んだ男をヤザキタケシという4人の出演。あがた森魚の昭和の香りたっぷりな音楽も使っての舞台は、妖しげな雰囲気に満ちていて、ダンサーたちはそれぞれ全く違った個性とサイトウが表現したい世界を観客の心に届かせる実力を持っている。独特の不思議な香りが客席までを包んだ。
(2009年11月7日、8日、伊丹アイ・ホール)

撮影:山下一夫
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